2015/11/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/晩餐会会場」にリンさんが現れました。
リン > マグメール富裕地区で毎日のように行われる豪奢な晩餐会。
多くの貴族が参席する中、リンという少年もいた。
しかしそれは客でも使用人でもなく、主催たる男性貴族の持ち物としてだった。

宴も酣となって来た頃、主催が使用人へと合図をする。
すると使用人が一抱えほどの大きさの箱を持って、客の集うテーブルへと歩み寄り、箱を開く。
現れるのは、礼服に身を包み、青いバイオリンを手にした一人の少年である。
……手のひらで覆い隠せそうな、虫のように小さな身体の。

貴人たちの好奇の視線が集まる中、テーブルの上で彼はバイオリンの演奏を始める。
リンは呪いのバイオリン《アクリス》に魅入られて以来、
こうして珍しい見世物としてバイオリンを奏でる日々を送っていた。

リン > 演奏を一区切り終わらせると、称賛の声が上がる。
玩具のような大きさの《アクリス》だが、音色は誰もが認める素晴らしさだ。
しかし、客たちの反応には、リンはなんの感慨を持つことも出来ない。

なぜなら、彼らが見ているのは自分ではない。
こんな珍しいモノを持っている主人のことなのだ。
どれだけ素晴らしい見世物であっても、所詮は見世物にすぎない。

何しろ人の世にも魔術と魔族の入り乱れる、混沌の時代。
小人の奏者なんて、目新しいだけのしろ者だ。

たまに申し訳程度に巨人に声をかけられれば、愛想のいい表情で返事する。
どこで手に入れたのか、とか、どうすれば譲ってもらえるか、とか、
そんな言葉が頭上で飛び交っていた。