2019/07/15 のログ
ご案内:「富裕地区・時計塔」にルビィ・ガレットさんが現れました。
■ルビィ・ガレット > 時計塔内部に続いている扉を潜る際、衛兵にちらりと一瞥は向けられたものの。
彼らに呼び咎められることはなかった。どちらかと言えば機能性を重視した服装ではあったが、
見た目を損なわない程度の工夫は、日頃からしているつもりで。
その日頃の心掛けが、彼らの目に自分を「不審人物」と判断させなかったわけだ。
その事実に少しほっとしながら、同時に少し精神的な疲れも感じながら、
硬質な靴音を立てつつ、内部の螺旋階段を無言で上がっていく。
壁掛けランプに不備は無く、全てが均等に点っている。
驚くことに、光度の具合も均等。光源は火ではなく、どうやら魔力に依るものらしく。
光はオレンジ色というよりか、やさしい色合いの金色。ランプの近くを通っても熱さはなかった。
■ルビィ・ガレット > 途中、踊り場で立ち止まっては。興味本位に内部を観察する。
螺旋階段の中央には空間があって、そこに大小様々な歯車が鉄の棒に通され、
複雑に噛み合った状態で宙に浮いていた。
本当に、昔から理屈は解らないのだが――こういう構造には、心惹かれるものがある。
自分は、幾何学の類いに弱いのかも知れない。個人的に研究しているだとか。
特別に詳しいだとか。そういうことはないのだが。
……機械音。まるでオルゴールの螺旋を巻いている時のような、
歯車の回る音は、なぜか「時を刻んでいる」という印象を、自分には持たせない。
その音から湧いてくるイメージは、半吸血鬼にとっては「血流」であった。
■ルビィ・ガレット > もの思いが始まってしまって、女の紅茶色の瞳の焦点がぼやけ始める。
視線は目の前の何かを捉えているようで、完全に素通りしてしまっていた。
落下防止の手摺りに両手を付き、僅かに上半身を投げ出す。
……大小様々な歯車が、鉄の棒に通され、複雑に噛み合った状態で宙に浮いている。
そう再認識すると、いったん、最上階を目指すことは忘れた。
今は目の前の「小宇宙」のほうが大事であった。見た目や様子から湧いてくるイメージは、なぜか「小宇宙」であった。
「――私がどこか詩的なことを考えている時って、感傷的になっている時……よね」
手摺りに手を付いたまま、上半身を軽く引く。……さもないと、そのまま惹かれるままに身を乗り出しそうだった。
衣類か何かが歯車に引っかかったら、堪ったものではない。こんな大掛かりな機械仕掛けを故障させたら、
いくら請求されるかわからない。金だけでは済まないかも知れない。
■ルビィ・ガレット > 時計塔内部、螺旋階段で上がってその半ばほどにある踊り場。
そこで気の抜けた様子で立ち止まって、取り留めの無い思考に身を委ねていたが――、
「………」
手摺りに手を置いたまま、軽く背筋を伸ばす。歯車の回る音、その機械音に雑じれて、
誰かの足音が下から聞こえてきた。聞き違いではないだろう。耳はいいほうだ。とても。
階段や時計塔内部、その中央に君臨する大小様々な歯車、機械仕掛けのせいでよく見えないが――、
視線を、下に向ける。