2019/09/29 のログ
クロニア > 掌に感じた感触、掌とはいえ他者を叩いた事実、無意識の所為とは言えども流石に焦り、
その手首をもう片方の手で掴むようにして、メイドの頬から手を遠ざける。

――…流石に見ず知らずのメイド?らしき者がナイフを突きたてて来る可能性はあるが、
それなら今放った平手に感じる他者の肌の名残を感じる余裕はない筈、
だから相手は本当に見ず知らずのメイドで危険性は薄い、
大丈夫だ、と自分に言い聞かせて行動に出るまで数分。

「あ、ああ……すまない。こうやって人を叩くのは趣味の範疇外なのだが、本当にすまない……。治療費くらいは持ち合わせているが、痛みが続くようなら屋敷のほうに……。ああ、名前…名前だな……。」

今しがた出逢ったメイドに対して叩いてしまった事実と、
急に話し掛けられた所為でまだ少し錯乱してしまっているのを自覚している所為か、
浮べる笑みは酷く引き攣り、普段なら視線の先に居る愛らしいメイドであれば口説き落としの一つのするのだが、
今はそれに至るよりも相手の言葉に返答を返すのに一杯一杯であった。

普段なら決して見せることがない顔で
普段なら決して見せるはずのない引き攣った表情で
相手のやわらかな言葉への返答よりも先に矢継ぎ早に言葉を返してから、
更に取り繕うように最後になってメイドにしか見えない彼女の問いに返答を返す。

「……いや、あまり、穏やかなことではないんだが、その今は口説いたり口説かれたりよりも、隠れ家や護衛の方が欲しいくらいで……。」

と普段なら跳ね除けて一蹴する哀れみとしか感じれない捻くれた思考の持ち主であるが、
でも今宵は突っぱねるような返答ではなく矢張りしどろもどろな言葉を返すのであった。

タピオカ > 彼から声を聞いたり、信頼、もしくは信頼らしきものを得るためなら自分の頬を差し出すに厭わない。
もし、彼が平手打ちではなくて毒塗りのナイフや指に仕込み刃をもってして自分を襲うのであればその限りではなかったけれど、例え先手をとられても至近距離でも回避できる自信があった。これでも冒険者だ。

遠ざかっていく彼自身に手首を静かな微笑み浮かべて見守り。

「気にしないで、領主さま。何か大きな心配事があったのでしょう。
……ふふ。どうぞ落ち着いてくださいな。
大丈夫ですよ。きっと、何事も大丈夫です」

ゆるく短い銀髪と、頭にしつらえたヘッドドレスを横へ揺らして。相手をリラックスさせようと笑みかけ続ける。
平手の痛みなど、冒険者稼業の怪我に比べたら些細な誤差のようなもの。おぼつかない早口にこくこくと頷いてみせ。

「うん、……なるほど。
それなら、領主さま。僕を護衛に雇ってはもらえませんか?
僕は、さっきも言ったようにメイドですけれど……」

隠れ家や護衛という単語で、彼の状況をおおよそ見当つける。
脅威に対する逃れ場と盾が欲しいというのなら、うってつけの人材がすぐそばにある。自分である。
言葉を途中で切って、ロングスカートのポケットに忍ばせておいた小さな林檎を小さく真上に放り投げ。
――シャッ、と微かな音がしたかどうか。
一瞬にて、スカートの腰裏に忍ばせておいた脇差サイズのショートソードを居合抜きする。
小さな林檎は2つに割れ。それを片手で受け止める。もう片手は、すでにスカートの腰裏に武器を収め終えている。

「実は、冒険者なんです。今はギルドから依頼を受けて王城に出入りしてるんですけれど、そんなに拘束時間や結果を求められるお仕事じゃなくて。
しばらく、あなた様を平民区にある僕の宿にかくまって、僕があなた様を守る事もできますよ?」

