2016/08/30 のログ
■ラケル > ―――――不意に、己の名を呼ぶ声が聞こえた。
呪縛が解けるように意識が現実に立ち戻り、凍りついていた脚がじり、と動く。
そうだ、ここは友達の家、なのだ。
気づかなかったと思えば良い、己は何も見なかったのだ、と、
思い込んで、忘れてしまえばそれで良い。
友達の家に、家族に、波風を立てるような真似はすべきでない。
態とらしいほどに高い声で返事をして、己は踵を返す。
半開きになっていた扉をばたん、と閉じて、己を呼ぶ声の方へ。
―――とはいえ、隠しごとの得意な方ではあまり、ない。
無理矢理封じ込めた記憶は今後、日ごと夜ごとに己を苛むかも知れず―――。
ご案内:「富裕地区 とある貴族の屋敷」からラケルさんが去りました。