2018/08/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」に紅月さんが現れました。
紅月 > ―――――かつ、かつ、かつ…

一仕事終え、帰り道…ついでに気晴らしと散策を。
今日の仕事は随分と刺激が強かった…貴族の護衛、けれど護衛といってもパーティーの護衛で。
そのパーティーというのがどうも、後半からおかしな流れになっていき…うむ、思い出すのはやめておこう。

護衛の立場上強制的に見せ付けられたアレコレと媚毒にクラつく体に、夜風が心地いい…

「…いや、もう、参った……」

白手袋に包まれた片手で額を覆いつつ、思わずボヤく。
オマケとばかりに溜め息一つ…男の声が夜に溶ける。

熱に浮かされたまま、何となくふらふらと歩いてきたが…ようやっと、ちょっとばかり頭が冴えてきた。
此処は何処か、と、水音に向けていまだ熱っぽい目を遣れば、噴水。
見覚えのある噴水だ…たぶん、きっと、おそらくは。

「……いっそ浸かったら頭冷えるかねぇ…?」

それなりに上等な格好で非常に阿呆な発言…自覚はある、しかし誰も居ないんだから大丈夫。
さすがに本気で頭を突っ込む気は無いが、噴水の縁に手をついて…水面に映る夜空と己を眺める。

…残念ながらこの紅髪の男、紫煙を燻らす男性に気付いていないらしい。

ジェルヴェ > (空を見上げる顔がふと正面に戻る。静まり返った広場の中、遠くない場所に人気を感じた為だ。
噴水から立ち上がる水しぶきの止め処ない音が相手の零す独り言こそ掻き消したが、前に向けた視界に赤髪の青年がどこか頼りない足取りで歩いてくるのを確認する。

しばらく何の気なしに眺めていたが、最初に思ったとおり、青年の歩調はやや遅く気だるげだ。具合が悪いのかどうかは分からない。街灯があるとはいえ、男の座るベンチから青年がやがて辿り付いた噴水まで、顔色を確認出来るほどの距離感ではなかった。
――――丁度相手から見て、ここは死角なのかもしれない。噴水の中央に突き刺さった天使かなにかの彫刻が阻んで、その奥に位置するこちら側には目が届き難いのだろう。
縁に手を付き上体を預ける前かがみの姿勢になった今の青年にならば、向こうもこちらが確認できるかも知れないが)

「……なァお兄さん、入水にはちょっとそれ、底浅すぎンじゃねぇかな」

じっと水面を見つめる青年。後ろの背凭れへ腕を引っ掛けながら、水音に負けぬよういくらか張った声で語りかける。
気落ちしてふらふらと歩んでいたのならそれは皮肉、体調が悪くて体を休めようとしていた場面なら…やはり皮肉だ。

紅月 > 声がかかった。
はて、人が居るようには見えなかったが。
気配を探れば確かに一人…声から一、二拍程度遅れるようにしてゆるりと顔を上げれば、見覚えバッチリ酒場の店主。

「ん…アレっ? ジジさんだ……」

思わず零れた声は、やはり水音に流されてしまうだろうか…
ただ、紫の瞳が男性を視認した後の…ぱちくりと目を丸くして固まる気配は何となく伝わるやも知れない。
ゆっくり上体を起こし、きちんと彼が見えるように噴水を迂回しつつ歩きながら口を開こうか。

「…あはは、確かに。溺れるにはコツが要りそうだ。
お兄さんも散歩かい?」

軽く手をヒラヒラと振りながら、ゆっくり歩み寄る。
夜風にふわりと紅の髪を踊らせつつに。
…先程つい呟いて気付いた、そういや今男の形だったわ。
そんなささやかな動揺を、やはりどこかぼんやりと…熱に浮かされたままの苦笑で覆い隠して。

ジェルヴェ > (燕尾服が夜に映える。見た所作りは上等品だ。場所柄から、どこかの屋敷の使いかと当たりをつけたが)

「……散歩。まあ、そうね。ありゃ散歩だ」

(からかい混じりの声をかけたことで、青年はこちらに気付き―――数拍おいて、男に向かって近付いてくる。
随分と毒気のない笑い顔だった。それを印象に残し何事か考えながら、変わらない調子で応じる。
青年がベンチの方まで歩み寄り、近付いてきて初めて顔が少々紅潮した様子に気が付いた。)

