2016/05/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 住宅街」にリーシャさんが現れました。
■リーシャ > 夕方の住宅街。その一角に黒いフードを目深に被った少女が立っている。理由は単純。依頼人との待ち合わせのためだ。
酒場に貼りだされていた依頼の中でも、特に報酬の良かった一件。それに指定された通りの形である。
わざわざ『黒いフードを目深に被って』などと怪しさ満点の指定があったことから、何やら後ろ暗い依頼のような気もするが――。
「……暗殺、とかは面倒だよなぁ。かといってこう、他に顔を隠したままなんていうと……」
あるいは娼婦の真似事でもしろというのだろうか、などと考えながら、目の前を行き交う往来に目を向ける。
華美なドレスを纏った女性が、御者とともに馬車で駆け抜けていく。あるいは可愛らしい少女が両親とともに仲睦まじく家に帰っていく。
何とも羨ましい色々を眺めながら、少女は内心で嘆息する。
ともあれ今の少女の関心は、依頼書がいたずらじゃないと良いなぁ、ということだけだった。
■リーシャ > すっかり日はくれてしまったが、それでもなお、来客の姿はない。
いたずらだろうか?――そんな思いが胸をよぎる。
とはいえこの後依頼人がやってきて、いなかったじゃないかなどと怒られるのも癪である。
あるいはそれとも、自分がここに立っていることそれ自体が依頼なのだろうか?
ともあれやってくる気配のない依頼人に少し悪戯でもしてやろうかとフードを取る。
黒髪と黒目は夜の闇に溶けて、どちらにせよ目立たない。
しいて言えば、人気のない暗がりに立つ、貴族とは思えない服装の少女というのがいかにも怪しいということが問題だ。
「――ま、後もう少し待って来なければ、残念だけど帰ろうか?」
なんとなしに独りごちる。目の前の邸宅にも明かりが灯り、家族の団欒が聞こえてくる。
実際不審者だよなぁ、などと思いつつ、警邏の者達に見つからないように、そっと気配を殺していた。
■リーシャ > 夜もそこそこ更けてくるが、待ち人は来る気配もない。
ならば、と少女は嘆息すると、酒場の方へと足を向ける。
今夜は待ちぼうけで無駄にした時間を埋め合わせるべく美味しいものを食べよう。
そんな思いを胸に秘め、、小さな影が揺らいで消えた。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 住宅街」からリーシャさんが去りました。