2023/07/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にヴァーゲストさんが現れました。
ヴァーゲスト > 今日が昨日になり、明日が今日になる、そんな時間に酒が球の見たくなってフラリと平民地区を歩く。

顔見知りの店など腐るほどある。
目星をつけている店も山ほどある。
――が、眼に飛び込んできた店にふらりと入る。

それがまた酒飲みの楽しみでもある。

「普通の酒と普通のつまみが食えればいい。
 可愛いねえちゃんか客でもいれば最高だがね?」

誰に言うでもなく独り言を零し、平民地区にある1件の酒場の扉をくぐる、期待などしていないけども独り言どおり面白いモノがねぇかなーと少しはほんの少しは矢張り期待してしまう。

生まれつきに加えて人生経験とやらで険しい顔立ちだが、喉が渇いているだけで機嫌は悪くない、にんまりと表情を緩めながら、ギシリと床板を踏みしめてズカズカと店の隅のテーブル席に足を進めると、給仕が案内をする前に勝手にその咳の椅子を引いてドカッと腰をかけるのだった。

ぐるりと店内を眺めるようにめぐらせた隻眼に映る店内の様子は中の中、或いは中の下か、悪くは無いが普通よりはちょっと汚い狭い薄暗いの三拍子。

――まあ給仕の質はどうだろうか?と一先ず給仕が来るまで席に座りっぱなしでその時を待つ、案内される前に座ってしまったが流石にだからと言って給仕がこないとか、ないよな?と軽く不安を抱えつつである。

ヴァーゲスト > ――結果から言うとハズレであった。
何がハズレか?って普通すぎた面白みが無い程に普通。
出てくる酒もツマミも美味からずマズからず。
あまりに普通すぎて途中で頭を抱えたが、これはこれで価値があるのだろうと結論付けて、普通に金を支払い普通に店を出る。

「………ここまで普通ってありえるか普通……。」

普通だった。
表情だけが複雑に笑みを浮べていいのか怒っていいのか、戸惑いに近しい表情となり、その表情のまま次なる店を目指す。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からヴァーゲストさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/広場」にラディアス/ルディウスさんが現れました。
ラディアス/ルディウス > 平民地区の広場の一つ。
噴水が目印で、安息日故か幼子や子供と一緒の家族連れが多い。

そんな中でもやはり目立つのは、鏡映しにしたような同じ顔に同じ容姿を持つ双子の冒険者。
何も知らない無垢な子供がじいっと見てくれば、兄のラディアスがにこやかに手を振っている。弟のルディウスも軽く微笑みかけるだけ。
やたらに見目のいい双子なので、事情を知らない女性陣の視線も集めがちである。
冒険者の間でも通っているコクマー・ラジエル学院でも、この双子に関しては好い噂より悪い噂の方が多い。
とくに女癖がとても悪い。
知っている者はあまり多くはないだろうけれど、半分は淫魔の血が入っている。
が、故に好色なので、女性をナンパしては人気のない所に連れ込み、双子が揃って毒牙に掛ける。
その被害にあった女は数知れず、という程に。

「はー……あっちぃ。相変わらずやべー気温」
「果実水でも買いますか?」

冒険者として活動してるわけでもなく、ただふらりと街を歩いている。
富裕地区では堅苦しいので、平民地区まで下りてきて、こうしてあてもなく散策しているだけ。
屋台で打っている果実水を購入し、ぬるいそれを呷る。
暇潰しに話せる相手がいればいいし、可愛い子ならナンパするし。
そんな感じで、暇を持て余した双子は目立ちながらも広場を練り歩いていた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2/広場」にシシィさんが現れました。
シシィ > 季節がうつろい、ここ数日はもう夏といっていい熱気に王都は包まれていた。
昼間の陽射しは強く、貴婦人などは帽子や日傘が手放せない状況。
平民地区でも陽射しを遮る日よけの天幕が張られて、その下にテーブルセットなどが設えられている。
広場の噴水傍には、少しでも涼を求めた人々が集い、あるいは露店の売り物も、果実水や、少々根は張るものの氷菓などが多く売り出されていた。

