2019/08/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 娼館『女王の腕』亭」にルドミラさんが現れました。
■ルドミラ > 王都の一等地に、通りがかりの者がはて、ここは何だろうと首を傾げる建物がある。
ガーゴイル像が玄関に立つ者を見下ろす、堅牢な三階建てのヴィラ風建築。
そっけないほどシンプルな分厚い扉には、 女性の腕を図案化した紋章つきのドアノッカーがついているが、住居らしくはない。
かといって看板の類は一切なく。魔術的な防音処理でも施されているのか、大抵静まり返っている割に、
夜には人の出入りが絶えない──そこが、『女王の腕』亭という会員制娼館であった。
娼館の内部はホテルめいて部屋数が多く、なかなかに入り組んでいて慣れぬ者にはちょっとした迷宮。 迷ってとりあえず鍵のかかっていない扉を開けると、その先にはどんなプレイに使うのか、 おどろおどろしげな器具がズラリ並んでいたりするため、 何も知らずに来た者は度肝を抜かれることもあるだろう。
■ルドミラ > 日中、営業時間外のいまは、酒類やリネン類の入れ替え等で業者が出入りする時間帯。
本日は夏前に注文した秋物衣装の仮縫いが上がってきた関係で。
テイラーと娼婦・娼夫たちが一階にある鏡張りの広間に入り乱れ、フィッティングを行なっている最中であった。
昼の早いうちから作業を始めたので、まだ眠気が抜けぬ様子の者もちらほら。
館の衣装係と手分けして彼らの間を順繰りにめぐる女主人はといえば、立ったまま舟を漕いでいる金髪の娼婦の鼻先で、ぱちりと指鳴らして目を覚ましてやり。
「しゃんとお立ちなさい、ポーシャ──ああ、素敵よ。回ってみせて。
髪を上げて、あごを逸らして……この色にして正解だったわね。瞳の色にぴったり。
襟元の切れ込みをあともう少し深く。身幅もきつめに。デコルテの美しさがより際立つように」
出来を確認して、満足行かぬ点があれば矢継ぎ早に指示を出す──男も、女も、外見的には10代半ばから20代あたりまでの花盛り。
衣装の新調に心が浮きたたぬはずもなく、笑い声がさざめいていた。
そこへ贔屓客から花や菓子が届けば、歓声も起ころうというもの。営業時間前にもかかわらず、華やいだ雰囲気である。
──と、かような次第ではあっても。来客か、出入りの業者か、従業員か。
誰であれ彼女に用のある者が姿を現せば、女主人はそちらを優先するはずだ。
■ルドミラ > 「お菓子は試着が終わった後。
もちろん衣装を脱いでからよ──あら、ディミトリ。あなたまた少し背が伸びた?
裾が少し短いような気がするのだけど……」
そう注意しながら。女主人の黒目がちの瞳は、まだ成長期の名残のうちにいる青年娼夫のボトムの丈を見咎める。
今は慌ただしい中にも寛いだ空気が流れる娼館が、ガラリと雰囲気を変えるまで、あと数時間──。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 娼館『女王の腕』亭」からルドミラさんが去りました。