2017/08/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 路地裏」にリーノさんが現れました。
■リーノ > うっかりしていた、と一言で表現すればそうなる。
まだ陽も高い午後、富裕地区の大通りにある店から、屋敷まで、いつもなら馬車を使うところだったが、
今日はたまたま徒歩で帰ることにしたのは、ほんの気まぐれからだった。
―――が、見事にスラれた。
大通りから屋敷までの整備された美しい街並みを、ぼんやりと歩いていたから、カモだと思われても仕方がない。
しかも、護衛もつけずに、なのだから、見事に財布を抜き取られた。
さほど大金は入っていなかったし、寄付だと思って割り切ってもよかったが、
スリを働いたのは、まだ幼い子供であった。
性別までは判断できなかったが、すばしっこく、そのままこの路地裏へと駆けこんできたから、
不用心ながらも、それを追ってきたのだった。
「………こういうところでもスリはいるのね。貧民地区ばかりだと思っていたけれど」
やや世間知らずと言われればそうだが、国の腐敗たるやこの辺りまで、と暗澹たる気持ちになって表情を曇らせる。
貧民地区も富裕地区も、路地裏となれば大差なく、薄汚れた猫が、こちらを見て、フー…と警戒するように唸ったかと思えば、
カツリ、とピンヒールが石畳を叩くと、その音に身を翻して姿を消して。
■リーノ > ヒールが路地裏の石畳にゆっくりとだが規則正しい音を刻んで、通りから奥へと進んでいく。
時折、左右を確認してスリの子どもの姿を探すが、のこのこ出てくるはずもない。
まだ陽は高いから、このあたりを根城にする宿を持たぬ人の姿もなく、出てくるのは幸いにして猫やら犬だけである。
小さくため息をつくと足を止めた。
これ以上進んだところで財布を見つけることは困難だと推測されたし、
そこまで愛着のある財布でもなければ、なければ困るという金額が入っていたわけでもない。
それなら、スリの子の腹を満たすために使われる方が金も喜ぶだろう。
善悪の判断だとか倫理規範だとか、そういうものが少しばかり独特なのか、そんなことを考えてながら踵を返す。
ゆっくりと歩みを進めて通りへと出れば、そのまま遠くない我が屋敷へと歩んでいく…―――。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 路地裏」からリーノさんが去りました。