2018/04/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/小さな教会」にフェイレンさんが現れました。
■フェイレン > 壁面のステンドグラスを通り抜けた月明かりが、床に鮮やかな模様を映し出している。
人気のない礼拝堂は澄んだ夜気に満ち、静寂と荘厳の間で息を潜めているようだった。
王城からほど近い路地にあるこの小さな教会は、古さだけが取り柄らしく、
富裕層の暮らす地区にあるというのに煌びやかさも無ければ訪れる人もひどく少ない。
青年のように日陰を生きる者がふらりと立ち寄るにはうってつけの場所だろう。
祈るわけでもなく奥へ進み、天使像の前に置かれた祭壇を軽く撫でると、
細かく施された彫刻の凹凸が指先に伝った。
それなりに手入れは行き届いているのか、埃っぽさは感じない。
■フェイレン > 両親は敬虔な信徒だった。
おぼろげな記憶ではあるが、両親が健在だった頃――自分が殿下と呼ばれていた頃は、
揃って教会へ足を運ぶことも多かったように思う。
とは言え親の真似事をしていただけで、あの頃から自分に信仰心などというものは備わっておらず、
そればかりか家が没落した日を境に、神を敬う気持ちは完全に閉ざされてしまった。
信じる者は救われると言うなら、生かすべき人間は自分ではなかったはずだ。
祭壇の上に供えられた花は枯れ、すっかり変色している。
そのひとひらを手に取り握りつぶすと、指の間から茶色の破片がぱらぱらと抜け落ち、
どこからか入り込む隙間風がそれを攫っていくのを、青年はただ静かに見つめていた。
■フェイレン > そうしてしばらく礼拝堂を独り占めした後、音も立てずにその場を去っていった。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/小さな教会」からフェイレンさんが去りました。