2018/12/04 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にカシマールさんが現れました。
■カシマール > 風呂に入れば気が抜ける。誰も居ない大きな風呂はちょっと羽目をはずしたくなる。アタリマエ理論は触手にだって適用範囲なのだろうか。
人気もまばら、どころか、殆ど人も来ないような奥まった箇所にある小さな湯船。
何の変哲も無かったはずの湯船は、今やイソギンチャク風呂とでも言うべき異形と化していた。
湯煙の向こう、湯船の中には触手が無数に浸かり、気持ち良さそうにゆらゆらと揺れている。
その中心で年端もいかぬ少女は、まるでスイッチが切れたかのようにぼお、っと宙を見上げていた―
幾ら触手とはいえ、三ヶ月近く不眠不休の往きて帰りし長旅は疲れる。
ただいまメンテナンス中、人間で言えばうつらうつらとしているようなものだが、刺激があれば即応するだろう。
結果どうなるかは、この空間に迷い込んだ者の反応次第だろうが
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にジーヴァさんが現れました。
■ジーヴァ > 冬の夜はただただ寒く、遺跡探索から戻ったジーヴァをここに向かわせるには十分な理由だった。
遺物が珍しく高く売れたことで普段よりも少しいい飯を食べ、
後は疲れて冷え切った身体を静かに癒すために九頭竜の中を奥へ奥へと進んでいく。
「さーて、ここが一番奥か……ようやくのんびりできるってもんだ」
疲れからか、それとも立ち昇る湯煙のためか湯船の中に浮かぶ触手に気づかないままに
彼は身体を勢いよく湯船の中に沈めた。
直後に感じたのは、何か柔らかなものが全身をつつくような感触。
特殊な風呂であれば但し書きが扉の前に書かれているはずだが、ここにはなかったはず。
「……なんだこりゃ、風呂ってのはみんなこうなのか?」
触手の一本を掴んでつついてみたり、握ってみたり。
さすがに魔物の類とは思わず、宿が用意したサービスの一種かと勘違いしていた。
■カシマール > 外界の情報をシャットダウンしている今であるとはいえ、誰かが入ってきたこと位は分かる。
寝ぼけた頭で触手を戻そうとするが、いかんせん咄嗟の事だったために触手の動きは亀のごとしだった。
そうこうしているうちに、何かが触れる感触があったかと思えば、無用心に握られた感覚が…
「うっ、おああ!?」
色気の欠片も無い悲鳴を上げ、彼の少し前でうつらうつらしていた少女が飛びのく。
その反射的な動きに触手のスイッチが入り、湯気を切り裂き飛沫を散らし、群れ一塊となった触手が少年の手目掛けて踊った。
その腕を肩まで飲み込んでしまおうとするかのように―
■ジーヴァ > 湯煙に隠れて見えなかったものの、真正面から聞こえる悲鳴は女性のもの。
触手と一体化しているという突飛な発想には至らず、単純に特殊な趣味を持った人が
小さな風呂を使っているのかとまたも勘違いする。
「お、おいあんた!いきなり入ったのは俺が悪いけど、
触手仕込むなんざちょっと趣味が悪すぎねえか!?」
触手自体はギルドのアジトで見慣れたものだ。
実験場でよく生えたりちぎれたり分身したりしている。
しかしそれを身体を休める場で見てはいまいち落ち着けるものではなく、
ましてやバシャリと音を立てて塊となった触手が自分の腕に飛びついて来れば、焦りもする。
「うおおおい!俺を食うつもりかこの触手!
くそっ離せ、離せってんだよこの野郎!これどうにかしろよ!」
ぶんぶんと強引に腕を振るが、湯の水面に波紋を立てるだけで
結局肩まで飲み込まれてしまう。そのまま強制的に湯船に肩まで浸からされ、
図らずも最初の目的を果たすことになってしまった。
■カシマール > 元々正体を病的に隠す心算は無いとは言え、あまりおおっぴらにするものでもない。
戻そうとしても彼がやたらめったら腕を振り回すものだから、暴れれば暴れるほど獲物を飲み込んでいく、
触手らしい触手の内部構造であればそのままずぶりん、といってしまうのは当然の事だった。
引き戻すに引き戻せない状況になれば、彼の怒声に呼応するように…
「食べないよ!! っていうか、元はといえばキミが思いっきり掴むから!! 僕のうで…」
と、そこまで声を張り上げてはっと気がついたように口を噤んだ。
自分からばらしてどうするのだ、と気づいた時には後の祭り、この瞬間、触手の頭脳の回転速度は魔術師もかくやというもので…
「うで、うで…う、ウデェン地方名物の触手風呂の邪魔をするから!」
自分でも苦しい言い訳なのは分かっているのだろう。
このまま騒ぎになって、こんな素敵な風呂に立ち入り禁止になるのはゴメンである。
食べる心算は無いといいつつも、腕をすっぽり飲み込んだ触手を放すわけにはいかなくなった
■ジーヴァ > 腕を肩まで飲み込まれたままとはいえ、湯加減は寒い夜にはぴったりの熱さ。
触手の奇妙な感触さえ我慢すれば、心地よいものだと言えるだろう。
「……触手風呂?部屋の入り口にはなんも、書いて、なかったぞ!」
相手の苦しい言い訳を追求するように前のめりになり、
思わず湯船に沈んだ彼女の白く柔らかな身体を間近で見てしまう。
湯気に隠れてところどころが見えない身体は不思議な色気を感じさせ、
少年は頬を瞳のように赤く染めて後ろに仰け反っていく。
「うわっと!……くそ、しょうがねえ。
そっちが上がるまで俺は浸かってるよ。さすがに触手も置いてけぼりにはしないだろ?」
肩まで飲み込んで蠢く触手の中で腕をぐりぐりと動かして
適当に撫でたり掴んだりしながら、じっくりと湯船に浸かる。
しばらく身を委ねてみれば、なかなかこの感触も悪くないのではないかと思えてきた。
■カシマール > 飲み込んだはいいが、このままとはいくまい。さあて、どうしたものか。
だが口が余りよろしくない彼は、随分と優しい性格のようだった。何しろ、何も聞かなかったことにしてくれるし、触手モンスターも見てみぬふりをしてくれるらしい。
顔が赤いのは照れ隠しなのかと勘違いすれば、俯き加減から一転、ばっと顔を上げて彼を見つめる。
多分、その目に隠れた瞳はきらきらと輝いていることだろう。
「大丈夫! 大丈夫! ちゃんと持ってくから! 一本も残さないから!」
あまり暴れなければ、触手から腕を引っこ抜く事も容易だった。
遠慮なく引っこ抜き、湯船の下から自分の身体に戻す。触手は去ったが、仰け反った分、本体は彼の方に接近していく。
湯船の中であれば、這うようにしてだ。
「キミは優しいね、問答無用で攻撃されても可笑しくなかったのにさ。ん、で…ん~…キミ、魔力の匂いが凄く濃いけど、ひょっとしてすごい魔術師さんかい?」
獲物を嗅ぎわける嗅覚は触手ならではである。
全く遠慮なく顔を近づけると、もみあげの近く、囁くような位置でふんふんと鼻を鳴らしながら…