2017/05/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にティエンファさんが現れました。
ティエンファ > 紫煙漂うほの暗い室内、抑えた男女の話声。 密やかな秘め事のバー。
上質な服装だが華美ではない装飾、喧噪は無く、しっとりとした雰囲気。
…そんな中、異国風情の少年が一人、カウンターでグラスを傾けていた。

艶やかな黒い髪は軽く結い上げ、余った毛先は肩に流している。
うっすらと化粧を淹れた肌は滑らかで、薄い唇には浅く朱が引かれていた。
顔だけを見れば凛とした女ともとれる趣だが、しかし、その身体は上等な帝国服を着てても分かる鍛えられた物。
露な肩口、左肩から腕までを彩る刺青は、この辺りでは見ない装飾であった。

もう一口酒を飲む。 グラスの縁に移った紅を、きゅ、と指で拭った。

ティエンファ > … … …ぶっちゃけ、勘弁してほしかった。

よく用心棒を受ける酒場のマスターが知り合いの店を紹介してくれて、実入りも良いので二つ返事で受けた依頼。
いつものように、愛用の棍を片手に壁際で睨みを利かせてれば良いものだと思っていたのだが、
実際にバーについてみれば、そんな雰囲気ではなく、実際、そんな事を言ったらマスターに呆れられてしまったのだ。

話を聞けば、ここは相応に品の良い客層らしく、普段は用心棒も要らない程に、客もわきまえているのだとか。
そんな中、急に用心棒が武器を握って突っ立っていたら、お客さんが旨い酒と良い時間を過ごせない。
そんなごもっともなお説教を受けた後、武器は取り上げられ、今この場所、
カウンターの隅の目立たない場所に座らされたのだ。

酒は少しなら飲んでも良いから、客の一人として気配を消して用心棒をやれと言う。

「…調子狂うぜ…」

苦く呟く少年は、甘いが口の中に残らない上質な味のカクテルを傾ける。
木のジョッキでグイッと煽る、なんてできないので、微妙に不満だけど…まあこれはこれで美味いので…。
…うーん、でもやっぱりちょっと不満と言った表情は、しかし、バーの雰囲気と淡い照明で、
物憂げな表情にも見せてしまっていた。

ティエンファ > 鳥みたいに脚の長いカクテルグラスを指でなぞり、何度目かの溜息を吐く。
最近、この店にガラの悪い商人が来店してきて、場を荒らすのだとか言っていたけど、
今日はどこまでも穏やかで、大人で、落ち着いた雰囲気のバーなのだ。
酒は強いがまだ大人にはほど遠い少年としては、一人の時間、ゆっくり酒と語らって…なんて、遥か遠き理想郷。

「…マスター、なにか… … … …えっと… … …オススメを」

格好良い感じに注文しようとしたけど、それすら思いつかないで、
ちょっと恥ずかしそうに適当な注文をしてしまう始末なのだ。

「だって、普段カクテルなんてお上品なもの呑まないし…っ」

誰にでもない言い訳を口にして、ちょっと残った酒に口を付けた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にチェシャ=ベルベットさんが現れました。
チェシャ=ベルベット > 「ジントニック、同じものをそこの坊やに」

そう言ってマスターに注文するのは黒髪の少年チェシャ。
いつものお仕着せの従者服で平然とした態度。
カウンターの隅に座るティエンファの横に当然のような顔をして座っている。

「やぁ、とってもおしゃれな格好だけど
 誰かとデートの約束でも?」

そんなことは無いだろうと分かりきっているはずなのに
わざと質問してみる。

ティエンファ > 「うん? 坊や…坊や? え、俺?」

声にぼんやり辺りを見回して、そして、チェシャを見れば目を丸くする。
それから、自分と違って随分このバーにしっくりきてるチェシャを眺めれば、
判りやすい位安心しきったような表情を浮かべた少年だ。

「いーや、全然 デートだったらもっと目を輝かせてるよ
 …用心棒さ、割は良いけど心が死にそう」

溜息交じりの囁き、目の前で注がれるシンプルなカクテル。
コリンズグラスに炭酸が注がれるのを眺めながら、隣に座ったチェシャに、どこか甘えるように肩を寄せた。

「お上品に静かに、って言うのは、やっぱり俺には似合わないんだろうなと思うよ
 …チェシャはなんでここに?」

自分より細い肩だけど、軽く額を預けるようにして少し間を置いてから、ちら、と見上げる。
アイラインを引いた眼、問いかける唇の赤、普段と違う表情に見える。

チェシャ=ベルベット > 安堵した表情を浮かべるティエンファに
こちらも嬉しそうな笑みを返す。
出来上がったカクテルがテーブルの上を滑り、二人の前に出されると
持ったグラスを軽く打ち付けて乾杯、と言った。