「なんだ、酔ってんの?君の散歩は酔い覚ましついでか」

(そう。丁度いい具合に酒が入って、ほろ酔い状態の顔色に近い。執事服に身を包み職務中――かどうかは知らないが――に飲酒とは、なんと羨ましい身分だろう。けしからん。
眉を寄せて笑い、煙草を一口吸い込んで。青年を眺め紫煙を吐き出す間、数秒前の思案へ不意に答えが出た。そうだ、顔立ちや特徴が知り合いに似ているんだ。)

紅月 > 「…うん?
否、酔っては……うん、酔ってるっちゃあ酔ってる…かも?」

顔色について指摘されれば、少し考えた末に…首肯を。
さっきまで居た会場が会場だっただけに、何だか普通にいつもどうりな彼にホッとする。
…平凡っていいよね、のんびり出来るのが一番だ。

「散歩で覚めてくれるモンなら良かったんだけどなぁ…酒じゃないから、もう軽く一週間以上抜けてくんなくてさぁ。
ギルドの依頼ついでに自分から首突っ込んだんだから、自業自得なんだけど。
いやはや…好奇心には勝てない、ってね」

気が緩んで、ついついポロリと。
うなじを軽くさすりつつ、困ったように笑って話す。
訊けば返ってくる辺りも似ていれば…耳飾りと背中の得物に至っては同じ物、である。
…ふわふわした頭では、さすがに大太刀を隠す事までは思い至らなかった。

ジェルヴェ > (記憶に残る人物と目の前の青年を紐付けて、一つ一つ視線を移し確認していく。
まず顔立ちが似ているのは、最初に思ったとおりだ。髪色も同じく赤毛で、瞳の色は…まあ、多分同じなのだろう。暗いからよく分からないが。
それから、青年の背中越しに見える武器の柄には見覚えがあった。
昔取った何とやら。それなりに目は利く方で、知人が手にしている姿はある夜一目見た限りだが、あれも同じ代物だろう。――多分。

――――平然とさせた顔の下。思惟の中でやたらと”多分”がくっ付いて回るのは、決定的な確証が足らない所為だ。まず思い浮かべる知人とは性別が違う。共通点は沢山あれど、一つの違いが他が示す符合の何より大きい。
片腕を背凭れに引っ掛けたまま、男は座りなおす所作で脚を組み、無遠慮にくつろぐ姿勢で青年の受け答えを聞き終えて)

「……君、姉さんか妹いる?美人で、巨乳の」

(トツ、と煙草の吸い口を軽く指で弾き灰を地面に散りばめながら、酔いは酒の所為でないと言う不可思議な情報を聞いた本人がさておき、唐突にそう問い掛けた。
考察の末、安直に導き出した答えは自分の知人と青年との血縁関係だった。浅く寄せた眉を訝しげに表して、まじまじと酒ではない何かに酔った相手の顔を見つめる。座ったまま僅かに上体を乗り出させ、覗き込むような格好で。)

紅月 > 話している最中、というか、何だかずっとじっくり見られてる気がする。
世間の女が"胸や尻を見られればすぐ気付く"と宣う、その感覚である。
けれども、はて…今日の服は洋装、それも結構きちんとしているはず。
何処か変なところでもあったかと少し悩み、のんきに首を傾げるのだが。

「……うん?
いや、筋骨粒々な兄上や義理の姉上達ならいるけど…っ!?
な、っなんだ…どうかした……?」

目をぱちぱちと瞬かせて…こてり、と、逆側に首を傾げ。
軽く腕を組み、白手袋を外した指先で唇に触れつつ思考に耽ろうと…したのだが。

不意に覗き込まれれば、やはりと言うべきか、動揺。
狼狽え体勢を崩すように半歩下がる。
酔った顔色に、更に…少しばかり赤みを加えつつに。

目の前の男性は、お茶目というかユルいというか抜けてるというか…そういった所はあれど、女慣れした雄の艷やかさがあるのだ。
つまり…有り体に言えば、大人の色気というヤツで。
こう、なんか、じりじり詰め寄られるとどうしたらいいかわからないというか…色男って狡いなぁ、と、しみじみ思う。