にぎやかさだけは変わらない、その広場。人並の中を歩いていると、さわりと人々の視線を引き付けるものがあるようだ。
殊に女性が見とれたように視線を移すのに気が付いて、そぞろ歩きに露店の品物を眺めていた目線を何の気なしに流す。

彼女たちの視線の先には、冒険者然とした装いの若者が二人。
すっきりしたいでたちと、その風貌は確かに女性の目線を惹きつけるには十分だろう。
己と似た褐色の肌は、エキゾチックな雰囲気を魅力として添えている。

己も含め、彼らの実態を知るものが少ないのであれば目を惹くのは当然だ。
知り合いであっても……そのいでたちはやはり目が向かうとは思うけれど。

女としては彼らの装束の仕立ての良さが少々目について、その姿通りの身分ではなさそう?とわずかな違和感を得た模様。
ただ、果実水をあおる姿は、広場に集った人々の姿とそう大差ない。
そっと失礼にならない程度の視線を向けたのちは静かにそれを外して。己も何か……冷やした果実の切り売りの露店でもないかと視線を巡らせなおした。

ラディアス/ルディウス > ────向けられる視線の中で条件を色々と除外していく。
二人連れ以下。男がいるのは✕。家族連れも✕。出来れば単体、一人行動をしている、見目のいい若い女。
条件は最初に狭めてから、徐々に広げていく。
候補に挙がった女性たちの中で、何だかんだこの顔に引っかかってくれそうな。
などと手籠めにするのにちょうどよさそうな女性を探す双子の視線が、一人の女性に留まる。

「おっ」
「ふむ」

視線を向け、そして静かに反らした褐色肌の小柄な女性。
陽光に輝く、長く涼やかな銀糸の髪。ノースリーブのワンピース一枚から見て取れる均整の取れたボディライン。
双子の視線を惹き付けるに十分な美しい女性を獲物と定めたか、双子の視線が交わり、ほぼ同時に動き出して彼女の下へと近づいていく。
何かを探すように周囲を見ている彼女に影が二つ重なる。
そこまで近づけば、気づきもするだろうか。
そこそこの身長差、彼女の慧眼の通り上質な生地と素材で出来た装備をつけた双子の冒険者の金の目が、にこやかに向けられている。
若く、小柄ながら恐らくは年上であろう女性に、ラディアスとルディウスがそれぞれ声をかける。

「こんにちは、お姉さん。いやぁあっついねえ、お姉さん一人?」
「突然お声がけして驚かせてしまったらすみません。素敵な御髪やお召し物が映える美肌に、勝手ながら親近感を抱いてしまいまして」
「良かったら美味い屋台案内するよ。ちょっと俺らとお話しない?」

そんな風に最初は気さくに、どこか貴族の雰囲気を思わせる所作を見せながら、様子を伺う。

シシィ > 彼らがこの広場をいわゆる狩場として視線を巡らせていたと知っていたら──そんな悠長に長居はしていなかったかもしれない。
とはいえこうして賑やかな場所に身を置くのもある種仕事の内、季節柄の露店も流行り廃りはあるもので、去年とはやはり違った露店も多い。
定番の露店は変わらない店構えでそこにあるが、場所が微妙に変わっていたり、昨今の戦の影響で値段の調整が入っている。
そんな微細な変化を確認しつつ、己の商機として取り入れる方法を模索するのも仕事だから────とはいえ。

「………は、い?」

己にかかった影が二人分。
先ほど視線を向けた美麗な──おそらくは血のつながりがあるのだろうそっくりな顔立ちが並んでいるのに少々面食らった声が上がる。
ついでにかけられた声音も二人分。

間近で認めたら、やはりその装束の仕立ては並の冒険者が手に入れうるようなものでもなく。
青年の仕草はどこか優美さを見せ、見たままの身分ではないことをあえて知らせるような雰囲気だ。

