2017/08/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にサヨ・カシマさんが現れました。
サヨ・カシマ > 酒場で偶然出会った恋人とキメラ退治を無事終えた帰り道。

「……。」

ぽーっとしたまま歩く黒髪の娘は、足取りは危ういものの迷う様子もなくゆっくりと目的地へと向かって歩いているように見える。

「………。」

戻ろうとしている場所はとある邸宅の中の貸し与えられている別宅。

「…………。」

特に焦った様子もなく、ただ、ぽーっと脇芽も振らず歩く娘。
――迷っていないはずがなかった。
すでに自分のいる場所すらよくわからず、とりあえず適当に進んでいるだけ。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > その小さなシルエットが、富裕地区の細道を歩いていたのは偶然の産物。
何処ぞの貴族との商談を終え、手早く平民地区にある自らの店に赴く為、大通りではなくショートカットを歩み進んでいただけのこと。
平素は、殆どすれ違う人もいないこの通りに、聊か以上の違和感を撒き散らす存在を見つけては、かくっと首を傾げた。

「これ、其処な娘。
 何ぞ彷徨うておるように見えるのじゃが、儂の勘違いかのぅ?」

それでも声をかけるという、一歩踏み込んだ行動に及ぶのは、娘が身に着けた装束のせい。
己の出身地にも近しい地域での民族衣装は、この国では物珍しいの範疇に入るのだ。
親切心一割、好奇心九割の心地で、スルリとぽやぽやとした不確かな足取りの前に滑り込む。
お子様サイズに、お大尽真っ青な尊大な態度。
左手を腰にあて、ピンと伸ばした右手の人差し指を、行儀が悪いにも程があるが、ズビシっと鼻っ面に突きつけようとする。

サヨ・カシマ > 「……。」

長い睫毛の下、ぽーっとした瞳を前に向けたまま歩く。
声を掛けられていることに気づいているのかいないのか、ぽーっとしたまま突きつけられた指をまるですり抜けたかのように通り過ぎ、そのまま何事もなかったかのように通り過ぎていく。

「………?」

あれ?さっき誰かとすれ違った……?
娘が誰かに会ったかもと気付いたのは見覚えのある大通りに辿り着いた時だった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からサヨ・カシマさんが去りました。
ホウセン > かのぅ、かのぅ、かのぅ。
通りに空しい木霊。
流石に反応が無いというのは、この存在を以ってしても出鼻を挫かれる格好となった。
暫しの間、指を差した格好のまま、彫像めいた様態となっていたのだが――暫しの後に、気を取り直して夜の街に消えるのだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からホウセンさんが去りました。