2018/07/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/酒場」にミゲルさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/酒場」からミゲルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にマニィさんが現れました。
マニィ > 王都の北部、その郊外にかつて隆盛を誇った貴族の屋敷がある。屋敷の主が何故に没落したのかは私の知った事ではないけれど、
浮き沈みの激しいこの国ではさして珍しい事ではないらしい。往々にしてこういった物件は没落させた側の物になる事も珍しくないらしい。
だから「気味が悪いから調査してくれ」なんて、曖昧模糊な依頼は珍しい、らしい。

「……いやー今思えば止めておけば良かったなあ」

偶々訪れた冒険者ギルドに偶々そんな依頼が舞い込んで、偶々人が出払ってて、偶々高額報酬な事もあって引き受けて。
街中であるなら荒事にはなるまい、なんて高を括ったのも今思えば偶々──ではなくて、これは私の油断なんだけれど。
結果、今の私は昼間の広場。恐らく名の有る彫刻家などが拵えただろう噴水の横で水飛沫を眺めて嘆息している。
うら若い、少女の姿形で。

マニィ > 「鏡がずらぁって並んでる時点で嫌な予感がしたんだよぉ。本当だよ?これでも私の勘は鋭いんだから。
ただ仕事だからね?そこはほら、受けた以上は責任が生じようってもので、勤勉な私は一歩踏み出す訳だ!」

身振り手振りで冒険譚(?)を語る私の側には1匹の猫。毛並み麗しく、普段は御主人様の膝上に侍っていそうな長毛種だ。
知己でも無いけど広場で出会うも何かの縁、こうして私の話に付き合って貰っている。

「廊下の中腹まで差し掛かった所で、合わせ鏡の道に異変が起きる! 映るべき私の姿が映らず、
代わりに見目麗しき令嬢の姿。しかして落ち窪んだ眼窩の奥には生者に対する呪詛がありありと見え、
戦く私に鏡の中から手を伸ばし──」

閑話休題《それはさておき》。猫相手に酒場の詩人のように語った末路が今の姿だ。
鏡に引き込まれたかと思ったら、少女の姿になっていた。なんてまるで御伽話のようでしかなく、
それなら物語のように語ってみたら全部物語で済まないかと思ったけれど、生憎と現実は甘く無く猫の返事だけが甘やかである。
何がにゃおんだこの野郎。お腹の一つも撫でさせなさいよと顔から突っ伏し深呼吸。

マニィ > 「……いやーしかし予想外だよね。纏まったお金を手に入れて、そろそろ次の国へと旅立とうかと思った矢先の珍事件。
一応ギルドには報告したけど、調査不十分ってんで報酬なんか出ないしさ?それにただ若返っただけならまだしも、
12、3の頃の私はもっと背が高かったんだぞ。一体どうなっているんだか。」

深呼吸をしてから顔を上げ、噴水の水面に猫の毛塗れの顔を映して眉を顰める。間違いなく自分の顔である。
眼窩は落ち窪んでもいないし、生者に対する呪詛なんて一欠けらもない、何処にでもいる子供の顔だ。

「流石にまた踏み込むだなんてのは御免だしなあ。これで次は赤ん坊にでもされたらどうしようもないし。
なあおい君、君はどう思うよ。暢気に毛繕いなんかしやがってこの野郎。きっと普段からいい物食べてるんだろう!」

子供じゃ受けれる依頼なんてものはタカも知れるし、何より好きな蜂蜜酒だっておおっぴらには飲めない。
だから私は酒場の酔っ払いのように、噴水の縁で毛繕いをする相手にくだを撒く。
視界の隅では、何処ぞの貴婦人が私を見ながら従者に何か囁いているのが見えたけれど、特に気に留める事も無い。

マニィ > 地団太を踏んでいると不意に肩を叩かれ振り向いて、帽子のつばを傾け見上げるとなんということでしょう。そこには視界の隅の従者の姿。
手には貨幣を持っていて、いやに慇懃に語りかけてくるじゃないか。

「……ん?なんだい君。あ、煩かったかな?失礼失礼、ちょっと人生が上手く行かない敗北者の喚きとでも思っておくれよ。
……え?これを私に?奥様から?いや、ちょっと施しをされる謂れは無いんだけど……あのー?」

つまりまあ、気の毒な人扱いされてしまった訳だ。多分にきっと、貴婦人には私の格好が魔法使いと言うよりも、襤褸を纏った浮浪者か何かに映ったんだろう。
そういえばこの帽子とローブも年季が入っているし、何より今の私には寸法が合っちゃいない。成程無理も無いと肩を落とすと、元気出せよとばかりに猫が私の肩を叩く。
何がにゃおんだこの野郎。東国独特の楽器の素材にしてしまうぞと、腹に突っ伏し深呼吸──している場合でもないので、顔を上げて頬を叩いた。

「前途多難だなあ全く!しかしとりあえず着る物くらいは何とかしないといけないな。このままだと憲兵にしょっぴかれ兼ねないし……とりあえず依頼でも探しに行くとしよう。
君もまあ元気でいたまえよ。そんなに人懐っこいと、それこそ食い詰めたゴロツキにでも捕まって喰われてしまうかもしれないんだから。」

それからは猫と分かれて平民地区へと消えていく。魔法がろくすっぽ使えなくなっているのに気付くのは後の話なのでした。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からマニィさんが去りました。