2015/11/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 劇場前広場」にリーシャさんが現れました。
■リーシャ > (とある貴族邸宅にお邪魔することになってから、見聞を深めるついでに上流階級の嗜みを知るという名目で、少女は劇場前の広場に座っていた。目の前には人集り。平民地区の酒場通りとは違う、華やかな列だ。馬車なども走っており、そもそも場所が違うのではないかとも思う。そんな中、広場の喫茶店――そのオープンテラスで暖かくした果物入りワインを飲みながら、同じく注文した肉のプレートに悪戦苦闘していた。ナイフとフォークの、慎ましやかな使い方。その研究である)
「うぐ、こうだと、切りにくいし……でも、いつもの使い方じゃちょっとはしたないしなぁ」
(肉を突き刺して、ズバッと刀剣の要領で切断する、と言うのはやりやすいが如何せん動きが大きい。前回、自身の飼い主が見せていた扱い方を真似るが、今度は力の入れ具合がわからずにナイフをおってしまいそうで。なかなか苦心をしながら、ゆっくり肉を切っていた)
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 劇場前広場」にフランネルさんが現れました。
■フランネル > 懐が暖かいときには、美味しいものを食べるに限る。というのがフランネルの持論だった。
損をするのは嫌いだが、貯めこむよりは使うべきで、それもひと時の楽しみがいい。
そうしてやってきた店でふと目に入ったのは、ぎこちない動きで皿に向かっているひとりの女の子だった。
あたりを見回し、連れがいなさそうなことを確認すると、案内してくれた給仕を片手で制して少しのチップを握らせる。
そして、その少女のほうへと歩み寄ると、椅子の背もたれ越しに穏やかな声で語りかける。
「こういうお店、慣れてらっしゃらないんです? それじゃ、肩が凝っちゃいますよ」
言いながら、フランネルは彼女の肩に触れようとそっと手を伸ばした。
■リーシャ > (うぐぐ、切りにくい。そんな表情。ナイフはあまり器用に使えないのだ。其れこそ、普段の剣と同じような振りかぶりが出来ればいいのに。何度詠嘆してもそうなることはない。とはいえ、まずは一口、と切れた肉を食う。芳醇な味と、肉汁がうまい。――やっぱり高いお肉はいいなぁ、などと考えながらの晩酌。その最中に声が掛かると振り向いて)
「ん?あぁ、うん……あんまり慣れてないかな、最近使い始めたって感じ」
(苦笑しながら答えると、相手の様子を観察。肩に触れようとする手には逆らうこともなく、ナイフを置いて首を傾げてみせる。上目遣い。少女は特に警戒することもなく、のんびりと羽根を伸ばしくつろいでいた)
■フランネル > 「あら。それじゃあ、よろしかったらおせっかいさせていただいてもいいです?
せっかく可愛らしくてらっしゃるのに、肩肘が怒っちゃっててもったいないですし。
だいいち、疲れるでしょう?」
悲鳴をあげるどころか驚くこともしない肝の据わった少女の様子に、
反対に自分の中に生まれた驚きを内心のみに留め、そう告げて微笑むフランネル。
水のグラスを持ってきた給仕には、彼女と同じテーブルの席を示して、
その椅子の背に羽織っていたローブをふわりとかける。
そして、席には着かず、彼女の傍らに佇んだままでゆるく首を傾げて。
「いかがです? すこーしだけご指導させていただけるですか?」
■リーシャ > 「――ん、お節介?教えてくれるならありがたいけれど……ボクは特に何も返せないよ?」
(苦笑いを浮かべながらも、せっかくなので申し出には応じる。――警戒をしないのは、彼女が仮に自分に害意を働こうとするなら、その首を一閃して落す自信があるから。余裕故の傲慢というやつだ。龍は自らの鱗を一枚剥がれた所で気にしやしない――それが逆鱗でなければ。隣に佇む彼女の様子を見上げると)
「それじゃ、お願いしていいかな?よろしく。――あぁ、ボクはリーシャ。君は?」
(自己紹介をしつつ、同じように問いかけてみる)
■フランネル > 「あん、ただのおせっかいなんですから、お礼いただこうなんて思ってないですよ」
彼女の言葉に返すのはおかしげな小さな笑い。
メニューをその場に残し、一礼して去っていく給仕を見送ると、ゆったりとした動きで振り向いてからひとつうなずいて。
「フランネルと申しますですよ。ちょっとした魔法道具を売っている錬金術師です。
……それじゃ失礼して、リーシャさん、よろしいです?」
言ってから、彼女が置いたナイフをそっと手に取る。
優しい手つきで持ち手を握り、すっと細い人差し指を伸ばすと、その先を刃の背側の根元に沿わせてみせ。
「まず、持ち方はこうです。剣みたいにぎゅっと握り締めちゃうと、さっきみたいに肩と肘が広がっちゃいます。
ここはいいお店ですし、そんなに力いっぱい切らなくても大丈夫ですからね。
……じゃあ、やってみましょうか」
言ってからナイフを刃の部分を皿に載せるようにして置くと、そっと彼女の手を取ろうと。