気さく、朗らか。そんな感想を抱きたくなる声音が競うように響くのにわずかにたじろぐ。
一歩後ずさって、少し己を落ち着けるように目を伏せた。

「……ええ、暑いですね。────」

答える間を埋めるように言葉が降りてくる。肌に対して似たような感想を抱いていたのには少し和んだのだけれど。
相手の空気に飲まれないように、一度呼気を吸い込み。

「確かに少々驚きました。でも……お褒め頂いてありがとうございます、お二人はご兄弟なのですか?」

似た顔立ち、声音がそろうのに己の疑問を向ける。
誘い言葉に若干の躊躇いを感じるのは、いかにも良家の子息、といった体の二人への僅かの警戒を抱いたからだ、が。
……街中でならそこまでひどいことにもならないか、という治安への信頼は一応あった。

「……そうですね、おすすめの屋台があるのでしたら教えていただけると?」

───こういった若者がきになる露店の情報がきになったのもほんの少し。

ラディアス/ルディウス > 多少なりとも警戒の色があれども、どうやら双子の噂を知らぬ界隈の人種らしい。
興味深そうに屋台をチェックしている視線はどれを買おうか悩んでいるというよりも、商人の視察に近いものを感じた。
覗く肌、とくに腕の肉質から見ただけでも戦場に身を置くタイプではなさそうだ。
声を掛け、とりあえず話に応じてくれる様子に、双子は揃いの顔に笑みを浮かべている。

「そうそう、双子。俺はラディアスで、こっちがルディウス。ラディとルディでいいぜ」
「お姉さん、貴女のお名前もお伺いしても?」

警戒心を解すように努めて人懐こい笑みで親しみやすさを見せるラディアスと、あくまで丁寧な物腰のルディウス。
自己紹介をしながら、躊躇いを見せながらも誘いに乗った女性に、素早く息のあった動きで双子が彼女の左右に位置取り、挟むようにして立つ。
どうぞお手を、とルディウスが差し出すのは女性をエスコートする為の手。

「よっしゃ、任せろって。そうだなあ、今俺ら果実水飲んでたんだけど、やっぱ暑さでぬるくなってるから」
「どうせなら冷たいものの方がいいですね。例えばあの屋台とかは冷凍魔導箱を使っているので────」

と、話をしながら屋台の方へと彼女をエスコートしよう。
いくつか並ぶ屋台の中から、冷凍魔導箱で冷やして美味しいオレンジやレモン、白ブドウに青ブドウ、桃などを細かく一口サイズにして、ナタデココ一緒にと甘いシロップをかけた冷やし果実を売っている店を指す。
若い子供や女性に人気の店で、だいぶ繁盛している様子。

「おじさん、三つねー」

とラディアスが注文し、ルディウスが三人分を支払う。
量自体もそう多くはないが、小さな器で三つ出された内の一つを、彼女へと手渡そう。

シシィ > こちらが相手を判断するように、相手が向ける眼差しにも気づいてはいるが、それについては何も言わない。
彼の予想通りに己は戦場に出る人間ではないのは、肉付きや、体の動かし方からも知れるだろう。
ゆったりとした詰襟のノースリーブのワンピースは、華美というわけでもなく、大っぴらに社交に足を踏み入れる立場の人間でないことも彼らにとってはすぐに知れることだ。

向けられた笑みに応じるように柔らかい笑みを返すあたりは、商人らしさをのぞかせはする。

「ラディ…様と、ルディ様、ですね。……失礼、私はシシィと申します。」

相手への尊称は習い性というか、身にしみついた職業病のようなもの。名を問われると軽く頭を下げて己の名を返した。
顔立ちは似ているが、態度は好対照。それを意図してやっているかどうかを判断できるほど親しくはないが、おそらくは素の性格もあるのだろう。
自然な動きで左右から挟まれるのにはさすがに戸惑ったものの、エスコートとして差し出された手にそっと己の手を重ねた。

「近頃は冷凍魔法のバリエーションや保存技術も上がりましたしね」

魔導技術の進歩の分かりやすいものはこういったところで垣間見えるか。
より鮮度を保ったままの保存。あるいは温かいものを温かいまま、冷たいものを冷たいまま──庶民の層までその技術が届いて花開くものもある。
例えば彼らが案内してくれる屋台だとかはその最たるものだろう。

