2017/06/13 のログ
ご案内:「王都富裕地区 旅亭通り」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 平素、体の軽さに比例するように、軽快さを売りにしている妖仙の歩みだが、今日に限ってはそこはかとなく重ったるい。
週末の王都滞在を切り上げ、ハテグの主戦場近隣の王国陣地に戻ったのも束の間、何処ぞのお得意様からの呼び出しがかかったのだ。
ただの商談なら、王都本店に残している奉公人達に任せても大過ないのだろうけれども、生憎と妖仙を指名してのオーダー。
文字通りのとんぼ返りで王都に立ち戻り、漸く”商談”とやらを纏め終わった所だ。

「……だから儂は、愛玩人形ではないと言うておるのに。」

広大な敷地を有しているらしい邸宅を辞すると、そんなボヤキが漏れた。
何ということはない。
その上得意様が、単に妖仙の顔を見て、ハグして、頬ずりして、いーこいーこして、膝の上に抱きかかえながら頬を突き回したがっていただけの話。
それでも、儲け話となれば顔を出さずにはいられず、こうして苦行に耐える修行僧のような心持で艱難辛苦を乗り越えたのだ。
肉体的なダメージは皆無に近しいが、精神的な失調を癒すには布団を被って丸まるというのも芸がなく、盛り場の方へと足を向ける。

ホウセン > 王都の構造は階層的であり、王城に近いエリアになる程、閉鎖的になる傾向が強い。
その論で言うのなら、富裕地区は素性の分からぬ者達の出入りを商機と考えずとも良い住民が多く、寧ろ部外者の闖入は自身の安定を揺るがしかねない不確定因子と目される。
尤も、外部と全く接触しないで済むという道理はなく、消去法的に元来の住人以外が訪れるような施設は、地区内の平民地区寄りの区画に集められる。
明文化されているものではないが、この地区ではそうしなければならないという不文律の圧力が、歴然として存在しているのだ。

「して、今宵は如何したものかのぅ。」

小さなシルエットが辿り着いたのは、旅亭が建ち並ぶ区画だ。
主に、王都以外からの羽振りの良い客人を迎え入れるエリアは、宿泊施設と対になっている酒場やら食堂やらも決して少なくない。
目当てはその辺り。
夜だというのに賑わう往来で、どこからか漂ってくる肉の焼ける匂いに誘われて、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ。
如何する、等と嘯いてはいるが、この妖仙の行動規範はシンプルだ。
喰うか、呑むか、犯すか。
精々がその程度。

ホウセン > 欲に塗れた迷走の果て、まずは腹を満たすこととしたようで、殊更良い匂いを垂れ流している一軒の店に足を踏み入れ――
ご案内:「王都富裕地区 旅亭通り」からホウセンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にシェイアさんが現れました。
シェイア > 取り入った先の貴族に誘われ、やってきたクラブ。
中は人のざわつきと、瀟洒な音楽。香る料理と酒の匂い。
そんな中、魔女は壁の花と化して、一杯のワイングラスを傾けていた。

「…退屈ね。」

ぽつり、と漏らす呟き。
先ほどから何人もの独身貴族から声はかけられている。
が、正直な話食指が動かず、すげなく断り続けているのが現状である。
ドレスなどではない変わった装いと、理知的な雰囲気は着飾った貴族の女性とはまた違う印象を与えるのだろう。

しかし、退屈は退屈なのだ。
遊び相手でも探そうかしら?と考える事少し。
この場合、一緒に酒なり火遊びなりと楽しむ相手、ではなく弄ぶ玩具を探す、というほどの意味合いである。