2021/06/17 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 深い眠りから覚めて、目の前には見慣れない天井があった。しばらく呆然としたあと、強い力を秘めた瞳が寝ぼけまなこから抜け出す前に、あわてて枕元にあった眼鏡をかける。ぱちぱちとまばたきを繰り返してから、あらためて天井や周囲を見回すけれど、やっぱりいつもの寝室ではない。
異国風の部屋の中、自分が植物を編んだような床の上に布団を敷いて寝ている事だけどうにか理解すると、のそのそと上半身を起こした。
なにがあったのか思い出そうとすると小さい頭痛がして、こめかみを押さえる。
「……え…と」
おぼえているのは、気晴らしにと思って温泉に浸かりにきた事。仕事を終えてから足を運んだために、到着はすっかり日が落ちた時間。湯上りのあと、ついでに夕食まで済ませていこうと、宿の中にある適当な食堂に入って。
「…そうだ……」
そこで出された煮魚のメニューにたっぷりとお酒が使われていたから、ふらつく足で変えるのを諦めて、ここに宿を取ったのだった。
部屋の中を見回して壁かけの時計を見ると、いつもならもうお店を開けている時間。
どうしようかと考えて、しばらく悩んだ末に、今日はもうお休みにしようと結論を出す。今から身支度を整えて戻ったところで、それなりの時間が過ぎてしまうだろう。それに、匂いこそしないけれど、昨日のお酒の感覚がまだ残っているような気がして。
「……っ?!」
今日は一日ゆっくり休もう。そう考えるとすこしだけ気持ちが楽になった。けれど、あらためて部屋を見回してみて、出入口になっている襖がわずかに開いている事に気がついた。
あわてて布団の中を覗きこみ、多少乱れてはいるけれど、ここで借りた浴衣をきちんと着ている事を確認。酔っている間におかしな事があったわけではないようだと判断して、ほっと息を吐く。
■ミンティ > もそもそと布団の中から這い出して、浴衣を直しながら襖を閉めに行く。鍵を掛けられないのはすこし不安だったけれど、もう朝にもなっているし、なにか悪さをしようとする人も、たくさんある部屋の中から、いきなりここへ入って来たりはしないだろう。
まだ眠気が残っているせいで、そんな風に油断した考えで自分を納得させて、襖を閉め終えたらまたふらふらと布団へ戻っていった。
仕事を休みにしてしまったのが引っ掛かるけれど、店長は自分。今日一日くらいゆっくり過ごしても大丈夫だろうと自らに言い聞かせると、布団を被り直して小さい欠伸をこぼした。それから静かな寝息を立てるまで数分とかからず、夢の中へ落ちていって…。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からミンティさんが去りました。