居合抜きの林檎演舞で自分の冒険者としての、そして護衛としての実力を示し。
提案するのは、隠れ家と護衛の両方の提供。
割った林檎を、相手へと差し出しながら。

クロニア > 何もかも唐突である。
昨夜の一軒からの命を狙われる破目になった事も見ず知らずのメイドの頬を叩いた事も……。

だが少しずつ冷静さを取り戻していき、改めてメイドの値踏みする事にすれば翌々星屑を振り撒いたような銀髪とその銀色が
一際映える褐色肌のクラシックな衣装に身を包んだメイドの仕草はメイドにしては身のこなしが粗暴にも見える。
それは些細な差異でメイドを日ごろ扱う身分でなければ、
気にならないレベルであったし、落ち着いて考えると暗殺者であれば声をかけた瞬間にザクっと刺されて、
今頃紡ぐ言葉は遺言……も言えないか。

領主様、といわれる程の立場なのは此度の元凶の父上様なのだが、
それを訂正するのは今ではなく今は何故か空中を舞う林檎に碧眼を向けて、
メイドが刃を林檎に滑らせる事すら知覚出来る前にりんごが落ちてきて真っ二つである。

雇って欲しいといえる自信があるのは判った。
逆に言うとそれしかわからなかった。
斬撃見えず結果しか見えなかったのだから。

――…その何もかもの答えは銀髪褐色のメイドさんの唇から紡がれた。
そして違和感も疑問も何もかも納得できた。
彼女は暗殺者でも護衛に特化したメイドでもなく冒険者と名乗っているからだ。

「……お断りだな。ギルドの後ろ盾があるとは言え、見ず知らずの奴を雇うのは貴族として面白い事とは言えない。だが……。」

まず区切るもったいぶっている訳でも拒絶を見せるわけでもない、
実力もよし、傍に置くにも容姿は美麗とは違い愛らしさの方が際立つがよし、
何よりも信じさせようとする行動を前面に出すのが悪くない。

だから。
情けない表情は是までにして、口元は普段の尊大な且つ自信に満ち溢れたその笑みを浮べて、言葉を続けて紡ぐ。

「だが、今は貴族としての体面よりも、命だ。自分の命が何よりも可愛いし人形に逃げられて寒い状況だ。私兵も留守、隠れ家は安全とは言えない、ならば冒険者の力を借りるしかなるまい。キミを雇おう、宿の一室事借り受けよう。」

自らの手首を押さえる真似は終えた。
両腕を軽く腰に当てて、ほんの少し胸を張るような姿勢で
これから世話になるかもしれない冒険者に対してなるべく
上から目線にならぬような言葉を選んだ心算で提案への答えを返すと、
差し出された林檎の片割れを利き手で受け取り、少しばかり信頼の証を立てる。

「で、早速だが契約に関して詰めたいのだが、宿の部屋とやらに案内してもらえるか?」

と続けてさっさと相手の気が変わらぬ前に契約してしまおうと。

タピオカ > 自分が自然と魔物相手に生きてきたように、彼は金の柄杓と財産と宝石のついた椅子の世界で生きてきたのだろう。
自分のメイドとしての振る舞いは付け焼き刃、しばらく話をしたところできっと「ただのメイドです」はそのうち綻びるとは思った。
最初に話しかけた時の言葉を考えたら信頼を得る嘘をついたと捉えられるかもしれない。

申し出た護衛についても、彼が首を振る可能性はもちろんあった。
彼が彼自身の悩みを抱えてひとり歩くのも相手の自由だ。
そして、自分を雇うのも相手の自由。
信用するのも、しないのも自由。
冒険者と雇い主なら、当然のように雇い主のほうが立場が上だ。
申し出が急なのもあった。
だから、どのような答えが帰ってきても落胆するつもりはなかったのだけれども。

「あは、……そうですよね。うん」

お断りと耳にすれば、そして当然の理屈を彼の整った細い唇から紡がれたら、残念そうに微笑む。
相手からすれば、自分こそ付け狙うアサシンと警戒されても仕方がない。
隠そうともせずに、自分の気持ち正直に少し肩が落ちそうになる様子が出てしまう。

