2017/03/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にシキミさんが現れました。
シキミ > 富裕地区にある一軒の酒場。
小ぢんまりとしていながらもシックな装いにそれなりに人気はある様子。
その片隅、二人掛けのテーブル席に女は座っていた。
琥珀色の液体を時折傾ける様子はどこかしっとりとした印象を与えるかもしれない。

男心をくすぐるのか、時折貴族のような出で立ちの男が話しかけている。
しかしそれも二言、三言。すぐに貴族は黙り……そして数分。
回れ右して自分の席へと戻っていく。そんな光景が数回続いている。
席へと戻った男はどこかうっとりとした視線を彷徨わせている。
どこか不思議なやりとりが繰り返されていた。

手持ち無沙汰になれば、傍らのグラスをまた一口。
ほう、と緩やかな吐息を零した。次に声をかける者はいるだろうか?

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……うむむ?」

王都を離れ、雲隠れ隠遁の生活を終え、都に戻れば男は唸る。
というのも、自分はどうやらお尋ね者としてあまり指名手配のようなことはされていないらしく。そこが逆に不安であったからだ。

「こういう時は情報収集よな」

そう言い、男はたまたま通りがかった、普段はあまり入らない富裕地区の酒場へと入った。
そうして、情報を仕入れようと、カウンターのマスターの元へ向かう途中。
くるり、と方向転換。テーブル席へと向かっていく。

「やぁ、そこな美人さん、一人? もしよければ相席いいかな?
 無論ここの食事代はオレのおごりにしていいからさ」

にへらっ、とだらしのない笑顔でテーブル席の女性に声を掛ける男。
その目が、数瞬鋭くなる。が、次の瞬間には元通りの女好きそうなだらしない表情だ。

シキミ > 次に来たのは実に軽薄そうな男性であった。
その容姿、服装…冒険者だろうか?と内心で思う。
かけられる言葉、そしてだらしのない笑み。
女好きの形式通りという印象ではあるが…先ほど一瞬見せた鋭い視線は何だろうか?
とそこまで考えた。

考えつつも、うっすらとした微笑を浮かべ、どうぞ、と手で対面の席を示す。
先ほどの貴族達は皆「自分の席へ・家へ・宿へ」という言葉であった。
その為、多少は新鮮味があったとも言える。

「…別に奢られる謂れはないわ。奢って私をどうしようというのかしら?」

くす、と微笑みながら放った声はどこか甘く、低めの男好きのする声だった。
グラスを手繰りよせ、その中身をまた一口。
ペースは速くない。酔ったようにも見えないだろう。
見えるのは服の合間から覗く深い谷間と、そこに刻まれた瑠璃色の蝶くらいのものだ。

セイン=ディバン > 声をかけ、断られればまぁそれはそれとして情報収集をすればいい。
男はそう考えていたが……目の前の女性は微笑を浮かべ、相席を許してくれた。
その仕草を見て、男は満面の笑顔になり、嬉々として席へと座る。

「いやぁありがとう。断られてたら泣いてたところだよ。
 ん、キミが奢られる謂れはなくても、美人と席を共にするんだ。
 オレには奢る義務があるのさ」

そう笑って言いながら、男は注文をウェイトレスに告げる。
強い酒。上手い肉。そんなざっくりとした注文だ。

「ふむ……随分とセクシーな服と、色っぽいタトゥーだね。
 ……で、さ。キミ何者? 一般人じゃないっしょ」

相手の胸元を見ながら、スケベそうな声を出したのもつかの間のこと。
次の瞬間、男は声を殺し、相手にそう尋ねた。表情は一変し、仕事中……いや、男が所属している、魔王軍の一員モードのような鋭いものになっている。

シキミ > 「ふぅん、義務、ね。」

まぁ、それなら好きにさせておけばいい。
別段困る事でもなし。
嬉々として席へ着き、注文を始める男を薄紅の視線が見つめる。

が、次の言葉は聞き捨てならなかった。
視線が胸元に集るのはいつもの事だし、故意にしている部分もあるのでどうでもいいのだが…。
浮かべた表情を見つつ、眉をひそめた。
明らかに困惑した表情を浮かべている。