ジェルヴェ > 「ああ、それ。その、怒らす一歩手前までついついいじり倒したくなるよーな反応も似てる」

(ずり、と青年の靴底が地面を擦った。若干退いた相手の体の分だけ距離が長くなるが、こちらの姿勢は変わらない。
警戒されたのか、照れさせたのか。見る限りは同性と言うこともあり前者と思しいものの、不振がる素振りと言うより纏う雰囲気は後者に近い。
動揺を露わにした青年の様子を楽しげに、喉奥で生まれる笑い声を混ぜながら感心したように告げて)

「男兄弟はどうでもいい。
俺の知り合いにさ、紅月って名前の女の子が居んの。本人かよってくらい似てるから、君の姉さんか妹かなと」

(告げられた答えにまず真っ先にそう言い切る辺り――そも初見で皮肉を投げつけた辺り、同性に対する扱いは大雑把だった。
その間にも火種が侵食しそろそろ短くなり始めた煙草を吸うに際し、吐き出す紫煙の向きは対面した青年に向けたまま。互いの間で薄く立ち込めた煙が風に、空気に消えていく。)

「けどその似方は確実に両親同じって感じだろー。双子じゃなきゃ乳もげた同一人物だ」

(けらけらと呑気に笑う。よもや続けた冗談が真実だとは、思ってもいない様子だ。)

紅月 > そんな風に思ってたのかコルァ、なんて。
女の時であればケラケラ笑ってツッコミもしたのだが。
まさか一般の方に"本人です"と告げる訳にもいか、ず…

「…っ……へ、へぇ…紅月ねぇ?
コッチじゃ珍しい響きだなー…」

やはり動揺したまま相槌を打つ…マグメールでは珍しい音の並びであるその名を、言い慣れた調子でさらりと復唱して。
つぅ…と、冷や汗が頬を伝う。

「…っ!!……っそ、そんなに似てるのかー、そりゃあスゲェなぁ~…?」

ビクゥッ!と、肩が跳ねる。
言うまでもなく『同一人物』というこの決定的な単語で、だ。
例えば仕事中ならともかく、今は気を抜きまくったオフの…それも、相手は個人的に気に入っている人物である。
元来"バカ"が付くほど正直というか、実直な質である紅月が…上手く嘘をつけるはずもなく。

…視線が、顔ごと明後日の方を向いている。

ジェルヴェ > (てっきり血縁者だと思っていた。だからこそ見ず知らずの青年に知人の名も告げた。
しかし返ってきた答えはどうだ。まるきりの無関係だと言いたげな、聞き覚えもないような反応…を、青年は懸命に装っている。
今度は男の顔が徐々に横に傾く番だった。元々和やかに入っていた眉間の皺が一本、また一本。怪訝そうに深く刻まれていく。)

「………、…」

(抑揚がどこか迷子になったような相槌。当たり障りがないのは台詞くらいなもので、心と体は言葉とは全く別のことを示している。そんな様子を眺めて、ほんの数秒。
理解を超えて結びつく答えだけが脳裏に張り付き、男の眼を驚きに丸く縮こまらせ、そして)

「―――――…紅ちゃん、」

(組んでいた脚を解き、両膝に手を付いてゆっくりと立ち上がる。腰を上げると同時に、指に挟んでいた煙草は地面へ落とし、やがて自然に燃え尽きてしまうのに任せた。
一歩前へ。足りなければもう一歩。静かな足取りで相手との距離を縮めていくが、互いの間を詰めるのに要した時間は一瞬のうちに終わった事だろう。
男の顔はひどく真摯だ。浅く眉を寄せたまま、引き結んだ表情で知人の―――相手の名を呼びかける。空にした利き手を伸ばした先は、相手の片手だ。叶えばそっと握って捉え、目の前にある顔を見つめた。瞳の色も同じだったと、今になって分かる。)

紅月 > ビクッ、と…肩が揺れる。
まるで叱られる事を恐れる子供のように…名を呼ばれて、身をすくませる。
手を捕まえる力が優しくて、却って振り解けない。
そうして、名を呼ばれれば…

