2018/02/14 のログ
シエル > そのまま何事もなく。
時間が来れば夜会を抜けて自宅へと戻っていくだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からシエルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 カフェ」にアンネリーゼさんが現れました。
アンネリーゼ > 冬の夜は、どこかに引きこもるに限る。
外は凍えそうな程に寒いから、暖炉の前は贅沢なことこの上ない。
ぬくぬくと、時折薪の爆ぜる音を聞きながら、ちびちびと飲むのはブランデー。

「ん、ふふ……こうも外が寒いと、最高の居場所よねぇ」

ちびちび、ちびちび。
夜が更ければバーへと変わるカフェの奥で、結局日がな一日、安楽椅子をきぃきぃ濃いで。
時折注文を追加しては、自堕落な時間を楽しんでいた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 カフェ」にリンさんが現れました。
リン > そんな暖炉前の、金髪の少女の近くの席に新たな客が訪れて腰掛ける。
青い提琴のケースを背負った小柄な青髪の少年。
彼女が顔を上げるなら、藍色の瞳と目が合うかもしれない。

「こんばんは。ひとり?」

愛想のいい笑みを浮かべて挨拶し、軽く問いかける。

アンネリーゼ > 舌の上で転がす、強めのアルコールの味わい。
こくりと嚥下すれば、喉を焼く様な刺激が腹の奥へと落ちていく。
ふぅ、と小さく吐息を零した少女は、ふとやってきた何者かの気配に視線を向けて。

「あら、こんばんは。えぇ、連れ添う相手に恵まれなくて」

くすり、と微笑みを返しながら、彼の問いに応えよう。

リン > まばたきを一つ。
見た目の年齢にそぐわない大人びた言葉だが、
決して背伸びしているわけではない、自然なものに少年には感じられた。

「きみみたいな可憐な人が?
 悪い狼にさらわれるまえに、早く見つけたほうがいいんじゃないかな」

軽く揶揄するように言って、自分の注文した温かいお茶を口に含んで人心地つく。
横目で、宝石のように煌めく金の長髪を眺めながら。

アンネリーゼ > 「ふふ、お褒めの言葉、恐悦至極ね。
 ただ、私は浚われる側じゃなくて、浚う側よ?」

彼の言葉に笑みを深めると、興が乗ったと言わんばかりに彼の方に体を向ける。
さらり、と甘い香りのする髪が揺れて、糖蜜の様に揺らめいて。

「悪い狼に襲われているような可愛い子を浚うのが、一番楽で手っ取り早いのだけれども……。
 ちなみにあなたはどちらなのかしら?悪い狼?それとも、か弱い子羊?」

どちらを選ぶのかしら、と言葉遊びを楽しみながら、又一口、グラスの琥珀を嚥下した。

リン > オーデだろうか、不思議な甘い香りが鼻をくすぐる。
幼気に見えて気品漂う所作に視線を奪われてしまう。

「悪い狼、と見栄を張りたいところだが。
 きみの前でそう名乗る自信はないかなぁ。
 羊どころか、掌に乗る鼠か、冬を越せないキリギリスってとこかな」

自嘲するように笑って、自分もカップを傾ける。
向かい合う彼女の瞳から逃れるように、視線を足元に。

アンネリーゼ > 長い時を生きる魔族の少女だが、今ではすっかり毒牙を抜かれて世俗の生活を楽しんでいる風情だ。
無論、日常のスパイスとして悪戯やらなにやらはしでかすが、それも時折、という具合である。
目の前の彼も、以前の自分ならばたっぷりと愛玩していただろうに――などと思いつつ。

「自分を正当に評価できる、というのは素晴らしい事ね。
 ――ただ、少々謙遜が過ぎる様な気もするけれど。
 キリギリス、という事は楽師様か何かなのかしら?」

自重する彼の様子を眺めながら、逃れた視線の先を追う。
どうやら足元を見ている様子。それでは何となく面白くない。
だから、少女は悪戯っぽく笑うと。

「ほら、視線を上げてごらんなさいな♪」

彼が言葉通りに顔を上げてくれるなら、視線が合った刹那に魔眼を放つ。
それは、ほんのわずかな魅了の魔力。彼の心を僅かにときめかせる様な、その程度の術式。
自然と少女の事を目で追う様な、そんな淡い甘さを送らんとする。

リン > 少女の問いに、座った椅子の傍に立てかけた提琴のケースを手で示す。

「恐れ入るよ。
 ああ、一応これを。と言っても最近は、これをなかなか
 人前で弾けてはいないのだけど……」

言われるがまま、顔を上げると……
視線が合って心臓が一度強く脈を打った。

「……あれ?」

ぼうっと彼女を見つめてしまい、視線を外すことが出来ない。
なんとなく違和感を覚えるが、それだけだ。
もとから少女は、彼にとって目を離し難い存在感のある存在だったからだ。

アンネリーゼ > 彼が示す先、恐らくは弦楽器の入っているだろうケースを見る。
何となく、あの中身は面白そうなものだという直感があった。

「あら、そうなの?人前で弾けない、というのはどういう意味かしら?
 腕前、と言う訳ではなさそうだし、曰く付きの楽器だったり、とか?」

自身の直感に従ってのカマかけだが、彼はどうこたえるだろうか。
ともあれ交わった視線を頼りに、彼にかける魅了の魔術。
微弱なそれは、彼の心を優しく撫でる程度の物で。

「……あら、どうかした?もしかして、私に見惚れてた?」

どこか冗談っぽく告げながら、グラスの中身を空にする。
かろん、と遺された球体の氷が透き通った音を立てた。
少女はのんびりと、何をするでもなく彼を見つめて、楽しんでいる。
或いは彼が何かを望むなら、少女は気まぐれな猫の様に言葉を返すことになる。

リン > 「……うん。そう。
 ちょっとした呪いの楽器でね。僕はこいつに魅入られているのさ。
 ……詳しく知りたい?」

心を見透かされたような錯覚を覚えて、隠すことなく答える。
……彼女に興味を持ってもらえることが、妙に心地のいいものに感じた。

「……。君を見ていると、なんだか気持ちが浮つくんだ。
 さらわれてしまってもいいかも、ぐらいには、思ってる。……」

何を言っているんだ、と我に返って、白い顔に朱を混じらせる。
魅了の術の影響で口にしたものではあっても、
それはほんの少し素直になっただけゆえのものだった。
すっかり忘れられたテーブルの上の茶は、徐々にぬるくなっていく……