2016/11/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にミーシャさんが現れました。
ミーシャ > 「……フンフンフーン……フンフンー………。」
不死者が理由か元からなのか青みかかった白い肌に今宵は薄っすらと紅がさす。
何故かと問うならばご機嫌な声で上等なお酒が手に入ったから、飲んだら本当に美味しかったから!と答えるくらいに、誰が見ても酒気を帯びた少女にしか見えないけど本当は少年、が一人富裕地区の大通りを歩く。右手にはペン、左手にはメモ、……ではなく、今夜は小さな鈍く輝くスキットルを一つ持っているだけで、もう片方の手には何も持っていない、取材する心算ゼロの姿で散歩している。

間違いなく酒気の所為で身にまとうUネックの黒色のワンピースの裾が時々ゆらいで波打ち、スカートの裾も風もないのにゆらゆら揺れていた。

「アー……もう暫くは本かかなイ。官能小説なんて無理でス……無理。」
こんな時間に酒気帯びで散歩している理由はこれ。
本を持ち込んだ先から今度は官能小説なんてどうです?と言われたからだ。
別に童貞でもないし、異性を抱く経験なんて吸血鬼として長々生きていればそれなりにあるもので、問題はそれよりもそれを文字に書き表す事であった。

で、お酒に逃げている。

千鳥足になるほどに酩酊はしていない。
でも力を美味く集約して形を創る程に集中は出来ない。

でも薄紅差した表情はほわっと上機嫌で薄い唇もまた綺麗な三日月の形に笑みを作っているのだった。

ミーシャ > 「……でもなァ、お金がないトお酒も変えないし、何より新しい本が……。」
数年、数十年前の出来事が鮮明に思い出せる筈なんてないし、そんな自信もない。
とネガティブな事を考え始めれば折角の酔いも醒めようか、口元の三日月はひっくり返ってへの字へと変わる。

「……ウーン……………。」
悩みは尽きない、不死者として暴れていた時にはない悩むという感覚、これがまた自分が生きているのだと感じさせてくれる、とも思わなくも無くて……。

ハァ………、と最後には大きく溜息を吐くと、スキットルの蓋を捻りあけ、中の液体をお酒を呷る。
ま、悩んでも仕方なし、ペンを握るしかないか……。

結論が出れば後は行動をするだけ、トンっと大きくわざとらしく前に踏み出し、刹那大きく意識を切り替えると、其処には人影はなく1頭の狼が……。

狼は鼻先を夜空に向け、ひとつ大きく吼えると直ぐに駆け出し、其処には人も狼も誰もいない何時もの夜の大通りだけが残ったのだった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からミーシャさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にイアさんが現れました。
イア > 冬の気配を感じる晩秋の夕刻。
オレンジの光を浴びながら、小奇麗な格好をした奴隷の少年がとぼとぼと歩いていた。
首輪には短く鎖が繋がれて、白いシャツの胸元で揺れている。

「……行きたくねぇ」

ぽつりと呟いた。
少年が向かうべき場所は港。
そこには奴隷商がいて、船旅へと向かわされるのだ。
旅自体が憂鬱というわけではなく、問題なのはその目的地である。

「……バフートなんて、いい噂聞かねえし……」

はぁ、と途方に暮れたようにも聞こえるため息をひとつ零す。
逃げることは、この魔法の首輪のせいでできないのだ。
少年はまた、ひどくゆっくりと裏通りを歩き出す。