「…っ……っ、ハイ…」

やっぱり…嘘はつけなかった。
化けるのが本分とも言える妖の類、瞳の色を変えるくらいの事は簡単に出来た…それでも、やっぱり、悪戯以外で騙すのは好きじゃない。

視線が己の横顔に突き刺さる…相変わらず、彼の顔を見ることが出来ないままに。
バレてしまっては、仕方無い、故に…口を開く。

「……、…"どっち"も、"本当"だから」

とりあえず出てきたのは、そんな言葉だった。

ジェルヴェ > (予想通り…と言っても殆ど自動的に浮かび上がった結果だが、呼び名に続いた返事が何よりの確証だ。
じっと見据えた顔は誤魔化そうとどこか遠くに向けられたままで視線がかち合うことはなかったが、ぽつりと続け様に放たれた言葉に男の懸念が払拭される。
また僅かに目を瞠って、流れる沈黙に小さく息を吐いた。それはきっと安堵の溜息だ。
聞きなれない声で告げられた言葉を頭で繰り返す。どっちも本当、それが示す意味は)

「…じゃあ、どこかにおっぱい落っことしてきた訳じゃないんだな」

(自然と手を取り軽く絡めた指に力が走る。痛みを与える程度ではないが、本人からのたしかな同意が欲しい。切に願う、そんな仕草だった。
きりりと結んだ深刻そうな表情、硬く低い声質で。孕んでいた不安を明かす大真面目な口振りはなおも続く。)

「どっちも、って事は。おっぱい落として変わりに竿と玉装備した訳じゃなく、おっぱいにも竿にもなれるんだ。
 あの巨乳は、――――…無事なんだな」

紅月 > 「……、…はぃ…?」

控えめな声と共に浮かぶ疑問符。
アレっ、なんか耳が…緊張で聞き間違えちゃったのかな?
そんな事を一瞬考える。
いやいやしかし、軽く絡む指がしっかりと手を握る感触はきちんと伝わるし認識できてる訳で…チラッと目を向ければ、何故かやたら深刻そうな表情。

「・・・。
おっぱいはいつも所定の位置にあるし、迷子になった事はないし、もげた事もないけども。
あぁ、うん、えぇと…ジジって結構柔軟に受け止められる方なのなー?
…その、種族的に、生まれつき"どっちか"になれるんだ」

やたらと大真面目な相手に、困惑しきった表情を浮かべ…ようやっと視線を交えて語る。
…やんわり人間ではないと告げる事になってしまったが、何だか違うところにヤケに注目している男がマトモに聞いているかどうか。

「……って、いうか…放せって…
ドキッとしちゃったじゃんか、悔しい…」

空いた手で口許と、赤く染まった頬を隠し…しっかりと繋がれたままの手を軽く引く。
片手で隠したとはいえ、耳まで染まっている為に隠しきれていないのだが…当人は視線を足元に向ける事に必死で気付いてはいないようだ。

ジェルヴェ > (握った手の感触は固い。骨張って節が立ち、紛れもない男性の手だ。
あの柔らかそうな白い肌はどこへ。こうして手を取った記憶はないが、女性の姿で会った時に交わした数少ないふれあいの中ですべすべと感触が良好だったことは覚えている。それらは、どこへ。
柔くもない手を握っていると思い知り、一瞬悲しくなった。…いや、待て。そう言わんばかりにふと男の視線が手許に集う。
手触りは変わっていない気がした。真顔のままたちまち思考がシミュレートに働きかけるのを、相手の声が止めてくれる。)

「種族。…ああ、俺も若い頃はよくヒト以下だなって吐き捨てられたよ。別れ際の修羅場とか」

(中々まとまらない想像に意識を集中しかけたお陰で危うく前半部分を聞き漏らす所だった。が、目の前にあるその体は意識的に自在に操れる変化らしいと確認を終え、本格的に一安心。
何か言い難そうに締め括られた言葉には小さく低俗な例を持ち出し同調を示しつつ、軽く逃げを打つ手から指を解く。
凛々しく纏まっていた顔付きは既にへらへらと笑っていた。すっかり普段の緩さだ。)

「なんだ、ときめいた?でも俺焦ったからね。あの乳揉めないままこの世から消失したのかと」

(覆い隠された顔が心なしか、最初に見かけた頃より赤い。彼女―もとい。彼の耐性は姿は違えど不変らしい。昇った熱を測ろうと、赤く染まった耳元にひた、と手の甲を押し付けた。
熱い。それが可笑しくて、更に呑気な笑い声が重なる。)

