2018/12/26 のログ
エルス > 長湯せず、せわしいほどに人が出入りする大衆浴場といった雰囲気の湯殿に現れる、ダークエルフの女。
手拭いで身体の前面を隠し、他者の視線を気にするように入ってきた。

弟を捜索するにも資金が必要になる。
このままでは弟を捜すどころか年を越すまでもたず、ここ数週間はギルドからの依頼で忙しくしていた。
ゴブリン退治、護衛、物資の運搬など、各地を回っていたが漸く王都に戻っての宿泊。
冬至の影響か、馴染みの宿は満室で、初めてこの巨大な温泉宿を利用してみる事に。
いつか宿泊してみたいと思ってはいたが、異国めいた施設がなかなかに雰囲気があり、癒される。
この大浴場も独特の趣があった。

手拭いで身体を隠したまま、まずは洗い場で髪と身体を清める。
仕事でそれなりに汚れたが、其れらがあっという間に湯とともに流されていった。
先に洗い終えた白髪を後頭部で緩やかに纏める頃には、自然と鼻歌が出るくらいに気持ちよくなっている。
浴場にはいくつか色や効能の違う湯船が用意されており、今日はじっくりと入って楽しむつもりである。

エルス > 湯を吸った手拭いが身体の稜線を描き出す。
ふっくらと張った双つの膨らみに、淡く腹筋の浮く腹部。
だがここでは皆が性器も隠さぬ裸身であり、最初は戸惑っていたダークエルフも慣れてきていた。
ぺっとりと張りついた手拭いを剥がし、次に身体を洗う。
冬であろうと汗をかくほどには動いたので、髪より念入りに。

「――――さて……」

洗い終えて泡を流し、ダークエルフは穏やかな顔で立ち上がった。
すっかり湯で濡れた手拭いで再び身体を隠したが、目当ての浴槽に着くと其れもすぐに外し。
――――静かに、波を立てぬように両脚からゆっくりと湯船に浸かっていく。

「はぁ……、……」

思わず漏れる息は、おそらく利用客全員が漏らすものではないだろうか。
浅く座り、肩の下まで浸かるとそのまま暫し堪能。

エルス > 一つ満足すれば次の浴槽へ。
これほどまでに湯浴みに時間をかけたのは初めてで、本当にじっくりと堪能できたのだが――
当然ながらのぼせてしまい、部屋に戻った後は布団の上で暫く横たわる羽目になるのだった。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」からエルスさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にティリアさんが現れました。
ティリア > った、痛ぁ……

(しっかり湯に浸かろうと思っていたのだが。
それ以前の段階で挫折してしまいそうだった。

元凶は。浴衣に合わせて用意されていた、下駄という履き物だ。
足全体を包むような代物ではないのだが、如何せん、底が硬すぎる。
お陰で暫く宿内を歩き回る内に、すっかり足首が疲弊させられていた。
宿泊室周りから、露天風呂へと向かうその途中、とある一室。
多分娯楽室だの遊戯室だのと呼ばれるのだろう場所で、腰を下ろし足首を摩っていた。)

…これを、毎日履き慣れているお国って。想像出来ない…ね。

(しみじみと呟いた。彼の国の者達は、きっと足腰が鍛え上げられているに違いない。
多少足がマシになってきた辺りで。ん、と声を上げ今度は躰全体を伸ばす。
――慣れる筈もない、胸が重いという違和感を。ついぞ感じてしまうのだが。
よもや此処暫くの、気怠さだの節々の痛みだのは。
軍務の厳しさではなく、此方が限界なのではなかろうか…などと。つい、勘繰りたくもなる。)

ご案内:「九頭龍の水浴び場」にマヌエラさんが現れました。
マヌエラ > から、ころ、と鳴る下駄の音。
先にこの部屋で扇を投げる妙な遊びに興じていた女が、屈み込んだティリアへと歩み寄って行った。

「あら、まあ。大丈夫ですか? 足を痛めておいででしょうか……」

穏やかな瞳に心配げな光。声もまた気遣わしげで。隣で座り込めば、豊か過ぎる金髪が揺れ、床に広がった。

「捻挫などでなければいいのですけれど――」

そう声をかけ、顔を覗き込むや、表情が驚きに染まった。

「まあ。ティリアさん?」

驚いてなお甘い声が、ティリアの耳朶を打つ。

ティリア > (正直。この広すぎる宿には、遊戯室という物自体、幾つも存在する。
部屋によっては運動設備が設えられているだの、魔導機械を無駄に応用した遊戯台だの、
果ては有る意味当然の如く――宿の女性を「使用」出来る部屋だの。
実に様々な場所に別れているのだが。
一見地味なこの部屋に。先客が居るとは思っていなかった。
…それが明確な油断であり、致命的な結果を生むのだと。全てを知るのは先の事。)

……?
あ、いえ。この履き物に、どうしても慣れないだけで――――

(声が聞こえて、天井へと向けていた顔を下ろしてみれば。
途端、目を見開かざるを得なくなった。
ひ。と。きっとそんな、露骨に不安と警戒と…もしかすれば恐怖すら溶け込む声が。
喉から零れてしまったに違いない。

目の前に居たのは。不調だとでも考えてしまう、そんな肉体変化の元凶その人。
…いや、人、と呼ぶべきではないのだろう。
何せ彼女は――人外。魔、なのだから。)

っ、ぁ。……何で、こんな所に、……っ…?

