2016/11/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にミーシャさんが現れました。
ミーシャ > 「……こ、こんな寒くなるなんて聞いてない……。」

寒さで赤くなる鼻先、感覚がなくなりつつあるブラウスの袖から伸びる指先、鼻にも負けぬ色合いに染まりつつある頬……。
時間にしてたぶん深夜、やっと書き上げた作品の納品を終え、担当の愚痴を乗り越え、今絶賛帰宅中である。

石畳で綺麗に舗装された道を歩き、水銀灯が放つ明かりに照らされながら、コツコツと硬い足音を立てて歩きながら、時折思い出した等に両手を擦り合わせ、逃げる体温を何とか逃がすまいと。

まあ、でもよくよく考えれば己は吸血鬼、秋?と言うには寒すぎる気温で仮死状態になる事はあれど凍死しないはず。だが人に長く交われば色々と錯覚するものも有り、吐き出す呼吸が白く染まれば寒さと言うものを感じてしまうのだった。

「こ、こんな日は早く引き上げて人肌に暖めて少しだけ鉄粉をふったワインが呑みたい……。」

ミーシャ > 「………ああ、でも切らしてたっけ?」

脳裏を過ぎるのはテーブルに書きかけの小説と共に絶賛放置中の空のワインとワインをしまっておく木箱が空になっているイメージである。先程納品した小説が煮詰まり、自棄ワインをした事をやんわりとだが思い出しつつあり、寒さで朱に染まる頬を引き攣らせ、口元には自然と言葉通りの引き攣り笑いが浮かぶ。

あ、そう言えば仕事が忙しくて血液の補給も出来てない。

とないないだらけで思考は緩やかにネガティブに夜空のように黒く沈んでいくのであった……。

それでも身体は自然と両手を擦り続けるし、白い気は独り言の度に湯煙のように浮かび上がっては夜空へと溶け込んでいくだろう。

(あ、温かい湯にもつかりたい。
出来れば流れてないヤツ、シャワーはダメだアレ怖い……)

寒さで鈍る思考では碌な考えが浮かぶはずも無く、
独り言にも思考にも返事をするのは自分が歩いている石畳のコツコツと言う音だけ。

ミーシャ > 「一番手っ取り早いのは誰か捕まえて、齧るのが一番手っ取り早いんだよなぁ……。」

夜道を歩くのは己一人、周囲には人の気配も感じず、寒さにより鈍る思考は素の自分を少しだけ覗かせてしまう。
それを慌てて振り払うかのように一度足を止めてから首を左右にブンブンを振り乱し、銀にも勝るとも劣らぬ自慢の長い髪を夜風に揺らす。

「……ダメ、それは可愛くないし、エレガントでもない。もっと…こう……。」

言葉を続けながら、冷たい両手の指先を自分の頬に添えて、にっこり、と誰も見ていなくても何度も繰り返してきた自慢の笑みを浮かべた。それにしても、スカートは寒い……。大事な部分は2重に守られているとは言え、スカートの中に吹き込む夜風は冷たい。
こんな日くらいおしゃれはよりも防寒性を重視すべきだったか、ニーソックスを履くべきだったか、悩みのタネは尽きない。

ミーシャ > 「……かえろっと…帰って毛布にくるまろっと……」

一度は止めた足に軽く気合を込めて、先程よりも少し軽快な足音を立てて歩き始める。
普段なら滅多に通らない舗装された石畳の道を進み、少しは小説のアイデアの足しになるかな?と辺りを伺いながら帰路につく。

残るのはほんのりと甘い香りとかすかな鉄錆びの香り

それと僅かに漂う魔力の残滓で……。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からミーシャさんが去りました。