2023/01/04 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にタマモさんが現れました。
タマモ > 新たな年の始まりに、汚れを落とし綺麗さっぱりと。
そんな気持ちを半分に、少女は今、湯船に浸かっている。
普段出している耳と尻尾は引っ込めて、今の見た目は普通の人間。
もっとも、隠しているのは見た目だけで、その雰囲気まで隠していなければ。
感じる相手には、人でない事は分かるだろう。
…気持ちのもう半分?そんな野暮な事、聞くものではありません。

広い温泉を前にすれば、まずやる事は飛び込みで。
続いてやるのは、端から端まで泳いでみせる。
人が多ければ、何とも迷惑この上ない訳だが。
どうやら人は少ないようで、ありがたい事だ。

「あー…これは、なかなかに…」

そして、今現在は、一休憩と端の岩陰に隠れるように、大人しく浸かっている、と言う訳である。
隠れている…と言う程、しっかりと隠れている訳ではないものの。
湯気やらが覆っていれば、それなりに、目を凝らさなければ見えないだろう。
凭れる岩の冷たい感触は、湯で熱くなった体に心地良い。
そんな感触を楽しみながら、のんびりと寛いでいるのだった。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」にロン・ツァイホンさんが現れました。
ロン・ツァイホン > 新年ともなれば、普通は客もそこそこいるものであり。
しかし今日はたまたま、そこまで客行きが多くないように感じられた。
普段はそこまでこういう温泉に足を運ばないのだが、新年なのだ。
たまには普段しないことをしてもいいだろうと、その入口へとやってくる。

「ふぅ……温泉なんて久しぶりかもしれませんねぇ」

そんな広い空間でもその者は酷く存在感があった。
それは背丈もずっと他の者より高いというのもあったが、見た目も存分に関係するだろう。
黒い鱗が頭から足先までかけてびっしりと生えそろい、その顔は爬虫類の瞳と突き出した口。
口の外からも見える牙。その背中には大きな翼が生えており。
大凡、人が思うような竜の姿が、二足歩行で立っていたのだから。

「さて、まずは体を流しましょうかね」

湯気が覆っていても、その輪郭は非常にわかりやすい。
だからこそ、普段は人が多いときは目立ちすぎて居心地が悪くなるのだが。
今日はそうでないようで、ゆっくりと体を洗い始める。

タマモ > ぴくん、隠して見えない耳が揺れる。
それは、誰かが入って来た事を、聞き取ったのだと分かる反応。
…なのだが、現在進行形で、岩陰に座り、壁を眺めている状況。
とりあえず、声から男子と分かったが、今のところの情報はそれだけである。

「………」

その声を聞きながら、あぁ、ちゃんと洗ってから入る真面目な誰かだ…とか、頭に浮かべる。
いや、それが普通じゃないのか?と言われそうだが、自由人にそんな拘りは不要だ。
…人じゃないが。

ともあれ、誰かが入って来た。
それはつまり、何かしなければ悪いだろう。
そんな考えが浮かぶのは、少女の通常運転。
ゆうらりゆらりと湯気の中、ゆっくりと移動をし、湯船の端に辿り着く。

そして…

手にしていた何か、それを、ひょいっと床に投げた。
それは、石鹸。
洗い場と湯船との、ちょうど真ん中辺り。
上手くいけば、足を滑らせる、そんな大変危険な行為である、良い子は真似しない。

ロン・ツァイホン > 身体をしっかりと洗って、タオルを頭に置く。
その黒い鬣もしっかりとツヤを取り戻して、久しぶりの温泉にワクワクと。
だからだろうか、その石鹼に気付かな―――いや、それに目を引かれたのは。

「……」

ごくり、とその竜は固唾を飲み込んだ。
踏むべきか?踏まないべきか?ここで踏むのはただの間抜けだろう。
しかし踏まないのもまたなんか負けた気がする。なぜだ。
だが踏んだら間違いなく転ぶ。あの石鹼は湿気によってしっかりとスベスベになっているのがテカりからわかる。
転んだら痛いだろう。しかし転ばないといけない気がする。

「―――っ!」

そして竜はその重い足取りを前へと向けて―――つるんっ、といい音が鳴った。

「ぐ、へぇ!」

同時に、温泉に軽い揺れが、そして大きな音が立つ。
竜はその大柄な見た目に見合うほどの体重を有している。
そんな巨体が思い切り転んでしまえばどうなる?―――大きな衝撃が走る。
そしてそれに踏まれた石鹸が―――弾ける。

散弾のように石鹼の破片が、壁や石に反射してそれを設置した者の目に向かって襲い掛かった。

タマモ > それなりに、大きなシルエット…いや、あれ何?人じゃない。
それに気付くも、投げ込んだ石鹸は戻って来ない。
力を使い、引っ張り戻した方が良いだろうか?そんな問いが、頭に浮かんだ少女であったが…

しかし、相手の反応が、少女にそれをさせなかった。
明らかに、気付いたような、そんな雰囲気。
だが、そこからの動きに、僅かに感じた戸惑い。
そんな光景に、少女は期待の眼差しを向けてしまった。

「………あ」

その声は、自然と出たのか、あえて出したのか。
そして、その声が、何に向けられたものなのか。
正解は、相手の動きと、石鹸が辿った運命だ。

力を発動させる、その準備は終わっていた。
ぱちんっ、少女が指を鳴らせば、男子…竜?さて、どう呼ぶのに表現したものか。
そんな相手の周囲に、目に見えぬ壁が全六方向を覆い尽くす。

爆ぜた石鹸は、その囲った壁の中を跳ね回り、転ぶと思った相手は…
まぁ、転んだのだが、触れられぬ何かの上に、倒れ込んだ形になっていた。