「わあ……!
あはっ、信じてくれて嬉しいです!
僕に任せてくださいな。しっかり守ります。あなた様の砦の塔になります!」

続いた言葉に、褐色肌のメイドの表情輝く。
仕事としての収入が得られる事よりも、相手から雇用されるという信頼を得られた事への嬉しさに弾む声音。
ひとまずの契約成立とばかりに片割れの林檎を受け取ってもらえて目元を綻ばせ。

「はーい、わかりました!
……どうぞ、こちらですよー!」

足元弾む思いで彼に先立って軽やかにスカートを揺らして歩いていく。富裕区を抜け、平民区へ。まもなく、よっぱらいがエールを片手に表で座り込んでいる、酒場の多い通りを経由して小さな宿へとたどり着く。老夫婦が経営してるらしきこじんまりとした宿はありふれた看板が揺れ、小綺麗な佇まいだが目立たない。つまり、隠れ家としては適していた。
やがて歩くときぃきぃと鳴る木階段を昇ると、2階の角部屋の一室へ彼を伴う。

部屋は期間契約で借りているらしく、殺風景な旅籠と違い色々と雑貨が追加されていた。
フローリングには異国風の模様が描かれたカーペットやや大きめのシングルベッド、簡素なサイドテーブル。収納のかわりに旅用の頑丈な角鞄が積まれており、中には衣服や下着類。窓際には白いカーテンが揺れている。壁には乾燥ハーブが吊るされて、爽やかな芳香が香っている。広葉の観葉植物が鉢植えで植えられ、夜風にその枝を気持ちよさそうに揺らしていた。

細い脚によって支えられた小さなテーブルを囲む、これもまた小さな椅子に相手を勧める。外の様子を伺ってから、窓を締め。

「狭いけど、ここなら安全だよ。宿の主人も元々冒険者なんだー。
自己紹介しておこうかな。僕はタピオカ。これからよろしくね!
雇い主のお兄さんのお名前は……?
……あと、……メイドらしく敬語でいたほうがいいかな……?」

振り返ると、メイド姿ながら冒険者の素の口調に戻って名前を告げる。
ふわりと笑顔浮かべると、自分の立ち位置を一応確認して。

クロニア > 相手に対しての態度に落差をつけるのは処世術としては基礎である。
素直に肯定するのも良いのだが、一度相手を落胆させてから喜ばせることで返答の重みを増やし、喜びも同時に増す、筈でだ。
これは無意識の行動なのでご容赦願いたいが、これからメイド冒険者とは一種の主従契約になる筈なので、
あえて言葉で取り繕うこともせずにいる事にする。

「……砦、とは大きく出たな。」

盾となり剣となるは良く聞くフレーズである。
実際に私兵に雇った者達には契約の際に宣言をさせる際に良く言わせる言葉である。
それ以上、砦と盾よりも大きく守ると、……面白いと素直に思い、クッ、と小さく堪えるような声で笑う。

カシッと音をたて林檎を一つ齧り、碧色の瞳でメイド?冒険者?の顔を眺めると眩く輝く表情に本当に少しだけ虐めたくなる気持ちが鎌首もたげるが、
――…一先ず契約を結ぶことを優先と考え、林檎を齧りながら揺れるスカートと彼女のお尻の曲線を愉しみながら彼女の後をついていく。


富裕地区から平民地区。
見苦しい酔っ払いの姿を横目に酒場のある通りを抜けて、
辿り着くのは小さな宿屋……使用人の寮でももう少しマシだと思うが。

其処で悪態を吐いて全てひっくり返すのは得策ではなし。
今にも踏み込まれそうな音のする階段を上がり、後をついて2階の部屋へあがると、
矢張り彼女のお尻から案内された部屋の中へと視線を移し。

(………馬小屋かウサギ小屋だろうか?)

