2019/03/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」に竜胆さんが現れました。
竜胆 > 富裕地区の閑静な公園に、静々と歩いてくるは和装の少女、この地域にて珍しい服装をしている彼女は、とある商会の令嬢といって良いだろう。
 彼女一人、というわけではなかった。
 彼女の脇に、3m程の大きな犬……狼犬のグリムが歩いている。首には大きな首輪でその手には轡。
 犬の大きさを鑑みなければ、それは散歩の途中と言える様子であった。
 一家の中で唯一仕事も何もしていないから、彼女が狼犬の世話を司ることになったのだ。
 狼犬自体は嫌いではないし、外出の理由にもなるから、犬の散歩をするようになっていた。
 ついでに言えば、歩くのが面倒になれば彼の背中に乗ればいいのだ、グリム便利。
 そして、公園に到着すればベンチに腰をかけて、轡を首輪から外すのだ。

「グリム、行ってらっしゃい、迷惑かけちゃダメよ」

 公園はそれなりの広さであり、彼が走り回っても大丈夫なぐらいの大きさはある。
 なので、彼が満足するまで走り回らせるために公園に来るのである。
 彼も慣れたものか鼻先を軽く擦り付けてからあそびにいく。

 ―――その間は、暇なので本を読むことにする。

 家の中だと煩いし。

竜胆 > 外の気温は、まだ高いとは言えないが、少女は気にした様子はない。
 なぜならば、少女は自分から半径5m程の空間を自分の過ごしやすい気温にしているからである。
 魔術というわけではなくて、竜としての能力であるので、魔力の流れもないから、魔術師だろうが、それを見て見抜くことは実質不可能であろう。
 近寄ればポカポカしてるからわかるだろうけど。

 なので、風も冷気もなんのその、と言わんばかりに、少女はぱらり、ぱらり、と本をめくる。
 たまに視線を本から外せば、狼犬がその辺を走りまわり、転がってるのが見える。
 迷惑行為とかしてないとわかればまた視線を本に落とすのだ。

竜胆 > 暫しして、狼犬は思う存分走り回ったのであろう、少女のもとに戻ってくる。
 太陽の光が陰るのと、ハッハッハッというワンコ特有の息遣いに、視線を上げれば少女視界いっぱいにあるワンコの顔。
 充分遊んだという雰囲気のワンコ、その頭に手を伸ばして軽くなでる。

「もう、大丈夫なのかしら?」

 少女の問い掛けに、グリムはぅぉん!と、吠えるように返答する。
 やはり、彼は犬とかそんなレベルではなく賢いみたいである。
 さて、どうしようかと、少女は考える。
 まだ帰りたくはない、視線を向けてみれば……人の気配はいくつかある。
 もう少しだけ、と考える。

「グリム。」

 彼の名前を呼べば、ベンチの横に寝そべるワンコ。
 意思疎通もできる模様、もう少しだけいると言わなくても、彼は待機の様子を見せるのだ。
 ただ、甘えているのかその頭は少女のひざに乗せるのだ。
 よしよし、と頭を撫でてから、もう少しだけ、と本に視線を落とす。

竜胆 > 「――――んー……っ。」

 長時間本を読んでいたからか、背中がちょっとごきばきする。
 集中力が切れた、とも言えるし、少女は本から視線を外すことにする。
 きょろり、と周囲を見回して、ふむ、と小さく唸った。
 人の気配がかなり薄くなっているのだ。
 場所も場所だ、おそらく家に帰ってしまっているのであろう。
 そろそろ、自分も家に帰りどきなのであろう。

 本は切りの良いところまで読んだし、と、閉じることにする。

「帰りましょう、グリム。」

 少女は、狼犬に軽く言葉を紡ぐ。
 狼犬は休んでいた頭を持ち上げて、しっぽを振っている。
 帰ることに異存はないようなので首輪に轡を取り付けて、立ち上がる。
 それから、狼犬も立ち上がれば紐は上の方に伸びていくのは、体格が大きいからだろう。

 少女が歩き出せばその歩調に会わせて狼犬が歩き出して。
 そのまま一人と一匹は公園を去っていった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」から竜胆さんが去りました。