2018/11/07 のログ
ご案内:「マグメール カフェ」に紅月さんが現れました。
■紅月 > ーーーカリカリ、パラ…カリカリ……
とあるカフェバーの夜空が一番よく見える窓際…そこは、彼女にとっての定位置。
のんびりする時もグダる時も、外のテラス席を使わない時はいつも此所で。
…今夜は、何やら変わった書き物の真っ最中。
片手にはキャラメルマキアート、手甲に包まれたもう片手には古代語の魔術書…パラ、パラリ、とゆっくり頁を捲っている事から読書中なのは端から見てもわかる事だろう。
…変わっているのは、テーブルの上で。
4人掛けの机には重厚な革張りの羊皮紙の白紙本が3冊、インク壺が1つ…フワフワと浮游しながら白紙本に文字を書き込んでいく美しい細工の羽ペンが3本。
女が読み進めると同じスピードで少しずつ真っ白な本が黒で埋められていく。
…本日この紅娘が請け負ったのは、古代語の魔導書の翻訳と写本作りであった。
■紅月 > 自動筆記の魔術により綴られていく内容は、実はそれぞれが違う。
一冊はごくごく普通の写本、一冊は現代マグメール語への翻訳版。
残る1つは…?
翻訳と同時に挿絵や走り書きなどが多分に盛り込まれた、さながら学生のノートのような様相となってしまっている。
…もしもこの作業を眺めている者が居たならば、三冊目の其れだけ羊皮紙の質が良くない事に気付いただろう。
特別、と言っていい程に穴空きの羊皮紙がたくさん使われているのだ。
「…内容がこうなら、この穴は縫って……こっちのは絵の一部にした方が綺麗か」
そう、羊皮紙は手間がかかるぶん値が張り、だからこそ多少の傷や穴はそのままで販売される事もあり。
よく街の女共が羊皮紙の修繕を仕事にしたりしているのだが。
手工芸なんかの手作業が好きな己としては穴空き羊皮紙独特の味が好きで、纏めて安めに買い取っては手直しして遊ぶのだ。
更に書かれるのが古代の魔導書の内容となれば、もはやただの古書アートを兼ねたコレクションである。
■紅月 > 「……、…んんーっ!」
区切りのいいところまで読み進めれば自動筆記を止め、古代語の魔導書の原本へと栞を挟んで一息、一伸び。
伸びついでに窓の外を見て…固まる。
「…あれっ、えっ、嘘ぉん…もう真っ暗じゃないさ。
うっわ根詰めすぎた…っあぁぁ、腰痛ぁっ!」
ゴギリッ、と、中々にイイ音が店内に響く。
ついでに店主や店員達の小さく噴き出す音も聞こえる。
この紅娘はどうにも何かに集中すると周りが見えなくなる傾向があり、本日も案の定…店員達も慣れたもので、面白半分に放置されるのはいつもの事である。
「休憩休憩、今日はここまで…!
これじゃあ暇潰しどころか完全に仕事しちゃってんじゃん!」
はぁ…と溜め息をついて机に胸を乗っけつつ突っ伏す。
くるりと指を動かせば、勝手に片付いていく机の上…装飾の施された魔法の羽ペン達は革のケースに収まり、書きかけの本はテーブルの隅に積み上げされて。
「…喉乾いちゃったな……
あ、すみません…メニュー表もらえます?」
伏し目がちに左の指先で喉へ触れ…たまたま通り掛かったのか寄ってきたのか、右手を軽くあげて近くの店員に声をかけた。
■紅月 > 「ん~…じゃ、カーディナルを。
後ほら、この間言ってたドライフルーツとショコラ!
そろそろかと思って来たんだけど…マスターに訊いてみてくれる?」
オネダリする方もされる方も、すっかり慣れたもの…笑顔で頷きカウンターへと向かうウエイトレスを見送り、再び窓の外へと視線を向ける。
月はもうすっかり細く、星々の煌めきに霞んでしまう程。
新月の日にはどうせ血肉への飢餓感で作業に集中出来ないし、なら山籠り…は、またギルドマスターにどやされそうだ。
となれば巣籠もり…は、それこそ飽き飽きだ。
「仕方無い、知り合いん家にでも転がり込むかね…」
苦笑と共に、溜め息ひとつ。
■紅月 > 酔う前にと書きかけのアレコレを仕舞い、テーブルの上はまっさらに。
どうせ御一人様だからとカウンターへ移動すれば、後はマスターや常連相手に楽しく飲み明かして…
ご案内:「マグメール カフェ」から紅月さんが去りました。