生粋の貴族であり平民地区など滅多に踏みいれぬ身分としては言葉にはしないが結果的にこの部屋を動物の飼育小屋に例えてしまう。

確かに色々とそろってはいるだろう。
夜風に混じり香るハーブの香りも悪くはない。
ベッドの大きさも悪くないし観賞植物もある。
及第点ではあるが壁と床が薄そうなのと、部屋の広さが気になる、が贅沢は言えまい。

さて、メイドか冒険者か…冒険者か、冒険者の少女が外を警戒する素振りから、
窓を閉めて外気を遮断して安全を確保してくれるので、
此処は信じて勧められた屋敷の食堂の椅子よりも粗末な椅子に腰をかけると一息……溜息を吐く。

もう一度言葉にはしないが心の中でぼやくが、部屋は及第定点である、マシではあるがそれ以下でもそれ以上でもない。

暫くの間砦となる少女を改めて査定してみるが、少女が居なければ長居をしたくない部屋である。

「……ああ安全だというのは信じておこう。タピオカだな、ああ短い付き合いになるかもしれないけど宜しく。で、オレの名前だが普段名乗ってる名前も使えないからな……さてどうするか……。」

相手の名前は一度で憶えた。
此処の主人が冒険者で安全である事も理解した。
一応短い付き合いになるとも宣言し、雇う期間を思案する前に眉間に少し皺を寄せて名前をどうするかと……。

――…名前でなくても良いのかもしれない。呼称とか。

「雇い主として名前を名乗りたいが、今のところはマスターとかお兄様とか、その辺は適当に呼んでくれ。信頼していない訳ではないのだが、名前は明かせないからな。」

それこそ貴族としてドロがつくと。
貴族にとって冒険者は一山幾らの駒である、それを重用なんて笑い種になる。
故になんて呼ぶかはタピオカと名乗った少女に任せるとして、口調に関しては……。

「……言葉使いは此処で二人きりの時は自由に外部に出る時は主従だと言う事を忘れずに敬語で。」

と親指と人差し指で自分の顎をさすりながら答えた。
外では敬語、中では好きにしろ、まあ無難ではあろう。

タピオカ > 自分にとっては小さくも居心地の良い角部屋。
そして同時に、おそらく彼の衣服一着の値段で年単位で貸し切れるか、あるいは宿の改装までできるかもしれない。
王侯貴族を案内する部屋としては確かに狭い。
城の胸壁に開く、弓を射掛ける細いスリットのようなものだと思ってくれたら幸い。

部屋には窓がひとつと出入り口の扉がひとつ。
脇にある小部屋は湯浴み用の場所となっている。
湯おけにて入浴となってしまうが、貴族のお屋敷のように陶器のバスタブはさすがに用意できなかった。
もうひとつの小部屋は生理現象のための、すなわち排泄のための部屋だ。
小部屋は両方とも窓がなく、ここからの侵入は無い。

扉を除いて唯一の外界とのつなぎ目たる窓を締めた。扉にも念の為内側から錠を下ろす。
これで簡易的な密室となる。
空気の動きがとまり、ハーブの香りが部屋を包み込む。

相手が椅子に座るのを見て。
あまり部屋を気に入った様子は無いものの、身軽な冒険者の身分としては鋼鉄のカーテンに囲まれ、身の丈遥かに越えるバリスタを備え付け、天井に侵入者避けの鉄球を仕込めるほどの部屋はさすがに用意できなかった。

自分を査定するような視線に気づいて、にこにこと笑いかける。

「それはわかるよ。名乗らないほうがもちろん安全だし、もしかしたら僕にとっても良いかもしれない。
――じゃあー、お兄様!あはっ、僕、家族に兄がいなくて。だから、お兄ちゃんができちゃったみたい!」

相手が名乗れないのは当然だろう。自分が名乗ったのは、どちらかというと名前の交換というよりも礼儀的なもの。こくんと頷くと、雇い主を兄と無邪気に呼んで声音を明るくする。
「了解したよ。……外では、ちゃんと主従関係のメイドになってお呼びしますね。
――さ、て……。夜も更けてきたね。見張っているから、今日はもう休む?お兄様?」

敬語についても頷いて。もう暗闇が深い宵の頃だ。
夜襲や寝ずの晩に備えて脚にまとわりつくメイド服を脱いで普段着のチュニックに着替えようと、相手に背を向けエプロンドレスの結び目をほどき、ワンピースのファスナーを下げ始め。
……途中で彼の存在を思い直したら、「少しだけ、横向いてくれてたら嬉しいな、お兄様……」と恥ずかしそうに呟き。

