2015/10/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にイアさんが現れました。
イア > (人通りも少なくなった富裕地区の一角を、一人の男と少年とが歩いていた。男は禿頭で小太りな体型を上等な衣服に包んだ、いかにも成金で。一方の少年の首輪が示す身分は、奴隷。その一歩毎に二人の間にじゃらりと金属質の音が響く。遠目にもすぐにそうと知れるだろう、音は少年の足元から男の手元の間で鳴っていた。小奇麗な衣服を着せられた少年の細い足首に、無骨な足枷が嵌められ、そこから伸びた鎖が男の手に握られている。)

……もういいだろ。外せよ、コレ。

(憮然とした表情で、少年が粗雑な口調を男に向けた。男は盛大に舌打ちをすると、乱暴に鎖を引いて少年の体勢を崩す。無様に尻餅をつくハメになった少年は男を睨み上げた。)

……ってーな。何しやがる。

(奴隷商である男は忌々しげに、「黙れこの売れ残りが!」と吐き捨て鎖を揺らし、早く立てと急かしてくる。)

イア > (少年は、この男のことが大嫌いだった。故に素直には従わない。顔を背け、無言を貫く。そうすることでこの男が余計に機嫌を悪くし、自身への扱いが悪化するのだと経験していて尚。少年はこの男に従順になどなれない。じゃり、と鎖が強く引かれて足枷が肌と擦れ、痛みが生まれた。「くそ、折角の売り込みも無駄にしやがって!」男が苛立ちのままに鎖を引く度、金属音が夜闇の中に響く。)

うっせージジイ! 約束通りオキャクサマの前では大人しくしてやったろーが。

(反抗的な少年は、しかし売り物の奴隷。今日とて朝に縛されて以降、富裕層の物好きな客への売り込みと称して連れ回されていたのだ。今日の食事と引き換えに大人しくすると取引し、その言葉通りに顔を背けて無言を貫いた訳だが。可愛げもない少年奴隷は、結局今日も買い手のつかないまま、奴隷商の持つ鎖に繋がれていて。)

イア > (男は暫く鎖を力任せに引いていたが、すぐに息が上がって憎らしげに少年を睨めつけた。足枷が擦れた部分からはじわりと血が滲み、じくじくと痛むけれど、少年はそれでも生意気そうに男を睨み返し、鼻で笑う。)

気は済んだかよ、クソジジイ。

(その言葉に顔を怒りで赤く染めた男は、手にしていた鎖を少年の顔目掛けて投げつける。じゃ、と重い金属質の音と共に唇の端を打ち付けた。男は「この役立たずが」と吐き捨てて、一人邸へ向かう。その背中を見送って、少年はようやく肩の力を抜き、ため息を吐いた。)

……いってー……。あの様子じゃ、飯は期待できねーな。
……ま、当然か。

(自嘲気味に呟く。自業自得だ。わかっていても無理なのだから仕方ない。自らの足に繋がる鎖の端を眺め、少年は路上に尻をつけたまま空を仰いだ。)

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にティネさんが現れました。
ティネ > ちゃりちゃり。伸びる鎖がひとりでに微かに鳴った。
鎖を見れば、いつのまにかなにやら小さなものが鎖にくっついているのがわかるだろう。
少女の人形のようにも見えるが、なにやら動いているようにも見える。

それに気付こうが気づくまいが、そいつは気づかれていないものと決めつけて
遠慮無く鎖をしげしげと眺めてぺたぺたと触っている。

イア > (両手をついて夜空を暫し見上げていたが、ふと耳につく微かな金属音。怪訝に思い足枷から伸びる鎖へと視線を向ければ、小さな、小さなものが鎖に触れていた。)

……あ?

(間抜けな声が漏れた。それは小さいながらも人型で、動いていて。思わず手が伸びる。叶えば小さな羽根を摘んで持ち上げようとして。)

な、んだコレ。

ティネ > 「うぎゃ」

またこの持ち方だ。ある種の作法みたいなものなのだろうか?
気づかれたことに気づかずに、あっさりと羽根をつままれて持ち上げられたそいつは、
いかにも妖精でございといった外見の、ネズミほどの大きさの少女だった。

「こんな可憐な女の子を捕まえてコレとは失礼でしょー……
 あの鎖、ファッション? それとも、繋がれて外で寝るのが仕事の子?
 ボクがいうのもなんだけど外で寝てたら身体壊すんじゃない。
 あとこの持ち方やめて」

そんなようなことを高い声で好き勝手くっちゃべった。

イア > 喋った……

(失礼ながら酷く驚いた顔で、摘まんだそれと目線が合う高さに持ち上げて。
 高い声に、にや、と意地悪そうに口角を歪める。)

可憐な女の子ぉ? どうみても珍獣じゃねーか。ってかファッションな訳あるか。
んー、繋がれてんのは仕事っちゃ仕事だけど。
……あ、イヤ? 放して欲しけりゃ、もっと言い様あるだろ。

(摘んだ手を離さぬまま、ぷらり、と左右に軽く揺らして、面白そうに笑う。
 もちろん軽い悪戯心だ。嫌な気分が奇妙ないきもの?のおかげで吹っ飛んだ。)

ティネ > 「珍獣……!」

ガーンという描き文字を背負った。
矮人だの虫だのよりはマシだろうか、どうだろうか。

「ボクが珍獣ならキミは犬ころじゃーん。
 こんなふーにこれみよがしに外に繋がれちゃってさ。
 ごしゅじんさまに大切にしてもらえてないわけ――

 あっやめ、やめ、やめてぇぇ。
 おねがいします放して、放してー」

売り言葉に買い言葉を並べ立てたが、
軽く揺らされはじめただけであっさり余裕を失って懇願し始めた。
言葉はともかく力では勝てないようだ。

イア > (ショックを受けた様子に、はは、と声を上げて笑う。
 しかし、小さな少女の言葉のいずれかが琴線に触れたのだろう。
 笑みは消えて苛立ったような、悔しいような眼差しで睨みつける。)

犬じゃねーし、あんな野郎が主人なわけあるかよ! 俺の主人は俺だけだ。
……ったく。それで、お前なんなの? どっかのペット?

(自分に言い聞かせるようでもあった言葉の後、一度目を逸らして。
 あっさりと強気発言を撤回した妖精の羽根を、自身の手から解放してやると、鎖を膝の上へ手繰りながら問いかける。)