見た目も、味わいも涼やかで美味しい。
色とりどりの果物は目にも美しいから人気のお店なのは間違いがなかった。
…手馴れすぎた動きで己の分を支払う隙がなかったのに若干双眸を瞬かせたが、まあ、別れ際にその分はきちんと渡そうと心に決めた。
渡される容器を素直に受け取り、その冷たさに心地よさそうに薄い色の双眸を細め。

「ありがとうございます。──器を持つだけでも冷たくて、気持ちいいですね」

カットされたフルーツとナタデココ。その形もかわいらしくて目に楽しいのが、いいな、と思いながら

ラディアス/ルディウス > 「シシィさんね。名前まできれーな響きじゃん」
「様付けなど不要ですが……そちらで慣れているのであれば無理強いは致しません」

彼女の名が知れれば双子はそれぞれ似たような笑みを返すが、割と悪手であったかもしれない。
なにせ悪い噂が多い双子、貴族に名を連ねるからにはそれなりに情報網は広く持ち、それを悪辣な手段で用いることも辞さない。
今はまだ情報はないが、しばらく日が空けば彼女の存在を丸ごと見透かしたような情報が手に入ってくるだろう。

重ねられた手は女性らしく小さく細く、対照的に彼女の手には大きくごつごつとした男特有の感触が伝えられるか。
それでも荒れているわけでもなく、爪までよく磨かれている貴族子息らしい手。
商人のような一面をのぞかせる笑みや反応、言葉選びに頷きながらエスコートした屋台で、三人分のものを購入した後は、屋台から少し離れるようまた彼女を人の動線にぶつからないように日差しを遮る天幕がかけられた場所へとエスコートしていく。

「だよなー。最近出店してきたけど夏季限定でやってるらしくて、あっという間に広場の一番いいとこ取ってる新進気鋭の店だってさ。フルーツなら甘すぎないし俺らも好きだわ」
「さあどうぞ。掛けて召し上がってくださいね」

広場の飲食スペースであるラウンドテーブルにハンカチを敷いて彼女を誘導する。
その警戒心を緩めるように、双子は自らのことを良く話しただろう。
コクマー・ラジエル学院に通う学生であること。
実家は爵位があるけれど妾の子なので自由にさせてもらっていること。
今は実家ではなく双子だけで平民地区に部屋を借りてること。
冒険者登録をして三年、そこそこに稼げていることなど。
自慢話も悲観話もなく、ただ自分たちのことを知ってもらいたい、なんて雰囲気で話している。
勿論、女性を狙って毒牙に掛ける、なんてことは隠しているけれど。

「てな感じで、俺ら色んな人と知り合うのが好きでさあ。とくにきれーなお姉さんとかだとテンション上がるし。シシィさんのことも知って、もっと仲良くなりてえなあって」
「ええ。シシィさんがどんなお仕事をされているのかとか、冒険に役立ちそうなこと、今後為になりそうなお話などもあれば是非」

冷やしたフルーツを口に運び、今度は彼女の話を、と期待するような金の目が二対、その涼し気な瞳へと向けられる。

シシィ > 「お上手ですね。───ええ、……習い性のようなものですから、ご不快でなければそう呼ばせていただけると?」

己の言葉遣いへの言葉に幽かに困ったように眉じりを下げる。
さすがに年下風で平民風を装っている相手に対してまで堅い口調ではなかったが……名前の呼び方自体は平素の通り。
拒まれなければそのまま呼ばせてもらうつもりの返答を返し。

彼らがその気になれば、語るほどのこともないありきたりな女の来歴などは名前一つからいかようにも手繰ることはできるだろう。
それをどう思うかは───あるいはそうすることさえ、彼らの気持ち一つのことではあるのだけれど。
少なくとも商いをしている己にとっては不利にも有利にも働くような状況ではあるのだろう。

重ねた手は思ったよりもきちんと鍛錬を重ねているそれだった。
堅い掌は、武器を取るものの手だ。優美な風貌ながらもきちんと努力はされているのだな、と……実態を知らない以上は好印象を与える要素。
反面手入れもよくされているようで、爪の先まで艶が備わっている。決して労働者の手ではない。