クロニア > 互いに警戒をし続けるのは今後の事を考えて良しとしない。
だから此方からも少し譲歩し和ませるための冗談の一つを言った心算が、
場を慰めるそれよりも真っ直ぐに受け入れられて、流石に困惑したが表情にだして、今更慌てふためいて否定するのも恥かしく、
あえて否定しない事で兄と呼ばれることにした。

利点は幾つかある。
兄妹と関係が周囲に伝われば色々と誤魔化すのも容易い。
名前を名乗る必要性もない、タピオカの兄と名乗ればいい。
――利点があるのだから仕方ないのだ。

スン、と窓を閉めれば鼻に香るハーブの香りは濃くなる、当たり前である。
その香りは嫌いな香りではないので気にしない事にして、
それよりもまだ決めないといけない事が……。

「……その認識でかまわない。外ではそうかマスターで通して主従を強調しよう。中では兄様で構わない、短期間であるが義理でもあるが、兄と名乗ろう。」

輝くような星を想像させるメイド?冒険者?妹?のタピオカの髪と違い此方は真逆とも言える金、瞳の色こそ近い色合いを見せるが、
肌の色がまた断然違う。
それでも兄と言い張れば何とかなるか、それとも今の髪色と肌の色を変えてなりきるべきか、
それも検討しておこう。
その手の魔道具は幾つか持ち出してきてるのだから。

で、大事な話である。

「……なる前にコッチの話もしておこう。契約期間なのだが、最長で1ヶ月、最短で2週間、1日につき手持ちから金貨を5枚だそう。オレの私兵が屋敷に戻れば連絡が来るようにしてあるから、其処で契約は終了。1ヶ月、連絡なければ否応なしに屋敷に戻らなければならないから、そうなっても終了だな。――契約終わった段階で追加で金貨50枚。」

とあくまでも期限付きである事を強調。
冒険者相手なので報酬も今のうち決めておくべきであるし、
兄と妹は仮初の関係なのだから、と必要ないが自分にも言い聞かせる。

でだ。
義理の妹にもなったタピオカが彼女が背を向けて着替えを始めると、
遠慮もなくその背中に視線を向けて、口元にニヤけた笑みを湛えて、逆に「……もっと寄って着替えて見せろ。」と
普段屋敷のメイドにする様に彼女に誘いかける。

タピオカ > 褐色銀髪のメイドは、「お兄ちゃん、お兄ちゃん、僕のお兄ちゃんー」と小さく鼻歌をうたって至極ご機嫌であった。雇い主たる彼の心情も知らずに。隠し持っていたショートソードの留め具を腰の後ろで音もなく外すと、スカートの奥からその得物が現れる。サイドテーブルに立てかけて。

「承知いたしました、マスター。不躾なメイドですが、今後ともどうぞよろしくお願いしますね。マイ、マスター。
へへっ、なんてー。
……そうだ。お兄様。手が空いてる時に僕にメイドとしてのお稽古、つけてほしいな。
王城での降嫁騒ぎはまだずっと続きそうだから、いつかまたお城へ行く時のために。
こういうのって、……また別契約になっちゃう?」

相手の言葉に淑やかなメイドに戻って口調を改め。にこやかで事務的な笑顔を浮かべる。
すぐにそんな様子も崩れて、ちろりと桃色の舌を突き出し。
隠匿生活の暇つぶし程度で構わないので、彼にメイドとしての嗜みを教わろうとする。
出会いのやりとりから、メイドの扱いには相当慣れていると思えたからだ。
しかしここもやっぱり、ビジネスライクになるのだろうか。と小首を傾ぎ。

「うん、了解したよ。事情は知らないけれど、お兄様の兵隊さんが戻ってくるまで、僕がお兄様の近衛兵になるよ。番犬になるよ。メイドにもね!……それじゃあ、最大200枚もお給与貰えちゃうんだね!よーし、がんばるよ!」