「だろうね、もっと景気の良さそうな顔をしなよ。
 じゃないと浮いた存在になって逆に目立つ」

ちびりとグラスを煽り、ジントニックを飲む。
炭酸の味が喉に来て、少しだけむせた。
たまに飲むならいいが、いつもこればっかりだと飽きるな、と呟いた。

「いや、お上品な異国の男娼がいるって聞いたからからかいに来ただけ」

男娼たちが噂しているのを耳ざとく聞きつけて
どうやらそれがティエンファらしいと気づいてやってきたらしい。
艶めいた視線に、そっと額に唇をよせて口付けてやる。

ティエンファ > ふへへ、といささか情けない笑顔を返す。 さっきまでの物憂げな表情よりも、いつもの少年らしい顔で。
乾杯の声に声を返し、一口、二口。 ああ、と息を吐く声は、打って変わって旨そうに。

「だって、アウェー過ぎる酒場で一人だぜ? 景気良くって言っても騒ぐわけにもいかないし
 …やっぱこうやって、誰かと飲んでる方が俺は良いわ…はあ、やっと味が分かった気がする」

むせる様子に目を瞬かせ、それからちょっと笑った。
それから、男娼と聞けばまた、俺?と自分を指さして。
肩を竦めて笑い、額へのキスに目を細め、頬に口付けを返す。

「よくそれだけで俺だって分かったな 自分で言うのもなんだけど、普段と違うだろ、全然」

きゅ、と親指でグラスについた紅を誤魔化すのは、恥ずかしいからか。
普段の少年よりもどこか遠慮がちな仕草をして、
そして、思いついたようにちょっと意地悪な顔で笑った。

「チェシャはこうやって男を買う事もあるのか? わざわざご足労頂きまして」

チェシャ=ベルベット > 「ティエって本当は甘えん坊だよね。
 一人でもやっていけそうなのに人懐っこいっていうか。
 犬みたい……犬だと僕とは相性悪そうなのに」

それがどうしたことか今は互いに心を許す存在になっている。
笑うティエンファに、ちょっとむくれていつもはこんなもんじゃない、と拗ねてみせる。
頬に口づけを受ければ機嫌もすぐ直るのだが。

「別にティエじゃなくたってどんなやつか顔見てやろうって思っただけ。
 商売敵のことはいろいろ知っとかないとね」

化粧をしているせいか、はたまた上等な着物をきているせいか
ティエンファの仕草も遠慮がちで色っぽく見える。
そっと背にかかる黒髪の一筋を撫でて口づけし、相手の頬に指を滑らす。

「まーね。もっぱら買われる側だけど、たまにのっぴきならない事情ができると買うよ。
 ティエンファは?冒険者の他に売りもしているの?」

ティエンファ > 「甘えられる相手にはな …でも、愛想良くするけど、甘える事はあんまないんだぜ?
 …チェシャは猫だけど、ケモノじゃないからな 優しいからな」

自分が特別なんじゃなくて、チェシャが俺に特別なんだよ、なんて事を臆面もなく口にして。
でも、拗ねて見せるチェシャに微笑み、優しく撫でる手は、自分にとってチェシャが特別なのだと言うようで。

「ふぅん、俺じゃなくても顔を見てやろう、ねえ…ふぅん?」

そう言って、ちょっと尖らせた唇は、沫暗い照明でもチェシャの視界に尚赤く。
撫でる髪は艶やかで強く、頬を撫でる指にくすぐったそうに目を細める表情は
普段の剛毅さよりも、年相応の柔らかさを見せる。

「なんか意外だな、チェシャだったら買う事も無く選び放題だろうにさ
 …俺はこないだも言ったろ? 未開封だってば!
 それに、チェシャみたいな細くて可愛いのだったらまだしも、
 俺みたいな筋肉もりもりなのは需要も無いだろ 売る気もないけどさ」

チェシャ=ベルベット > 「へぇ、本当?それじゃあティエの甘えてる姿って珍しいんだ。
 もう、優しいって言うなよバカ」

これまた素直に恥ずかしいことをのたまうティエンファに
頬を染めて恥らうが、特別と言われて悪い気はしない。
独占欲みたいなものがあるとすれば、それがするすると満たされていく。

「あれ、妬いた?顔だけ見たってすぐ手を出すわけじゃないよ。
 安心してよ、今はティエがいるから別に帝国人なんて珍しくもない」

そう言って相手の顎の下に指をかけクイッと持ち上げればその唇に
上から覆いかぶさるような熱いキスをする。
舌はまだ入れない。こんなところで見せるのはもったいないし、見世物ではない。
相手の朱塗りの唇から紅がチェシャの口元に移り、その口の端がくすりと持ち上がる。

「別に買うのが男相手ばかりってわけでもないだろ?
 一夜を共にして欲しい女性なんかにもティエは需要ありそうだし
 案外僕みたいなもやしより筋肉ついている方が好みって男もいるからなぁ。
 
 知らないなら、また教えてあげるよ。
 なんだって君には仕込みたくなる。
 女性の扱いから男性をその気にさせる方法までね」

本当か嘘かわからないようなことを言ってまたくすくすといたずらげに笑う。
そっとカウンターに置かれた相手の手の甲を指でなぞると耳元で囁くように呟いた。

「ティエは僕には売ってくれないの?だめ?」