2019/03/03 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > てち てち ぺた ぺた

裸足の足が濡れた床を歩く音を立てながら、もうもうと湯けむりの立ち上る浴場に立ち入った少年。
他の客の気配は無い。

「熱くありませんように…熱すぎませんように…っ」

湯船に浸かる前に掛け湯で身を清めて、恐る恐る、少女のように細く柔らかな曲線の足を湯面に近づけ、
かすかに波紋が浮く程度に触れる。

「―――うん、大丈夫そう。」

意外に少年には丁度良い湯加減だったらしく、上機嫌で華奢な体をお湯に浸からせていく。

タン・フィール > 手には手のひらサイズの麻布の袋を握りめていて、
温泉運営側の許可を得て持参を許されたもので、
これを湯につけると、少年の周囲わずかの範囲が、
心身疲労回復に役立つ薬湯になるという代物。

「んんーーーー……っ   いいにおい…♪」

温泉によく合う、薬湯の芳香がほんのわずかに漂う中、目を細めて湯を楽しむ。

花や果実のような甘酸っぱさと、紅茶のように落ち着く香りが広がっていき、
年齢の割には日頃の薬師業で疲れているのか、心地よくてうとうとと瞼を重くして。

タン・フィール > 「…っと、あぶな…っ」

流石に寝入ってしまうのはまずいと、首を左右に振る。
一瞬の微睡みは十分に少年の脳を覚醒させたのか、
大きな目を先程よりはぱっちりと開いて、水浴び場を改めて見回す。

立地や広さや設備の種類など、不可解なところが多い九頭龍の湯だが、
今、浸かっている湯船の広ささえ、もうもうと立ち込める湯けむりで把握できない。

「…奥の方、どうなってんだろう…?」

周囲に人気の無いのをいいことに、温泉の中で泳いで移動…
…したいのはやまやまだが、その子供心をぐっとこらえる。
しかし、多少は泳ぎに近い大胆な動きもしたかったのか、
肩まで浸かった状態で、すいーっ…と湯の中を大股で進んでいく。