2016/10/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/」にリンさんが現れました。
リン > 富裕地区の通りのひとつ。
楽器ケースを提げた、憔悴した様子の少年――リンが歩いていた。

「だからやめておけと言ったのに……」

呪いの弦楽器――《アクリス》について知る貴族が、
興味本位で宴席で引いてみせよ、と宣ったのだ。
ギャラが出るなら、と渋々弾いたのだが――
やはりろくなことにはならなかった。

「ま、いいんだけどさ、ぼくはもう知らないっと……」

その手には、封を切られていない一本の酒瓶がある。
どさくさ紛れに勝手に持ち去ったのだ。

リン > どれほど歩いただろうか、閉ざされた劇場の前までたどり着き、そこの段差に座り込み、
拝借した酒瓶の栓を開ける。芳醇な香り。

ここのところまともに演奏ができていない。
呪物ではない代わりの楽器を貸与してもらえばいいようなものだが
そういう機会はリンには訪れなかった。
このままでは普通にバイオリンを弾くやりかたを忘れてしまうやもしれない。

酒瓶を傾けて中身を口に運ぶ。
高価な酒にそぐわない飲み方だ。

リン > アクリスを弾くにしたってそうだ。
あれを演奏するときは自分でやっているというよりも
あの呪物に自分側が操られている――
さながら自分が演奏させられているような感覚なのだ。

誰もいない劇場前、酒気にほんのりと顔が赤くなる。
酒は別に強いほうではないしこんな雑な飲み方をするべきではないのだろう。