連れだって訪った屋台から移動する間も他愛のない会話が続く。
エスコートの巧みさは貴族らしさがより覗いて。
意識せずとも人波から離れるように誘導されて、誰かにぶつかることを気にする必要はなかった。

「去年までは冷やし果実といってもここまで華やかなものはなかったと思うのですが……。こう言った形の方が食べやすいですし、男性も女性も気に入りそうですね」

目新しさは当然のこととして、食べやすさも結構重要。
殊に若い男女のペアにとってはこう言ったものを仲良く口にするのも楽しみの一つなのか──集う人々の年齢層も少し若いものが多い気がした。
エスコートの完成形として、座るスペースにハンカチまで敷かれることにさすがにちょっと躊躇はしたものの、礼を告げてその上に腰を下ろした。
座って落ち着ける日陰、というのは、夏の熱気の中にあってはそれだけでほっとするものなのだなと改めて実感する。
砂漠の暮らしから離れて久しいが、それでも、あの場所の熱気と、王都の熱気は種類が違うと思いながら。

そのあとは、フルーツを口にしながら、語られる二人のこと。
互い違いに、お互いを捕捉しあうように語られる言葉は聞きやすく。
時に笑い声を素直に零した。

──その目的のことまでは知らないままながらも、瑞々しい二人の様子は好ましいものに思え、問いかけに対してもだから割合素直に頷いた。

「とはいえ、お二人の様な出身でもございませんが──」

一つ断りをいれて。
王国外の出身であること。一族が絶え、……王都にやってきたこと。
とある老商人のもとで働き口を得、その補佐として学んだこと。
彼の死後はそのあとを引き継いで──小さいながらも商いを続けていること、など。
言葉にしても問題のない、当り障りのない範疇の言葉を返す。
好奇心に煌めく眼差しに少したじろぎつつも、これでいかがでしょうか、と首を傾けてみせる。

──彼らが彼らの目的を口にしなかったように、こちらも知られると少々都合の悪いこと──奴隷出身である、などは口にしなかったのだが。

ラディアス/ルディウス > この双子も、様呼びされているのは慣れている。
彼女のように美しい相手であるなら尚の事、そう呼ばれることに忌避感もなければむず痒いと感じるものもない。
そうして三人で日当たりの良い場所を避けて日陰のテーブルに腰を掛ける。
周囲にはまだたくさんの人がいる。ここで何かを起こせば治安維持をする衛兵がすっ飛んでくるだろう。
だからこそ慎重に。
商人であると語った彼女のその審美眼に違和感を持たせないような雰囲気と空気、流れを選ぶ。
急がば回れと言うように、ご馳走を喰らう時にはたまには遠回りも必要だ。
こうして双子の身分や人となりを語り。
彼女の反応が好印象であることを確認し。
彼女の人となりを知る為に、興味深々と言った様子で年上の姉にでも懐くような幼さも若干覗かせて。

「そっかあ、シシィさんも大変だったねえ」
「お一人で商売とは、ご立派です」

名前、異国からやってきた独り身、店を継いだ商人。
まだ何かを隠して、というよりは、語っていない部分もあるだろうけれど。
そこまで情報を得られれば、双子にとっては十分だった。
話しを聞く間に椅子を寄せ、近付いて。傍から見ればそれは十分恋人に近しい距離にまで寄っていただろう。

「しかしそっか、商人かぁ。そうだシシィさん、ダンジョン産の素材とかって興味ない?」
「俺達はあちこちしょっちゅう出かけて、ダンジョンにもよく入るのですが、武器から装身具など、ダンジョンで特殊な効果が付与されたものを見つけるんです」
「俺らそういうの詳しくないからさっさと金に変えちゃうんだけど、まだいくつか持ってるからさ」

そう言って空間魔法が付与された鞄から取り出すのは夜空の満開の星を詰め込んだように煌めく夜色の液体。
商人である彼女の鑑定眼があれば、それは希少な錬金素材だとわかるだろう。
好事家や魔導技術士、魔術師錬金術師などに売れば平民が三ヶ月は暮らせるだけの金に代わる代物だ。
こういうのに興味はある?というように、双子の視線が彼女へと向けられる。

