2017/08/18 のログ
ご案内:「王都富裕地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 「うむ、仔細はまた後ほど。
 家人もご当主の気まぐれぶりには手を焼いておるようじゃのぅ。」

富裕地区の中でも、特に大きな邸宅が並び立つ区画。
厳密に言うのなら、並んではいない。
何しろ敷地そのものが阿呆な位に広いので、庭というのもおこがましいような空間が、隣家とのクッションスペースになっているのだから。
その内の一軒の門扉のところで、商談相手を見送りに来た執事と思しき初老の相手に、歯に衣着せぬ物言い。
何とも回答し難い戯言を温厚な笑顔でかわされる一幕があり、程無くして鉄門の傍らから離れる。
商業施設のあるエリアからは程遠く、閑静という表現がしっくり来る。
綺麗に均され、石畳等で装飾されている通りは広く、大型の馬車が行き交っても支障はなさそうな整備具合であるという一点からでさえ、この辺に居を構える輩の懐事情やら権勢やらが窺い知れる所だ。

「はてさて、今宵の用件はこれで終い故…
 何ぞ、遊んで帰るかのぅ。」

ノープランであることこの上なく、目的地を持たぬゆったりとした足取り。

ホウセン > 夜の道は、驚くほど人気がない。
それは夜を徹して訪問者を迎えるような施設がある訳ではなく、寧ろ安眠と休息の為に立ち返る場所であるからだ。
稀に、二人一組の兵士だか用心棒だか分からぬ輩が見回りしている所に出くわさぬ訳ではないが、彼らとて不必要に騒ぐ訳でもなし。
シンとした街並みに、生温い夜風が吹く。
木々が葉を揺らしてざわめき、それらの音の下から聴覚に滑り込むのは虫の声。
日中の蝉時雨ではなく、秋の夜長に耳にするような代物。

「嗚呼、そろそろ斯様な時期か。
 移り変わりがめまぐるしいのは飽きぬという一点では重畳じゃが、落ち着きがないのが珠に瑕じゃな。」

取り立てて目新しさの感じられぬ独り言を漏らすも、聞く他人がいる筈もない。
目線を通りの先に向けるけれど、人影は、取り分け徒歩の者は見当たらぬ。
この辺りの住民が深夜に出歩くとすれば、馬車で移動するのが当たり前なのだから。
歩幅が短いこともあり、移動速度は推して知るべし。
望む歓楽エリアまでは、まだ幾許か時間が要るだろう。
物珍しい異邦者に目を留める物好きか、人目がないのをこれ幸いと接触してくる人外か。
そういった手合いが存在したなら、声の一つでもかけられただろうか。

ご案内:「王都富裕地区」にリーノさんが現れました。
リーノ > カツ、カツ、カツ…と規則正しい蹄の音が静寂の包む夜の道に響く。
2頭立ての豪奢な馬車は、石畳の道を進んでいく。

馬車の小窓から物憂げに外を見ていれば、間もなく屋敷である。

「あら…。ねえ、止めてちょうだい」

屋敷が近くなって速度を落としたことで、窓の外に見えたのは、夜道を歩く少年であった。
それを認めてキャビンから御者に声をかけると、歩む少年を少しばかり通り過ぎてから馬は歩みを止めた。
御者は何事かとキャビンの方を振り返ったから、

「屋敷は近いから、歩いて帰ります。先に戻って構いませんから」

御者の男に声をかけると、キャビンの扉を開けて、足元に気を配りながら夜道に出れば、
御者が声をかけて、そのまま馬車を走らせる。
と言っても、屋敷は目の前、そのまま鉄門をくぐっていくのを見送ったのち、
夜道を歩んでいる少年へと声をかける。

「ボク、一人で帰るの?…この辺りはさほど危ないこともないけれど…大丈夫?」

穏やかな声をかけてから、辺りを一度見渡すように視線を配り。
ときおり衛兵らしき姿も見えるのは、王城が近いからでもある。

ホウセン > 気侭な足取りで夜の街を歩く妖仙。
そのはしっこい耳をもってすれば、未だ視界に入らぬ内であっても、何かが接近してくる事は看取できる。
大型の馬車であることは想像を裏切らなかったし、馬が二頭立てであることも的中していた。
唯一の予想外があるとすれば、馬車に乗っている人物が姿を現したという点。
小さなシルエットを追い越して暫し、停止する様を怪訝そうに眺めながら、己に影響する何事かが起きるでも無しと高をくくっていたのだけれど。

「うむ、左様。
 此処より、少しばかり賑わいのある辺りに宿を取っておってのぅ。
 生憎と馬車なんぞ手配しておらぬ故、徒歩にて夜の散策としゃれ込んでおったところじゃ。」

下り立った女は、一目で貴人と分かる出で立ちであったけれど、物怖じせずにあっけらかんと。
少しばかり時代がかった物言いは、変声期前の高さを宿した侭で、少なくとも外見上の年齢とは背反していまい。
危機感の”き”の字の存在も危うい能天気さ。

「嗚呼、すると親切なご婦人よ。
 儂の一人歩きを案じて、態々下り立ってくれおったのか?
 だとすれば、悪い事をしてしまったかのぅ。」

細い腕を組んで思案顔。
袖を通した衣服は、異国仕立てのものではあるけれども生地が上等な物を使っている事は明らかで、羽振りが良い事が伺えよう。
何よりも非力な年頃。
営利目的の誘拐犯が狙うとすれば、このような輩であろうという総天然色見本。
当人が大丈夫だと囀っても、納得できるかは怪しい所かもしれない。