2015/10/29 のログ
ご案内:「ナイトクラブ『ミニュイ』」にリーシャさんが現れました。
■リーシャ > (暗がりに怪しげなライトが指す店内を、一人の少女が歩く。纏った給仕服から察するに、店員なのだろう。右手には銀色のトレイ。その上には色とりどりのカクテルが乗せられていた。どのテーブルにも羽振りの良い男女が座り、奴隷や侍従を侍らせて、湯水のごとく金を使って夜の遊びに勤しんでいる。戯れのように数万ゴルドもの取引が纏まったり、或いは互いの奴隷の品評や交換会などを催している姿が見える。――全く人の闇は深い。嘆息しながらも、少女は労働に精を出す)
「――お客様のご注文はこちらのカクテルでよろしいですか?」
(とあるテーブル、差し出すのはトマトと火酒を混ぜてレモン汁を加えた品。『血の聖女』とかいう名前のそれを差し出すと、伸びる手をさり気なく交わしながら微笑みかける。向こうも向こうで夜遊びには慣れたもので、直ぐ別の娘へと目移りしていた。今夜は一晩、人手の足りないこのクラブで働けば、普通の仕事にして10日分――500ゴルド程の収入を得ることが出来る。店がいかがわしいのはわかっていたが、破格の報酬は魅力的だった)
■リーシャ > (所々のテーブルでは、荒い息遣いや性臭なども漂ってくる。とあるテーブルでは侍従の娘を貴族の男達が囲んでおり、指や淫具の類で嬲っている様子が見える。或いは別のテーブルでは貴族の女性が奴隷の少年に奉仕をさせていたり、またあるテーブルでは大量の金貨が入った袋と何らかの植物の種のようなものを取引している様子も見られた。あらゆる欲が入り交じる、社会の闇を集めた坩堝。それがこの店の真の姿――貴族達の欲を満たすために、暴力以外のすべてが許される世界だった)
「――うわぁ……何度も来たい場所じゃ、ないよね……あ、はい、追加のカクテルですね、何がよろしいですか?」
(客に寄っては地下や2階のVIPフロアに向かうため、新しい客がひっきりなしにやってくる。彼らを席に導き、注文通りに酒を運び、そして誘いの手をそっと交わす。現状は上手く言っているが油断ならない状況だった。――500ゴルドのためならえんやこら、である)
■リーシャ > (忙しく動いていれば、その内に客の波も引いていく。――刻限にして22時間際、ナイトクラブなのに真夜中の客が来ないのは、その前に集まって夜を目いっぱいに楽しむつもりの男女が多いから。どこもかしこも悪徳の宴。皆一様に、普段は見せない毒塗りの牙を見せながら、善良なはずの奴隷や侍従を食い散らかして弄んでいた。そしてまた別のテーブルの配膳を終えた所、うっかり手を掴まれてしまう。店員であるという手前、手荒に解くことは出来ない。故に、苦笑を浮かべながら)
「あら、お客様。ボク――いえ、私などよりもっと可愛らしい者はたくさんいらっしゃいますよ?――わ、わわっ!?」
(そっと躱そうとするが失敗。テーブルに引きずり込まれかけ、慌てて体に力を入れる。テーブルの際には小さな香炉が一つ置かれていて、その中では小さな種のようなものがちりちりと燃えていた。恐らくは先ほど手に入れたものだのだろう。漂う甘ったるい匂い。其れは嗅いだ者に多幸感を与える特異な薬草で。少し吸い込んでしまいながらも慌てて息を止めると、強引に体を引き抜いた。男達は煙のせいで力が入らない様子。どうにか逃げ出すことは出来たが)
「ぷはっ……ぅ……んっ――もう、酷い目に、あった……――んん、ぅっ!?」
(どくん、と心臓が跳ね上がるような錯覚。動悸が増して呼吸が荒くなり、浮遊にも似た酩酊が襲ってくる。煙の持つ多幸感が少女を苛み始めた瞬間だった)
■リーシャ > (鼓動が速い。目眩もする。強烈な幸福感に少女は足をふらつかせて、ついには床に膝をついた。石造り特有の冷たさが伝わってくる。媚薬の効能も混じっていた様で、体の奥が火照るような錯覚を覚える。ぐつり、と煮えるような印象。吐息は甘く上ずってしまい、回数も増えて荒くなる)
「は、ふっ……はぃっ、し、少々、お待ち、くださいっ――!」
(とは言え別のテーブルの客には店員の不調など関係ない。遠慮容赦なく呼びだされ、流れるように注文が飛ぶ。先程までと違い、ふつふつと煮えるような感覚のせいで覚えていられない。結果としてバーカウンターに注文した酒はちぐはぐで、全く違うものが目の前で作られ、そしてトレイの上に乗せられていく)
■リーシャ > (注文を間違えてしまった少女は、貴族に怒られて再びバーカウンターへと戻る。結局淫らな目には合わなかったものの、お給料は満額もらえたというわけでもなくて。危ないお店で一晩働いたという割には少ないお給金を手にしょんぼりしながら宿へと戻っていくのだった――)
ご案内:「ナイトクラブ『ミニュイ』」からリーシャさんが去りました。