2017/02/24 のログ
ハルクラム=メイプル > 淡い雪が降り積もる富裕地区の高台にある小さな公園...彼女は何気なくここにいた。
ハルクラム=メイプル。今やギルドの間では若き弓の名手としてそこそこ知られている若い娘。
ゆらゆらと揺れるベンチに座りながら、凍える空を見上げて。

「ふあぁぁ、まだ夜は始まったばかり...はるくの一日もこれからが本番…
 今日は誰と遊びましょう…」

霊感の強い人は気づくだろうが、この娘、悪魔の一種である。しかしながら、それほど悪名は世に
聞こえてこない。人殺しをしたのは指で数えるほどしかない。それも大体は悪人として指名手配されていた
者共だけである。優しく、真面目な彼女は、今一つの物思いにふけっている。

「…もうあたい、82歳なのかぁ…。長く生きてるんだけどなあ…。あたいと合うようなパートナーがまだ
見当たらないなぁ…。」

彼女の示すパートナーというのは、彼氏の事だろう。淫魔である彼女だから、どこかの男を誘惑して結ばれる
事は容易なのだが、そういう事ではない。所謂、遺伝的に合う人である。
「…ディンは、なかなかよかったけど…」

ハルクラム=メイプル > 彼女には悪魔として様々な異能力がある。人の視覚、聴覚、嗅覚等を乗っ取り、感じる能力、
思いの力を実体なる武器に代えて行使する能力。しかしそれが最初から備えているものではなかった。
自分より高位の魔力、能力を有した者との交わりで、そのエキスを吸い取り、芽生えていったものが
殆どである。そして、彼女はそんな力強く、自身を圧倒してくれる強者の事が大好きなようだ。

「…ん、感覚が…よみがえりますの…あう…
 …こうしてる場合じゃないわ、帰って支度をするべきかな、それとも…まだここにいようかな…」

雪は勢いを得てやがて吹雪になり、彼女の柔肌に打ちつける。彼女は寒さをあまり感じない。
こんな雪だから誰も外に出ようとは思わないだろう。ヒュウッっと低い音の風が一人身のハルクラムに
聞こえるだろうか。

ハルクラム=メイプル > 靴を埋め尽くすように積もった雪。ハルクラムは両手でその重みのある雪の塊をすくっては、
少し舌で味見をして。

「んー新鮮な雪、苺シロップをかけたらかき氷になるかなぁ。」

普通真冬なのに冷えた食べ物はお腹を壊すのだろうが、遠い雪国の生まれである
彼女にとっては実質タダで食べられるデザートである。

手持ちの袋に適量の雪を積めていく。手袋もしていないので、雪は痛いくらいに冷えているから
用心が必要だ。霜焼けが心配である。

「お母様も喜ぶかなぁ…」

ハルクラム=メイプル > こういう子供の遊びのような発想をするところ、彼女はまだ幼いところがあるのかもしれないが、
これもユーモア性なのだろうか。或いは、自分と同じくらいの姿をして”本当の子供”に対して
親しい人と思ってもらうための作法でもあるだろう。彼女の家である富裕地区の屋敷には
数人ほどの幼い侍女が彼女に飼われているという。いずれも身寄りのなかった孤児ではあったものの、
今は彼女に調教育をされて立派な彼女の召使いになっているようだ。

家に帰る前にもう少しふらふらしようと、公園の辺りを散策する。
雪は少し止み、夜鳥の声が遠い所で響いている。

ハルクラム=メイプル > やがて、公園をふらふらと一周し、特にめぼしいものも無いので、今日の獲物を探すための支度をすべく
家への帰路へつく事にしたらしい。

「…いい一人旅だったですの…さてぇ…今日はどれほどの食事にありつけるかなぁ…」

彼女が寒空の下に再び現れるのは半刻後の事か。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 雪空の下の公園」からハルクラム=メイプルさんが去りました。