2023/06/30 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にショコラータさんが現れました。
ショコラータ > 学生寮住まいは湯屋に用は無い。
おまけにコクマー・ラジエル学院が水場というか濡れ場に力を入れている場所ならば内部に大浴場なんかもありそうなものだけど。
この旅籠というか温泉というかスパ気持ち良いよって噂を聞いて、外でのアルバイト帰りに立ち寄った。

ご宿泊でなく入湯のみのプランもあるだろうか。
そうすると大衆浴場と変わりなくなってしまいそうだけど、罠かのように間口を広げていてもおかしくなさそうな場所で。
そんな悪評を知らずにやって来る留学生などカモかもしれないけれど、
長居しないプランや対象者の能力をある程度分析する機能などがあれば、さしあたってはノーマークでいられるか。

様々種類のあるらしい似たような効能の温泉からとりあえず『女湯』を選択して、
ズラズラズラと小さな文字で書き連ねられている注意書きなどはよく読まずに浴場へ進み出る。

人前で肌を晒す文化は無かったので、水着が無いなら当たり前のようにタオルを巻いて。
今日も暑い日で、あんまりごったがえしているようだったら回れ右するところだけれど、
時間帯かとても広さに余裕を持って作られているのか、湯煙の向こうの気配はまばらで、ほっとしながら水辺に寄った。
――水辺、という感覚である。お風呂と言うより湖というか泉で水浴びするような。
だからもちろん寮へ帰ったら普通にお風呂に入るつもりで、
特に体を流したりもせずにタオル巻いたままちゃぷんと湯に脚をつけはじめる困った外国人。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」にエリビオさんが現れました。
エリビオ > 夏を向かえ青々と繁る梢の隙間から、薄白い湯気がたなびいている水浴び場。
木々を目隠しとするように造られた温泉や水遊び場の、濛々と湧き上がる湯煙の中を腰にタオル巻き、素足で歩く。
日頃の疲れを癒そうと訪れたのは混浴の露天湯。
注意書きに連ねられた文字には『女湯』という文字もあったが見落としていた。

「綺麗なお姉さんとご相伴に預かったりして」

無意識で小さく独り言零すほど上機嫌な少年はゆっくりと水辺に近寄り。
公共の浴場では浸かる前に掛け湯をするが常識だと、脱衣所に描かれていた注意書きを思い出せたのは、奇蹟だろう。
木製の桶を手に取り、水面の中に沈めてから頭上から温水を被ること、律儀なことに数度。
そして長い足を差し入れようとしたところで。

「あっ!」

見知った先客の姿に間抜けな声が溢れてしまう。

ショコラータ > 「――ぅおぉ、意外とあっつい、ヘンな感じね。」

温泉初めて。こんな広く張られた水が暖かいを通り越してジンジン熱い事に戸惑いながら、
乳白色の湯の中におずおずと身を屈めていった。

ちょっと熱すぎやしないかと帰りたくなるが、せっかく来たのだし、それに店が設定している温度なら皆これで入るのだ。
慣れるのかしらね?と何度か腰を浮かしてしまいつつ、やがて湯の中に座り込む。

「――っあぁぁ… うぅぅー…」

はふーと声を漏らしながらしばし身を固くして温度に耐えて。
ちょっと落ち着くと肩の力を抜き… 別に普通ねえと手持無沙汰に宙を仰ぐ。
広い空間で、というか空の下、お湯に浸かる体験が特別感あるのはそうだし、湯に薬効なんかもあるのだろうけど、
じゃあ今どれだけ気持ちが好いかと言うと、期待値高かったせいで別にそれほどでもという評価。

「…んンンなんかさっきから…」

加えて異次元をどうのこうのする魔術師は、先ほどから施設内にて『組み換え』が行われているのを察知してか。
違和感がある、とソワソワしてみせるものの、女湯の看板出しておいて混浴と入れ替わるなんてありえない話で、
温泉の施設機能的にそういう仕組みが必要なのかしらねと、なんとなく納得しておく。
逆に問題があったとして、この私だけは脱出余裕だもんねという自信もあって。

「……。」

かけ湯を知らない女には、バチャバチャやり始める客は何がしたいのか分からない迷惑なヒトである。
通りすがりの他人とスタイルが違うからと言って食ってかかるほどの正義マンではないが、
そもそも他人が落ち着かないのもあり、どんな人かとチラ見して、やけに背の高い女の人ねと――