紅月 > 「えっ、いや、そういうんじゃなく…」

きちんと訂正すべきかと思いはするものの、それより何だか脱力してしまって。
その脱力が呆れなのか安堵なのかわからぬままに…とりあえず。
解放された手を空いた手で掴んで、男のへらりとユルい笑顔にジト目を向けるのだ。

「ううぅ、ときめいたわバカやろー…
ふっざけんな…っはぁ、只でさえタチの悪い媚薬に酔いっぱなしで、ずーっとクラクラしてるってのに…っ……」

そう、耐性がないついでに…餓えていた。
体温は熱い程、目は潤んで身体は疼き始めている。
そんな状態であるが故、耳元なんかに触れられればビクリと体が跳ねる訳で…恥ずかしさから熱は上がるばかり。
けれど、その手の温度が心地よく感じてしまっては…出来る事はただただジト目を向ける事だけで。

「……どうしてくれんだ、バカ~…」

ジェルヴェ > 「……あれ。やけに素直だな。
 ………びや…、あー、さっきの」

(突き刺さる、と言うよりは念が纏わりつくような視線を気にした風もなく。むしろ気になったのは揶揄をそのまま肯定する相手の素直さだった。
漏らされた一言に途切れていた線が繋がる。そういえば、酔っているように見えるのは酒ではなく…と、最初は確かにそんな話だった。
何故そんな事になっているのか。仕事がらみと軽く聞きはしたが、気紛れに耳へ手を押し当てた刹那、熱っぽく跳ねる肩に笑う唇が一文字に引き結ばれた。
媚薬が効いているとなれば。この悪ふざけは相手にとって、さぞや酷だったろう。)

「むしろどうして欲しいの。
 …んん、その目つきだとあれか。興奮する系のやつか」

(確かに彼の言うとおり。事情を知らなかったとは言え、非は圧倒的に男のほうにある。困っているようないないような、もしくは申し訳なさそうなそうでもないような。相変わらず緩い笑い顔を残し、浅く首を傾けて相手の耳へ悪戯を仕向けていた手を退いた。
送り込まれるじっとりした視線を受け、その眼差しに込められる艶っぽい光を覗く。

媚薬と一口に言っても、作用は多岐に渡るもの。様子から大雑把に当たりをつけて呟くと、ふむ、と一拍。引っ込めた手をそのまま自らの顎へ当て、やや首を傾けたまま一考ののちに放つ口調は、それまでの軽口や揶揄より落ち着いた、宥めるような柔らかいものだった。)

「マジで辛いなら店連れてくよ。
 酒は出さねぇし、紅ちゃんが薬抜けたあとで後悔しないって思えるなら、だけど」

紅月 > 「え?…んぅ、と……
そもそも魔法薬の類いだから、分類があるのか怪しいんだけど。
実感としては…やたら欲しいのと、いつまでもシてたいのと、それでもいっか~って思っちゃうのと、ゾクゾクしやすいのと?
あー、恥ずかしがらなくなったってのも言われたかも…大胆?とかって」

相手が媚薬の効能を推測すれば、とりあえず思い付く限りあげてみる…魔法薬の知識はあっても、媚薬の知識は無いが故に。
性への羞恥心が欠けているのは良いのか悪いのか、普段ならあり得ない程につらつらと正直に赤裸々に…世間話をするような顔で。

耳元から手が離れれば、ほぅ…と息を吐いて、ついつい物欲しげな視線を送りつつに。

「ん~…後悔、後悔なぁ……
どっちで致すにしても、普通の人間相手に事故で孕むような身体じゃないし…ジジは乱暴したりしないだろうしなぁ。
コッチからすりゃあだいぶ安心な部類、なんだけど…うーん?」

相手がきちんと考えてくれるなら、此方も…淫欲に靄のかかった頭ではあれど、それなりに考えてみる。
幸い己は吸精を習得している故、化け物じみた精液でもなければ…自ら孕もうとしなければ、そのテの心配はほぼほぼ無い。
けれど…引っ掛かるのは其処じゃあなく。

「…ジジさんや、人間族以外の女を抱けるかね」

そう、気になるのはやはり其処で。
…黙っていればバレやしないのだが、やはりそれはフェアじゃあない。
となれば…羞恥心が無いのもあって、ストレートに豪速球をブン投げる。

