2019/08/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にクロさんが現れました。
■クロ > 「……むにゃむにゃ。」
時を遡る事暫く。
とある拳闘の冴え鋭い喧嘩師の女と城に飲食目当てで侵入後に交戦に突入したのは良かったのだが、慣れないドレス姿のうえに騒ぎとなって護衛が駆けつけて来ない理由な無かった。
結局喧嘩師との決着前に横槍が入り邪魔をされ乱闘騒ぎに。
並大抵の兵が束になったところでどうにでもなると踏んでいたし、実際不慣れな格好でも大立ち回りを演じて暴れ回ったのだが、空腹が過ぎた獣はガス欠よろしく倒れてしまった。
ただ、倒れたものの本能だけで無意識下でも動けるらしく、悪意や敵意に反応しこの淫辱の宴の供物に捧げようとした護衛は手を出したが為に二度と性行為が出来ない体に。
また、行動不能にすべく手足を拘束なり筋を切るなりしようとすれば問答無用の無我の自動迎撃が飛んできて迂闊に近付けたものではない。
今は空腹のあまり活力節約の為に省エネ状態で寝ているようなものだと色々試した結果判明し、始末に負えないからと兵達の話し合いの結果そのうち目覚めるだろうからそれまでに此方もこのとんでもないじゃじゃ馬を取り押さえられる実力者か手段を用意するという結論に達したらしい。
宴の邪魔にならないよう、何とか中庭の隅っこ迄貧乏くじを引かされ新兵が猛獣を扱うよう慎重に敵意に反応しないよう無心で殴られたくない一心で誘導。
宴の興が醒めると苦情があり監視もままならぬ末端の兵の心労は限界を迎えつつあるが、来賓や貴族の命令に背く訳にもいかずいつ目覚め、目覚めてから何をしでかすか分からぬ女の形をした獰猛極まりない獣を放置するしかなくなり兵達は立ち去って。
ーーそれから暫く。
少し離れた中庭から入れる回廊の先では相も変わらず享楽の宴が繰り広げられ姦しいものだが、空腹が満たされぬ獣は夢の中で元々の狙いだった馳走でも食べているのか緩んだ笑みを浮かべ涎を垂らしながら中庭で惰眠を貪り続けていて。
けれど、休息のお陰である程度快復している事もあり、近づく者がいるか、あと少し時間が経過すれば目を覚ますのも時間の問題である。
■クロ > 「ーーーーん、……くぁ。……んー?」
長い睫毛が震え、ぱちり、と閉ざされていた瞼が開かれる。
むくりと追い剥ぎで奪い取った借り物のドレスを草まみれにしたまま上半身を起こし、腕を頭上に掲げ大きく伸びをし硬直した筋肉を延ばしながら欠伸を漏らして酸素を脳に取り入れる。
何故自分はこんな所で寝ているのか。
何故自分はこんな格好をしているのか。
寝ぼけ頭でイマイチ直前の記憶が思い出せず、動きづらいひらひらしたドレスの布地を指先で摘んで引っ張ったり、ほつれた黒髪に付いた草を払うべくぶるぶると顔を横に振ってみたりしながら少しずつ思い出そうとした。
が、その前に鋭敏な嗅覚が捉えたものがある。
ご馳走様の匂い。
それは乱痴気騒ぎを起こしている会場ではなく、別の会場から漂うものであったが獣にとっては誤差である。
シャキッと目を覚ます。
そうだ、自分は此処に美味しいご飯があるーー間違ってはいないが主目的は決して晩餐会ではないという説明を聞いていないだけであるーーと聞いて来たものの、ケチな兵隊を蹴散らすうちにいつの間にか寝てしまっていたのではなかったか。
直後、そんな雑兵とは違う食指が動く腕に覚えがある女の喧嘩師を思い出し姿をキョロキョロ探すがもういない。
残念だが仕方ない。まずは腹ごしらえだ。
ドレスは乱れたままだが恥じらいもなければ気にすることも無く、とん、と軽い足音に反し羽が舞うように跳躍し中庭から飛び出せば、そう言えば喧嘩師からもここではなく別の会場でどうのこうの説明を受けた気がする獣が求める会食が主目的の会場へと兵達の目を壁に柱に屋根に縦横無尽とばかりに自由に動いて目指し。
もう会食が始まって大分経過しているから残り物しかないであろうが、無事に辿り着いたならそれでも獣にとっては紛れもないご馳走をこの貴族や王族が集う会食に不釣り合いなマナーも品も欠けらも無い女が子供のがまだ作法を知るというみっともなさで食い散らかし、兵が異変に気づき駆けつけるギリギリまで滅多に食べれない晩餐を満喫してから活力を得た獣は上機嫌に王城を抜け出す事となろう。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からクロさんが去りました。