2017/11/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にガイさんが現れました。
■ガイ > さる資産家の持ち家。その2階の窓から飛び出したのは、衣服の乱れた大男。
更に、大男を追う様に響くのは別の男の怒声である。
この家に住まう女友達と寝室にて仲良くしていたところ、タイミング悪く女の亭主が帰ってきた。
そんなところである。
不義理を働いた妻と、その原因たる間男。亭主が怒り心頭なのも無理はない。
見事着地を決めた大男としては、衛兵を呼ばれる前に逃げるに限る。
邸宅の敷地を、乱れたままの衣服で脱し、通りに出るのだ。
時折擦れ違う人々にぶつかれば、男には軽く謝り、相手が女であれば今夜の予定を取り付けようとする。
そんな性質の悪さも出しながら、凡そ追手が来ないであろう辺りまで一気に駆け抜けるのだ。
幾つか角を曲がってやれば直ぐに撒く事が出来るだろう。
衛兵も、間男一人にいつまでも時間を割くわけにはいくまい。
■ガイ > ある程度の所まで走れば、追手がいないか一応の確認は行った。
当然、いるわけもない。
軽く上がった息を整えながら、衣服を整えるついでに髪も結い直した。
ボサボサの頭に慣れているとはいえ、いつまでも暴れさせているのは邪魔で仕方がない。
走っている間に重量を感じていた太刀や脇差も携え直し、よし、と一息ついた。
「やれやれ、仕事で帰って来ない筈だったんだが。」
そう聞いていたのに、だ。金持ちの生活リズムは良く分からない。
とりあえずは人通りの邪魔にならぬよう、端の方に寄っておく。
とはいえ、通りを行くのは皆、貴族や商人の方々だ。
もしくは騎士連中か。
要するに、男の風貌はこの場所には明らかに異質だった。
とてもではないが商人には見えず、勿論、貴族なわけもなく。
破落戸風情が何故にこの様な場所に、と問うような視線すら感じる。
尤も、馴染みの顔もあり、そういった相手には此方も軽く手を振ってみせるのだが。
■ガイ > まずはこれからどうするかを考えねばなるまい。
今日は夜まで先程の女と過ごすつもりだったのだ。その後はまた別の家で一晩過ごす。
此方は同性の冒険者であるが、この時間はまだ仕事の最中だろう。
それまでの時間潰しが必要だ。
通り沿いの建物の壁に寄りかかり、懐から棒状の物を取り出した。
この国の文化には存在しない、東方の島国で扱われている喫煙具である。
煙管。その火皿に葉を詰め、さて火を、と思ったところで手を止めた。
「嗚呼、しまった。火種を置いてきちまったか。」
普段であれば小さな火を生み出す魔具を携帯しているのだが、どうやら先程の家に忘れて来たらしい。
あれが無ければ火も点けられぬ。
結局、煙も出ていない煙管を咥えただけの大男が出来上がりである。
■ガイ > チィ、と舌打ち一つ。
このままでは格好も付かぬ。
かと言って先程の家に戻るのは阿呆のする事だ。
追っては来ないと言えども、暫くは衛兵が待機している事だろう。
そんな所にわざわざ戻るなど自殺行為である。
または、頭の悪い自首行為か。
何だって良いが、今一度火種の用意をせねばならんのだ。
とは言え、魔具などという代物はそうそう安い物ではない。
ほんの小さな火を生み出すだけの代物であっても、それなりの値段はする。
気軽に使い捨て出来る程に懐事情が温かいわけもなく。
流石に、泊めてくれる友人はいても金銭の援助は無い。
「カァーッ、また一仕事しなきゃなんねえか。」
面倒だが、それ以外に方法は無いのだろう。
なに、山賊や魔物の討伐依頼を何度かこなせば釣りが来るぐらいの稼ぎにはなるだろう。
仕方ない、と頭を掻き、ギルドに向かうべく歩き始めるのだった。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からガイさんが去りました。