詳しい話は明日の後回しで……とも思っていたけれど、彼がきちんと契約の詳細を決めてくれ、話がスムーズになった。細かいお金の計算は苦手だ。書類は得意の剣術では仕上がらないからだ。護衛と隠れ家提供の見返りとしては破格と思われる報酬にぐっと両手の拳を握り、砦の塔としてしっかり、彼のそばに立とうと決意新たに。

こうして、この部屋での共同生活が始まるのだけれども。
間仕切りの無いという事に今更のように気づくのだった。
後ろ向きで、雇い主たる言葉を耳にすると頬を赤くし背を丸めるけれど。

「う、ん……。お兄様……」

誘いかけを拒む立場には、無かった。
ファスナーが開いてワンピースの隙間から少し露わになった背中から振り返ると、
林檎を一刀両断した自信もどこかへ散ってしまう。
俯き加減になると、パフスリーブのワンピースを恥ずかしそうに脱ぎ落としていく。
袖から肩を抜くと、チューブトップの淡いグリーン、薄生地のブラが浅い乳房を覆っている様子を露わにし、腰のあたりで一度手をとめ。上目遣いでお兄様を見上げ。するりとそれを下げれば、横を紐で結ばれた布地の少ない、ブラと同じ色のショーツを露出させる。そこは幼気に、ぷくりと丸い恥丘を張り付かせていて。

クロニア > ――…人形にするか否かを決めるのに女の身体は見飽きている。
見飽きているからこそ、美しいもの、愛らしいものに対しての審美眼を持ち合わせているつもりである。
冒険者にしてメイド、メイドにして妹が何か言葉を紡いでいるが、今はそれよりも視線の先の半裸の少女を
眺め値踏みするのが第一優先であった。

高貴な珈琲を想像させてくれる褐色の肌。
それを包むのは褐色の肌に良く映える淡いグリーン。
その若草に包まれた先の色もまた眺めてみたいもので。

「……発育は悪いか、肉でも食わせていけば何とか……で、脱ぐのはもう終りか?」

と、女が寝る前に何をまとうかは気にしたことなどない。
普段は自ら選んだものを着せるか首輪くらいで、寝る前に何を着るか下着の有無はどうするか、
その辺りがきになるので、少し暗にではあるが脱衣を促してみる。
無論この上から何か着て終りならそれはそれで良し。

しかし、発育は宜しくない。
着飾る人形にするには肉付きが悪い。
愛でて抱くにも、だ。

だがその夜空を見るよりも心地良い銀色の髪と褐色のすらりとした身体は
何もしないという選択肢を奪うほどには価値がある。
契約の魔法や魔道具があればいいが、それがない為の口約束。
報酬は守るつもりでは有るが、味見くらいは構わないだろうか。

半裸のタピオカに対して片腕を伸ばすと褐色の柔肌を堪能すべく、躊躇なく彼女のくびれた腰に掌で触れる。
表情は少し真剣に彼女の肉付きを確かめて、好みの人形に育てるべく……を考えながら。

それから、改めて彼女の一時だけの妹の提案に返答をすべく、「ふむ」と小さく唸る。

「――そうだな、メイドとしての稽古をつけるのは構わない。どうせ部屋に篭っていても面白くも何もないからな。対価は特にいらん、代わりに厳しく躾けるし言う事に絶対服従してもらう。あ、是はメイドとしての稽古をつけるときに限るがな?後は……貧相な身体の改善もだな。」

メイドのしつけなど地下室での遊戯と日ごろの屋敷のメイドの行動でしか知らないが、
全く無知な人間が教えるよりはマシであろう、マシであるレベルだから対価は取れない。

それにメリットがないわけでもない。
潤沢な資金を使って彼女を少し改善するのに良いチャンスでもあるからだ。

さて本当ならもう少し味見しておきたいが、隠れ家が決まり身の回りを世話する人間も決まった。
となれば少しだけ欠伸をして眠いことを暗に伝える、でも彼女の腰に触れるのは止めない。