「褒めていただくのは結構…。でも、何者、とは?
王都の人間ではない、といえばそうだけど…。」

やけに鋭くなった青年の表情を見つめ、困ったように視線をグラスに落す。
ほう、と漏らすため息と共に胸元の蝶がちらりと揺れた。

セイン=ディバン > 「そそそ、義務義務。男の義務、さね」

聞き流すように呟いた相手に、念を押すかのように繰り返す男。
届いた酒をグラスに注ぎ、ぐいっ。肉を荒々しく斬り、がぶっ。
おおよそ富裕地区の酒場でのマナーとは程遠い食い方である。

「……ん~。そうくるか。まぁ、じゃあ。
 これはオレの独り言だから、気にしないでもいいけどね。
 キミのその振る舞いとかは、完璧に過ぎる。その上、違和感が強い」

女性が男の揺さぶりに動じず。困ったような表情を浮かべていたため、男は小声のまま自身の意見だけを口にする。
視線は、しっかりと揺れた胸元の蝶に向けられていたが。

「装いこそ違和感のない富裕地区の女性、あるいは中の上流の娘さんといったところ。
 だが、一人で食事をしている。しかも、金持ちの男や、エロ目的の男を誘うような無防備さがない。
 酔いつぶれに来たわけでもなさそうだし、待ち合わせなら俺の相席を拒むだろう。
 ……以上の点が、オレがキミが一般人ではなく、何らかの秘密を隠しているんではないかと推測した部分なんだが……」

どうかな? オレの推理は、と口元だけで笑いながら、ウェイトレスにおかわりを頼む。届いた酒と肉は既になくなっていた。

シキミ > 粗野な食事を始めた男性を見つつ、義務、という言葉に一つ息を吐く。
多分これ以上押しても奢るつもりなのだろう。
くい、とまた一つグラスを傾けた。中身はもうそれほど残ってはいない。

そして困惑した表情のまま、男の独り言を聞いている。
さして間を置かず、少しジト目というか呆れたような視線を送り始めた。
急に言い出した飛躍に、えぇ?という風な雰囲気。
的は射ているが……しかし、この女はおくびにも出さなかった。

「……はぁ、何を言い出すかと思えば。面白い推理ね。
女もたまには一人で飲みたい時があると思わないかしら。」

ねぇ、名探偵さん?という風な口ぶり。
またちらり、と揺れた蝶の刺青はしっかりと男性の視線を捉えていた様子。

「……それで? 私の秘密を知った名探偵さんはどうしたいのかしら?」

まだ胸の谷間を覗いているなら…ふわりとした感覚を感じるかもしれない。
さして気にならない程度の、しかしどこかぼんやりする感覚。

セイン=ディバン > 一応、男もテーブルマナーは心得てはいる。
だが酒場で一々そんな事を気にする性質でもない。
目の前の女性がグラスをほぼ空にしたのを見て、お代わりはいるかい? と尋ねつつ。
自分の頼んだ注文が再度くれば、今度はゆったりと食事を進める。

「……カハハハハ。まぁ、所詮推理は推理。確証はない、当てずっぽうだもんねぇ。
 とはいえ、一人で飲みたいならなおさら俺の相席は拒むと思うがね……」

穴の多い推理とはいえ、下手な人間なら簡単に丸め込める程度の理屈を並べた男だが……。
相手は見事に態度を崩さない。そう、完璧に。
こうなると、男の思考としては二つ。
本当にただ美人が一人酒を楽しんでいたか。あるいは、訓練に訓練を重ねた、凄腕の何者かなのか、だ。

「……ん~? 別にどうもしないけど。俺の予想ならご同業か、近しい職業だと思ったから、情報交換でもー、って所。
 まぁ、推理が外れてたなら……あぁ、キミと夜を共にしたくはあったんだけ……ッッ!?」

尋ねられ、男のほうものらりくらりと話す。この場合、男が言っている同業というのはシーフ家業の方。つまり、そういった仕事の関係者ではないか、ということなのだが。
続いて欲望を口にしようとした男は、息を呑み、頭を軽く振る。
何かに気付いたというわけでもない。だが、その些細な違和感……。
思考に靄がかかる感覚が気になり、男は片手で顔を覆う。自身の体調を確認。
異常は……感じられない。視線は未だ、女性の刺青を捉えたままだった。