ジェルヴェ > (淡々と重なっていく解説と胸の内。ただし後者の部分は”本来は”という注釈をつけたほうが適切だろう。
一つ一つを頭の隅に留めつつ、こちらの問いを受けてなにやら考え始めた相手が再び口を開くのを待つ。ひとまず待って、疑問符が返って来ると)

「うん、とりあえず心配しなくていいのは理解した」

(噛み砕いて頭の中で情報整理、結果としてそんな結論に行き着いた。
羞恥心なくあけすけにこうした話が出来るのは、まさに薬が効いている証拠に他ならない。相手がこの手の話題に弱いのは知っていた。
だからこそ。成り行きで肌を重ねた行く末に、彼または彼女が悔いる状況に陥る可能性があるのなら。それを止めるのはこちらの役目になるだろう。

そうした一つの気懸かりが消える。体で関係を結んだとしても安牌とさっくり言い切られた気がして刹那、大いに複雑な気持ちになった事も相手を案じる推察も、外には出さず綺麗に水に流して飲み込んで。)

「あれ、女の子のほうになんの。俺別に男でもいけるけど。…まあ、紅ちゃんに任せるよ。
 じゃー、行くかー」

(改めて相手が問いただしたのは種族についての事だった。今更か、そう言外に眉を寄せて笑い、相手が問う意図とは外れた台詞で敢えて返す。
―――無造作に伸びを一つ。背を逸らして体の筋を解すと、足のつま先を帰路へ向けて歩き出した。すっかり戻った軽口めいた出発の合図まで、やはりどこまでも緩い。)

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からジェルヴェさんが去りました。
紅月 > 「うんうん、たぶん後々恥ずかしくて悶絶すると思うけど…ねぇ?
変なのに手ェ出されるより、気持ちよくしてもらえそうな方がずっといいじゃんか。
それに…何より、もうジジに隠し事しなくて済むしさ~ぁ?」

クツクツと愉快げに笑いながら、あっけらかんと答える。
餓えては居れど、どうでもいい男には抱かれたくないから構わん…と。
それより…と続けた言葉には本当に嬉しげな、何処か安心して気が抜けたような穏やかな笑顔を添えて。

「え、そっち?
……ぷっ、ふふっ、あっはははっ!
ふ、ッククッ…あぁ、うん、お供しますとも」

彼の笑顔に、思わずキョトンと間抜け面で返して…後、何だか一連の流れに笑えてきてしまった。
そうか、そうだな、と…彼の後ろに続きながらも、何となく愉快げな笑い声が止まらぬままで。

はてさて"どちら"で抱かれたのやら…それは月さえ知らぬところか。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」から紅月さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 貴族邸」に芙慈子さんが現れました。
芙慈子 > 夜会の開かれているホールに、東国の着物を着た少女が佇んでいた。
最近まで村から出ることは最低限だったのだが、社交界デビューは突如やってくる。
男を知り、世間を知り、そろそろ社交界に慣れさせることで、
爵位をもつ貴族を魅了する術を得よとの母の命令は―――今宵、従えそうにない。

「………」

視線の先に主催者たる男の姿。
特別美男でもないが、不細工でもない。
しかし少女の琴線には触れず、母の代わりとして出席した挨拶を交わして以降、それきり。

あまり欲がない男のようだった。
現状に満足しているのか、元々そういった性質なのか、少女には判断しかねるが。
容姿などよりヒトの欲望や葛藤に惹かれる少女には退屈な男に見えた。
それよりもここで一晩の相手を求め、寒々しい言葉で
手当たり次第に口説いている別の男のほうが愉快だったくらいだ。

まだ幼さ残す視線はその男に注がれる。
今もまた、玉砕した。

悪趣味な少女は、壁際でジュースの入ったグラスに唇つけながら、クスと笑う。

芙慈子 > ヒトは好き。
会話も嫌いではない。

それでも夜会が肌に合わないと感じるのは、ただ自分が楽しめば完結する場ではないからだろう。
子どもらしからぬ落ち着きを見せることがある少女も、結局は子どもらしい。
愛想を振りまくでもなく、退屈だという感想を露骨に面に出し、時間は過ぎていく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 貴族邸」から芙慈子さんが去りました。