2016/08/29 のログ
ご案内:「富裕地区 とある貴族の屋敷」にラケルさんが現れました。
■ラケル > ―――来るんじゃなかった、覗いたりするんじゃなかった。
現在は休校中の学び舎の友から、久々の誘いだったから。
肉体に変調をきたしている今、あまり気はすすまなかったけれど―――
せっかく誘ってくれたのだから、と遊びに来た学友の屋敷で。
庭園を散策する友人たちに付き合っているうち、軽い眩暈に襲われ、
先に屋内へ引き上げてきて、―――ふと、半開きの扉に気づいてしまった。
ほんの少しの好奇心。
それを盛大に後悔する羽目になったのは、
「………ここ、何……?」
毒々しいような緋色の絨毯、分厚いカーテン、優雅さとは無縁の調度の数々。
当主の、あるいは家人の誰かの『趣味の部屋』なのだろうか、
明らかにそこは、ひとを拘束し、その身を玩ぶために整えられた部屋。
グロテスクな玩具の並ぶキャビネット、様々な形状の鞭、拘束具―――
―――見なければ良かった、というより、明らかに、見てはいけなかった。
蒼ざめた顔は強張り、扉にかけた両手指は冷たくなる。
今すぐ立ち去らなければ、と思うのに、縫い止められたように足が動かない。
■ラケル > 頭の中に次から次へと、この屋敷に住む人々の顔が巡る。
傍目にはとても円満に見える家庭を構成している、ひとりひとりの顔。
上品で物腰柔らかな紳士だと思っていた父親、
常に優しく微笑んでいる美しい母親、それに、それに―――。
彼らのなかの誰かが、この、世にも悍ましい嗜好の持ち主なのだろうか。
それとも、使用人のなかの誰かが―――否、まさかそんな大胆なこと。
屋敷の中に『趣味の部屋』を持つ貴族はさして稀でもなく、
密かに同好の士を招いて、公開調教の夕べ、などを開催する者も居る、
―――などということ、箱入り王子の己が知る筈もない。
彼らは巧妙に、そうした裏の顔を秘しているものだから。
そして―――彼らのなかには、その『秘密』を守るためならば、
余所の子のひとりやふたり、闇に葬っても構わないと思う者も、あるいは。
その『余所の子』が王族であろうと、躊躇わない者も、もしかすると―――
「……どう、しよう。」
頭が、くらくらしてくる。
膝ががくがく震えて、この場にしゃがみ込んでしまいそうだった。