2018/08/05 のログ
月永遠花夕 > 暑い時はこの澄んだ音色に限るね。噴水の水音もいいけれど。
ボクは噴水のへりへと座ると煙管を上下させた。この時間だと客もあまりきそうにないなあ。日は既にどっぷりと沈んでいて夜空の月が優しく辺りを包んでいる。

「うん、風もあって涼しいし良い夜だね。」

僕は着物の裾をあげると噴水の水面へと足を落とした、水の冷たさが足を包んでいくのが心地よい。

月永遠花夕 > ボクはしばらく噴水の水と戯れていて、しばらくすると店をたたむことにした。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/噴水のある公園」から月永遠花夕さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にエミリアさんが現れました。
エミリア > ―――――どうしてこんなことになったのか、まるで分からなかった。

修道院長からは、ただ、神餐節に際して莫大な額の寄付を施した貴族の邸宅を訪ね、
良く御礼を申し上げなさい、と命じられてきただけだった。
先輩修道女について屋敷を訪ね、応接間に通されてお茶を振る舞われ、
そのお茶にそっと口をつけた、ところまでは覚えている。

―――――次に目覚めたとき、己の目の前では、
先輩修道女が数人の男たちにもみくちゃにされ、あられもない嬌声を上げていた。

いったい、何が―――――ということよりも、反射的に逃げなければと思ったけれど、
ソファに横臥していた身体は何故か、指一本動かすにも重く、やけに喉が渇いていて。
目の前で繰り広げられている狂宴を制止することはおろか、悲鳴すら上げられずに空咳をひとつ、ふたつ。

「……ど、…どう、いう……こと、ですの、………貴方、がた、」

ようやく絞り出せた声はひどく震えてか細く、誰の耳にも届かないかも知れず。

エミリア > がたん―――――。

必死にもがいているうち、ソファから転がり落ちてしまった。
悲鳴は辛うじて堪えたが、彼方此方がじんじんと痛み始める。
―――痛みを感じる、ということはつまり、少しは感覚が戻ってきたということ。

派手な音を立ててしまったが、もう一人の修道女に夢中の男たちが気づく気配は無い。
本来であれば当然、彼女を助けに入るべき、なのだろうけれど、
今の己にはそんな心の余裕は無かった。
必死に腕を伸ばし、毛足の長い絨毯に爪を立て、床の上を這いずるようにして、
とにかく一刻も早く、ここから逃げ出す為に足掻く。
豪奢な意匠が際立つ扉まで、歩けば十数歩ほどの距離を―――じりじりと、少しずつ。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にディールさんが現れました。
ディール > 貴族の身分は役に立つ。裏の薬物を服用させた貴族からの誘い。
曰く修道女を招き、宴を開く、と。その際に必要な薬物の用立てと、日頃の礼を兼ねて招きたいと言う申し出だった。
薬物の用立てについては快諾して売り渡す。一時意識を奪い、身体の活力を奪う薬。
混ぜる飲み物の種類によって媚薬効果も発揮する様な薬物だった。

そして己はと言えば。
貴族の邸宅内にある手洗いへと用向きに向かい。
戻ってくるのは狂宴の開かれている部屋の扉の前。
丁度。すべての救いを求める様に彼女が扉を開こうとする、まさにそのタイミングで自分が扉の前に立ちはだかる事になるか。

それとも――途中で少女の動きが止まるなら、自分が扉を先に開き。
その室内に足を踏み入れる形になるだろうか。

エミリア > もうほんの少し、あと数センチ―――――手が、届いた。
凝った彫刻の施されたドアノブへ何とかして辿り着こうと、
上体を扉へ添わせる、というより凭れかかりながら、
精一杯腕を伸ばした不安定な姿勢でいたところへ、突然扉が開かれた。

「きゃ、あ………!」

結果として、己の身体は扉ごと廊下へ転がり出て、男の足許へ倒れ伏すことになる。
距離を考えれば、足許に、というより、ほぼ男の足へ縋りつくような体勢にもなるかと。
何れにせよ、そこからぎこちなく振り仰ぐ眼差しにも、ぐったりとした身体にも、
薬物の影響は色濃く残るまま。
それでも幾許かの理性が残っている証左として、男の姿を映した瞬間、
己の顔ははっきりと、恐怖に凍りつく。

ディール > 足に縋りつく相手の重みを受け止めるように足は微動だにしなかった。
恐怖の表情を浮かべる相手とは別に、自分は道化師の仮面――口元だけを露にさせた仮面の奥で表情を緩める。
それは唇の端が笑みの形を作る様に、三日月のように歪められた事で伝わるか。

「意外だな、こうも早く動ける様にまでなったか。どうも調薬が上手くいかなかった様だ。」

それでも活力を奪われた様の相手の体を見れば完全な失敗ではなかった様子。
理性も残されている――中の男達はもう1人の修道女に夢中。つまり今、目の前にいる修道女は完全にフリーだと言う事。
自分が別室へと連れ去っても――然程問題にもなるまい。

「残念だが、神様に見放された様だな?――ここで見つからなければ」

まだ日の当たる世界にも戻れただろうに。
その言葉を呑み込む様にして彼女の体。薬物で抵抗力が奪われる相手を抱き上げ、隣の部屋――自由に使える休憩室へと連れ去ろうとする。
抱き上げる姿勢はお姫様を抱えるような姿勢でこそ有るが。
言葉からは相手をその様に扱うつもりが無い事は伝わるだろう。
相手の抵抗力がその間に戻れば逃げられる可能性はあるが――。

エミリア > 扉は開け放たれたが、今度は男の身体が己の前に立ち塞がってしまった。
背が高く、がっしりした体格で、寄り掛かってもびくともしない。
扉が閉ざされていた時よりも閉塞感が増したようで、呼吸の仕方すら忘れそうになる。
一拍遅れて男の腿へ手をつき、反動を得て身を離そうとしたけれど。

「い、いや、っ…………!」

軽々と抱き上げられて、やっとひと言、拒絶の声を絞り出せた。
けれど、己を抱きかかえる男だけでなく、この場に居る誰にも、
己の意志など汲むつもりが無いのは明白である。
たとえ取り落とされて頭や腰を打つ羽目になっても、と必死に暴れようとするが、
四肢の動きは鈍く、叩きつける拳の力は弱く、ばたつく足は衣の裾を跳ね上げるばかり。
祈りを捧げる余裕など、今の己にはないけれど――――もし、祈ったとしても。
救いの手など差し伸べられないことは、誰の目にも明らかだった。
見習い修道女はなす術もなく、男の腕に抱かれて隣室へ消え―――――。

ディール > 腕を力なく、弱く、鈍いながらも動かせるのは立派な物だ。
自分が戻るのが遅ければ恐らく彼女には逃げられていただろう。
貴族――室内の彼らに恩を売る口実が出来た事は僥倖ともいえる。

やがて隣室に程なく到着すると僅かに扉は開かれ――
そして。日の当たる世界へと続く筈の扉は重く閉ざされていく。
中で何が行なわれるのかは当人達のみが知る話――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からディールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からエミリアさんが去りました。