マヌエラ > 「大丈夫ですか? でしたら、よかったのですが――ゲタ、というのだそうですね。これほど硬い履物ですから、きっととげとげして危ない岩場などを渡るためのものなのでしょうね」

尤もらしいが裏付けナシの推測を妙に自信ありげに告げる表情は穏やかな笑み。「おっとり」などという表現が似合いそうな風情。しかしそれが、きょとんとしたものに変わった。

「――まあ、どうして、とは――。
 もちろん、お風呂です」

人外。魔。それも悪辣で強大。そのことを知っているティリアにとっては、ずいぶん間の抜けた返答に聞こえてしまっただろうか。

「私、お風呂が大好きなんです! あったかいのも、冷たいのもいいですね。ここは工夫を凝らしたものもありますし、このユカタという服装も、異国情緒があっていいと思います!
 ティリアさんもユカタ、とってもお似合いですね! かわいいです!」

などときゃいきゃいはしゃいで見せる姿は、そこらのミーハーな小娘と全く変わらない。実際、そういう価値観は人間と大差ないものも持っている。

だが、それは裏を返せば、普通の人間がいるような場所なら、この魔族とランダムエンカウントする可能性が常にある、ということでもあった。

「ティリアさんもお風呂でしょう? いっしょに入りましょう! ナガシッコ、という儀式があるそうです!」

相変わらず、善意と「友愛」が100%の笑顔と視線。……だが、その視線が、いかにやさしげでもねっとりとした瘴気のような光を孕んでいることも、ティリアは身をもって知っているだろう。

ティリア > 多分。湯に浸かりでもして、もう少しマッサージして。そうすればきっと。
……て。その、お風呂…なんだね。確かにそれは。まぁ…何と、いうか。

(間の抜けた質問をしたと、我ながら思わざるを得なかった。それこそ、真偽不明な下駄の由来に関する彼女の持論より、余程。
温泉宿に来ている存在が。温泉を目的だというのは、当然の事だろう。
まして彼女は――以前出遭ったその時も。あんなにも王国に。人の世に溶け込んでいたではないか。
これが初対面だったなら。正しく、毒気を抜かれてしまったに違いないのだが…今となっては。
そう簡単に消えきらない程、彼女が強烈な毒を有しているという事を。正しくこの身に刻み込まれている。
じり、と。椅子の上から僅かばかり、腰を浮かせようとするものの。)

あ …っはは。そう、かな。…彼方の国の、こういう服って。
どちらかと言うと、もっと細身の躰の方が。すっきりとして、似合うらしいんだけど。

(ちろりと嫌味を呈してみた。…彼女のせいで、今現在、実に窮屈な胸元について。
尤も、それを聞き入れてくれる精神構造をしているとは…到底思えない。善意と悪意の差が無いというか。
矢張り人と魔とでは、善性に対する価値観自体が違うのだという事を。
何も彼女に限った話ではない、此迄関わってきた大半の魔に。その善人面に、思い知らされてきているのだから。
少しだけ。…ほんの少しだけ。抵抗になる筈もない、溜息を漏らしてから。)

え…?
あ、っいや。…それは。……嫌だよ、温泉って。…お風呂って何というかだね?
誰にも邪魔されないような…ほら、一人静かで、豊かにだね……?

(何処ぞで聞いたような謳い文句で、どうにか、抵抗してみようとするのだが。
つい今し方自分自身で、湯に浸かる宣言をしてしまった以上。断り切る事は出来そうにない。

――いや、きっと。言葉はあくまで二の次だ。
その瞳に囚われ、毒気、瘴気、そんな物を感じてしまえば…無自覚に。
胎の底が疼くのだ。もしかすれば、彼女に因って刻み込まれた某が。

だから何だかんだと不平たらたらではあるものの。半ば引っ張られる様にして、浴場迄連れて行かれてしまうに違いない。
端から見れば、腕を引っ張られているような光景かも知れないが。実際の所は、きっとそれ以上に抗い難く。)

マヌエラ > 「孤独の入浴なんて……もう、いじわるです、ティリアさん!
 たった今、ご自分で湯に浸かる、って言ってらしたのに!」

ともすれば、可愛い後輩キャラのように困り顔で言い募る。

「今の姿も、とってもとっても、可愛いですよ、ティリアさん!
 さあ、参りましょう参りましょう!
 大丈夫、私とティリアさんはもうお友達でしょう? 恥ずかしがることなどありませんから!」

きゅ、と手を握る。女の手のひらは官能的なほどに柔らかい。
人間の姿を取ってはいても、発汗し蒸発した体液は魔族のそれに相違なく。
かすかな香気が、ティリアの鼻腔に届き、吸い込まれれば体内を巡る――。

抵抗しているように見えて、できない状態に追い込まれたティリアを、女は言葉通りの親しい友人のように、連れて行ってしまう――。

ティリア > でも、本当に。…プライベートな空間で、然るべきだと思うんだよね。お風呂って…

(引っ張られつつ、尚言い訳めいて。
…そういえば。風呂場とホラーの相性の良さという物は。無防備であるというだけでなく、孤立する場である事にも有るという。
もっとも今回の場合。そんな湯船へと到着してしまうより先の段階で。
謂わば捕食者に見つかり、そして囚われてしまった形ではあるが。)

―――― 、っ、  ぁ…

(もう少し、何か反論したかった筈だ。
だが、直にそんな余裕など、根刮ぎ奪われていく事となる。
微かな、甘い気配を感じた時には。もう遅い。先日は紫煙の中に紛れていたものの、それでも抗い難かった魔の毒が。
今回はより鋭く、それのみに先鋭化されて此方に届き――――

ふらふらと。まるで夢見るような足取りに。見掛けた者はさぞ首を傾げた事だろうが。
これも亦、この宿ではある意味、見掛ける事の出来る光景だ。慾を煽られ、悦を約束され、誰かと共に湯船へと赴く娘達の姿という物は。
ただ、その相手が。人ではないのだというだけで――)

ご案内:「九頭龍の水浴び場」からティリアさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からマヌエラさんが去りました。