明日は容姿を変えて買出しにでなければなるまい。
此処にいる間の服やらなにやら一式必要になるだろう。

タピオカ > 自分の背中に、直肌に感じる値踏みの視線に皮膚がちりちりと焼けるような心地を覚える。それが妙に胸の奥に熱を疼かせるから、羞恥と気恥ずかしさ混じりに体温が上がっていくのを自覚してしまう。
振り向いて、近くに寄り。チューブトップを押し上げる膨らみの先がつんと尖っている様相が相手の眼前にある。
服を着替えるつもりだったから、下着に手をかける事は無かったけれども。

「僕、……色々……なかなか成長してくれなくて……。
――え、……ぇっ、……、……もっと、……脱ぐ、……の……?
お兄様……。……恥ずかしい……、な……」

発育が遅れているのは自覚しているし、気にしている事だった。
下着の上から手を胸元でクロスさせ、それとなく膨らみを相手の視線から遠ざけようとするけれど。
脱衣促され、両肩をすくませる。
小さな肩を身体に寄せながら、伺うような視線で相手を見上げ。
しばらく躊躇した後に、雇い主の意思を汲み取る事を優先する。
ブラの後ろの結びを解きほぐすと、子供のように膨らみかけの胸がふる、と少しだけ揺れる。その頂点は薄桃色の小粒。乳輪も指の爪先ほどの慎ましい大きさで。
腰脇の紐を引くと、布地がはらりと舞い落ちた。床へ落ちるショーツの後ろから、つるりと無毛の幼い縦筋が露わとなった。切り立ってぽってりと厚く、小指の先ほどの肉鞘がその唇の上にちょんと点になっている。

「ぁ……ぅ……、……お兄様……」

肉付きは全体的に薄く、少年じみた痩身であった。腰は引き締まり、お尻も肉付きが薄い。胸元がほのかな尖りと丸みを帯びているのみの中性的な肢体。
裸の腰に触れられ、ぴくんと小さく身を強張らせる。

「それなら、……んっ、……お稽古お願いするね。ちゃんとお兄様の言うこと、聞くから。……やっぱり、少し眠いのかな。お兄様。僕が……。添い寝しよっか?」

メイドの躾けをつけてくれると聞くと嬉しそうに。裸身に恥ずかしそうにしながらも大きく頷いて。対価のかわりに服従するという条件にも同じく首肯して。
やがて腰に触れる手付きがあくび混じりになるのなら、そう言ってベッドへ誘い。
相手に先立って、ゆっくり。
ほんの数歩だけれど、白い清潔なシーツのかかったベッドに腰をかけて。軽く両手を広げ。
明日の買い出しの前に、ひととき憔悴していた彼を身体で癒そうと笑いかけ。

クロニア > 「……何良く食べて、良く運動して、良く抱かれれば適度にはな?」

薬や魔法を用いての方法が無くないわけではないのだが、その手の手法は好まない。
じっくりと育てて、成長の過程を楽しみ最後には堕ちる、それが人形を長く愉しむコツである。

彼女の場合は時が来るまでの護衛、為るべく終りが来るまで手折らぬように利用する為にその辺りも気をつけよう。
彼女が望めば別であるが、だ。

「――それでなくても、今のタピオカの身体はそれはそれで好む人間は多いと思うが、後は技術のほうだな、と……言葉過ぎたか、添い寝と寝起きは期待しているぞ。」

自室のベッドと比べて粗末ではあるが、仕方ない。
今のうちに慣れておかないと、とタピオカの腰から手を退ける間際にへその穴を突いてから離し、

勝手気ままに立ち上がると、隠しもせずに大欠伸をこぼして着の身着のまま本来であれば着替える寝巻きもない為に、
今着ている衣服で妥協して部屋の主より先にベッドに上がって、
ベッドの片側にあけてぬくもりを待つ。
だが今宵は先に瞼が重く、先に眠りに堕ちてしまうだろう。

――激動なる一夜から今だ続く諸々。
明日はタピオカをつれて買い物に出るとして……
あとは………と

意識は途切れるのであった。

偽りであるが兄と妹
主人とメイド

今宵から短い間ではあるが少しだけ歪な関係が始まるのであった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からタピオカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からクロニアさんが去りました。