■リーシャ > 「そっか、ありがと、フランネル――錬金術士?あぁ、ごめんね、あんまりそういうの詳しくないんだ。後で教えてほしいなって」
(そして目の前で例示される持ち方。自分が持っていた、剣を持つような形とは随分違う繊細さ。――主たる女性と同じような優美な指先が見える。筋肉の僅かな動きから、そんなに力がこもっていないことを理解すると、今度は自分が実践する板。ナイフを持った手には彼女の手がそえられる。握り方はなれないものだが、案外に持ちやすい。――そう持つための器具だから当然だ。しかし少女には、これもいい経験だった其れが新鮮だった)
「こ、こうかな?小さな刃物は短剣しか使ったことないから、こんなに細くて刃が小さいナイフは、その、初めてなんだよ」
(ぎこちない動きで、そーっと肉に刃を当てる。そして引くと、案外すんなり切れてしまって、少女は目を丸くしたあと、すげぇ!とでも言いたげなキラキラした眼差しをフランネルに送っていた)
■フランネル > 「はいです。そうそう、お上手ですよリーシャさん。
食器は優しく、華奢な男の子を扱うみたいに。それで、こう……あら」
切り方を教える前に、するりと目の前の肉を切ってしまった彼女。
あっさりとした解決に幾度かまばたきしてその手元を見つめることしばし。
そして、くすくすと小さく笑ってからもう一度彼女の手に自分の手を添えて。
「ふふ、切るほうは自然にできちゃいましたね。
短剣と違って、食事用のナイフは切るものですから、刃を押し当てていまみたいに
すーっと引いてあげればそれでいいです。
安いところのかったいお肉だと、ちょっと力いることもあるですけど、そのときは
この人差し指に力入れてあげれば、たいていは大丈夫ですよ」
言ってから、すい、と、彼女の手の甲を愛撫するように撫でてから自分の席に着くフランネル。
広場からは適度な距離が保たれているのか、行きかう人々は見えても喧騒は遠く、言葉のやり取りを邪魔するほどではない。
ぱら、と、メニューを開くと、それに目を落とす前に顔を上げて彼女を改めて眺め。
「リーシャさんは、短剣を使われるということは普段は傭兵とか冒険者さんでしょうか。
だったら、魔法の生命ポーションとか使ったことないです?
錬金術師っていうのは、ああいうものを作るのを仕事にしてる人のことですよ」
■リーシャ > 「えへへ、うれしいなぁ、スパっと切れるんだねぇ♪――今までは、短剣みたいに振りながら引くことで切ってたけど、これならそうしなくても平気だ♪ありがと、フランネル!」
(見えない尻尾を振りながらにこやかに応える。とは言えなれるにはまだ時間がかかるようで、何度も何度も失敗しながら、ナイフの正式な使い方を覚えていく。もともと刃物を使うセンスには長けている少女であるから、覚えるのにそこまではかからないだろう。手を握られると、女性特有の甘い匂いにドキドキしてしまう。体は正直なのだ)
「ん、そかそか、こうすればいいんだね。ふむ、安い硬いお肉は力を入れて切るんだね?」
(学びながら手を動かし、お肉を食べる。うまうま、美味な事この上ない。対面に座る彼女を眺めて、そして微笑むと説明には目を丸くする)
「ポーションかぁ、うん、ボクも冒険はじめた頃はお世話になってたなぁ。初めての冒険の時は、魔物の毒で熱っぽくなったりお腹壊しちゃったりして、その時に解毒のポーションを飲ませてもらったんだけど、飲みやすくて素敵だったね――ぁっ!?」
(筋の部分にあたった少女は、先の話を思い出す。力を入れて切る。このくらいかな?と力を込めて切ろうとした瞬間、すぱん、と皿がまっぷたつに切れてしまう。げげ、しまったぞ、という心境。どうしようこれ、とは思いながら予想外のことに固まる少女だった。)
■フランネル > 「はいです。リーシャさんは刃物使うのがお上手みたいですね。
そうそう、そうやって下へ軽く押しながら手前へ引くだけで――」
すぱっと、肉とその下の皿までが綺麗に両断される。
切れた。
皿が。
割れていない。
切れた。
陶器の皿が。
「……」
あまりのことに、メニューを持って微笑んだまま固まるフランネル。
ありえない。
いったい、彼女にはいかなる才能が眠っていたと言うのか。
ゆっくりと視線を動かし、同じように固まっている彼女を見た後、ひとつため息をつく。
背もたれにかけていた自分のローブを手に取り、中を探りながら苦笑い。
幸いにも、周りの客も給仕も、この事象にはまだ誰も気づいていなかった。
ごそごそとローブの中から取り出すのは、細い紙テープのようなもの。
そっと彼女の手からフォークを奪い取り、料理を皿の端へ避けてから肉汁を懐紙で拭う。
「まあ、そういう冒険に役立つものの他にも、日常で役立つものも作っていますから、
興味があったら一度工房を覗きにいらしてくださいな。……はい」
皿を左右から押しつけ、その切れ目にテープを貼り付ける。
貼り付けた端からテープはその姿を消し、やがて、少なくとも見た目には元に戻った皿。
それを彼女の前に差し出すと、あきれたように笑って見せる。
「なんていうかすごいですね、リーシャさんは……」