「――っはぁあああっ!? 何してんのよアンタエミリオ!?ここ女用でしょ嘘でしょアンタ!」

エリビオと確かに聞いているのだが、その後ちょっと語感の似たよくある名前に脳内変換されたらしい。
何してんのよ出てけ!とタオルの胸元押さえて肩まで湯に沈み。

エリビオ > 級友の姿に思わず足を引っ込めて。

「ごめん!出て……」

出ていく、とは言葉にならなかった。なぜなら、名前間違いに微かに苛立ちを覚えて反論したくなったから。

「エリビオだよ。チョコラータ。
 俺は間違えてない。混浴って書いてあった!」

湯気の遥か向こうの脱衣所の注意書きを指しながら、態とらしく名前を間違える
出ていくつもりで引いた長足は、遠慮も呵責もなく相手の隣に差し込んで。

「混浴が嫌なら君が出て行けよ。俺は湯に浸かりにきたんだから」

ここで出ていけば自分の負けとすら感じて膨らむ頬。
顰めっ面で睨みつけるが、やがて。

「……ふぅぅ。」

甘い甘い鼻抜けた吐息に変わる。
やや熱めの温度と硫黄のほのかな薫りとが、内外から己を満たしていく心地に、唇の隙間から零れる声は至極快さげな響き。
ちゃぷん、静かだった湯面に控えめな波紋拡げて完全に肩迄を滑り込ませて、手頃な岩に背中を預ける。
苛立ちもどこにいったかの心地。次第にほのほのと桜の熱色昇り始めた眦を細め、湯の中で縮こまった爪先を伸ばす。

「いい湯だねぇ」

先程喧嘩していた相手に至極呑気に語りかけてしまうのも、この湯の薬効のせいかもしれない。

ショコラータ > 「――は…? エビ… エビリオ?何?今そんな事どうだっていいでしょ女・性・用!!
 アンタ女子トイレに居座るわけ!? 当局のお世話秒読みだっての!」

チョコラ呼ばわりはこちらに相手にしている余裕が無かった。
居座るつもりの様子にはコイツマジと口をぱくぱくさせて、ざっぱと立ち上がるタオル巻き。

「ああそう注意はしたわよ!そういう態度なら晩御飯は臭い飯ね!
 のほほんとしてれば良いわ最後のシャバを楽しんで!」

もしもしポリスメーン?って感じにスタスタと出入口へ。
そして確認すると現在の表示は『混浴』である。
――そんなバカな!と今度は目を皿のようにして熟読する誰も読まなさそうな小さな注意書き。
旅籠の責任回避として、湯の薬効成分が入れ替わったり、女湯男湯混浴がランダムで入れ替わる旨などが記されていて。
何かこう仕組み的に事情があるような事が書かれているが、だったら最初から全部混浴にするべきだ。

…じゃあしょうがない、今は混浴になってしまったのだから場所を変えようかと思うのだけど、
このまま帰ったら『エビリオ』は私が間違えたと勘違いしたままだろう。
それは許せぬとずかずか浴場に戻って行く。

「――い、今は混浴だったけど! さっきは女湯だったの!でなんか注意書きに部屋が入れ替わる事があるんですって!
 だからココいつまでも混浴じゃないわよ、女湯に戻ったら… …あれ?じゃあ男湯になる場合もあるって事…?
 と、とにかく私も間違えてなかったから! だいたい混浴入りに来ましたって何よやっぱりヤラシー。」

プールでの座禅もやっぱり通り過ぎるお姉さんを凝視してたのねって、少し離れてざぶんと湯につかり。

エリビオ > 湯の熱と浮力の相乗効果ではんなり微笑んでいた顔は、
罵声の数々に流石に眉間に皺を深めて。

「全く口数ヘラないなぁ……。
 女湯でもないし女子トイレでもないっての。
 捕まる言われはないよ。むしろ混浴で男が入ってきたことで騒ぐ方がヤバいんじゃない?
 女湯かどうか気になるなら見てきなよ。」

忙しなく素足張り付く足音が遠ざかり……やがて勢いよく戻ってくるのに含み笑いが溢れる。

「やっぱ混浴だっただろ?間違いを認めなよ。豚箱に詰め込められるのは、浴場で騒ぎ立てた自分だって」

双眸細めて面白そうに意地悪そうに口数重ねてゆく。
やがて気まずそうに離れて背を向けた口達者な彼女を茫洋と眺めてゆき。

「だからプールでは凝視なんかしてないっての。
 ……でも今は君を見てるけれど。」

少々性に奔放な台詞が出るのも、また湯の効果か。
その褐色の背筋と白いバスタオルをのんびり眺め。

「水浴び場でタオルをつけるのはマナー違反だよ。
 とりなよ。自分は間違えないんだろ?」

またも意地悪く囁く。そして湯の中で腰に巻いていたタオルを取り出し。
丁寧に折りたたんで自分の頭に乗せた。

「俺はもう取ったよ。」