2019/08/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にバージルさんが現れました。
バージル > 社交界の派手な催しごとからは、可能な限り一線を画してきた。
≪妻≫を亡くして以来、其れを理由にすれば大抵の相手は退いてくれたから、
彼女に申し訳無くは思いつつ、其れを言い訳にしてきた―――のだが。

其れでも偶に、ひどく執拗な誘いを受けることはある。
断ればより面倒なことになると解っているから、退けられない誘いも。
―――今日の催し物など、其の最たるものだろう。

地下サロンで日毎夜毎、退廃的な宴を繰り広げる此の屋敷の主は、
然し、大層力を持つ貴族であり―――進んで仲良くしたくはないが、
進んで敵対したくもない、そんな相手であり。

―――だが、どうしても耐えられないことはある。

年端も行かぬ奴隷娘を、数人の貴族が取り囲んで犯す、其処までは未だ良かった。
疲労困憊して崩れ落ちた彼女に、得体の知れない魔物を嗾けるに至り、
とうとう堪え切れずに席を立った。

地下からの薄暗い昇り階段を上がり、廊下の片隅で壁に背を預ける。
息苦しさに脱いでいた上衣を胸元へ抱える態で、己の身体をそっと抱き。
俯いて、仰のいて、深呼吸をひとつ。

「―――気分が、悪い……」

下では決して口にせず、顔にも出さずにいたつもりだが、
詰まるところ、其れが端的な感想だった。

バージル > 若い娘の声で名を呼ばれ、は、と気付いて顔を向ける。
屋敷のメイドの一人だろうか、妙に緊張した面持ちで銀盆を捧げ持ち、

『お水を』

―――其の言葉に潜む微かな震えを聞き取り、己はそっと眉を顰めた。

「有難う、……でも、遠慮しておくよ。
 少し庭でも歩いてくれば、多分気分も良くなるだろう」

無色透明の液体だからと言って、警戒を怠ってはならないのは、
此の界隈、特に此の屋敷では、至極当然のことである。
戸惑い気味に『ですが』と言い募ろうとする彼女に、
やんわりと、然しはっきりとした意思を示して微笑み返し。
抱えていた上衣を羽織り、庭へと続く扉を目指して歩き始めた。

一回り、庭を歩いて戻った時には、
己に一服盛り損ねたメイドの姿は見当たらず。
彼女が其の後どうなったのか、僅かに過ぎった暗い想像には、
敢えて気付かぬふりをした―――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からバージルさんが去りました。