「良ければ溜め込んだものとか見て、欲しいものがあればシシィさんとこに売りたいなーって思ってんだけど、どうかな?」

商人として目先の宝にどう反応するか、様子を伺う。
食いつくならそのまま塒まで連れていくが、警戒して釣り針を避けるならばまたじっくりと、時間をかけるだけ。

シシィ > 年若い彼らは、その生い立ちゆえか、巧みな話術と、こちらに好奇心を持っていると身振りで伝えるのが得意なようだ。
かといってそれが嫌かといえばそうではなく、会話しやすいのは確か。
なんとなく気が向くままに同席し、言葉を交わしているという現状を楽しくも思いながら。

かいつまんで互いのことを話すころにはずいぶんと距離が近くなっていた。
人好きのする態度だからそういうものなのか、と思っていたし、場所が場所なのもあってさほどそこに引っかかりを覚えはしなかったが
褒めそやす言葉には軽く肩をすぼめて、顎を引いた。

「もともと基盤があるところを引き継いだのでそこまで──は」

少し照れたように目を伏せ応じる。
けれど己の生業が故に上がった言葉に視線を上げる。
当然もののやり取りで生計を立てている以上は素材についても興味がないわけがない。
ただ己が手に入れようと思ったら、ギルドなどに依頼を出して、その結果を待たねばならないのだが───。

「────なるほど?」

もっともらしく響く言葉。けれど彼らがどれほどの実力かは知らないが実際ダンジョンに赴いているとは先ほど聞いたばかりだったし。
取り出された瓶詰の液体を見せられると、わずかに目を瞠った。
その反応で己がそれを知らないわけではない、というのは十分伝わっているのだろうけれど。
しばらくそれを見つめて、それから、ほう、と満足そうに溜息をつく。

「興味がないわけではないですが───。そうですね、学園と提携しているギルド経由でか、あるいは学園の魔導関係の機関に卸す方が適正価格で買い取っていただけるでしょう」

己が提示できるのはそこと同額か、少々下がる買値だと素直に告げる。
素材として上物過ぎるがゆえに、それを手に入れようとする存在の伝手をつかむ方が難しいのだと言葉を紡いだ。
そういった存在はすでにきちんとした機関に依頼を出しているか、あるいは大手の機関になるから抱えの冒険者もいる、と。

「……ですがお二人の実力の確かさを見せていただいた気分です。優秀なのですね」

年上ぶるつもりはないが、それでも年若い二人がそれを手にするのは大変でしょうに、と素直な賞賛の言葉。
だから続く言葉には少々迷ったが、頷く。眠っている宝の行方を示すことくらいはできるかもしれないし……それにだ。
あまり目にする機会のない素材に、じかに触れられるのは己にとっても勉強になる。
様子をうかがうような眼差しによろしければ、と水を向ける。それが───罠、というのには気づかないまま。

ラディアス/ルディウス > 人目を惹く顔立ちで笑顔を浮かべながら、自分たちは貴女に興味があります、という様子を隠すことなく伝えていく。
それを受け止めて嫌がる素振りもなければ、楽しんで受け入れて貰っている現状。
彼女の足元に拡げた網は十分に、獲物を捕らえる下準備を整えただろう。
元々然程多くはない量だった冷やしフルーツも食べ終える頃合い。
素材を見せて、それで興味を惹きつけ、それを知っていると言う様子の反応が見られれば十分。

「あーそっか、シシィさんがそういうなら間違いねーな」
「お褒めの言葉を頂き光栄です」

素直な称賛の言葉を向けられれば、双子は嬉しそうに同じ顔で微笑んで返す。
彼女が欲しがるとすれば、平民にも売れそうなものだろうか。あるいは提携してる職人に喜ばれそうなものか。
なんにせよ、此方の誘いに上手く乗ってくれた彼女の返答に、双子の金の目が楽し気に光る。

「マジ? やったぜ、シシィさんが見てくれたら一気に片付きそうで助かる!」
「ええ、とくにラディはよく散らかすので、どうか𠮟ってやってください」

そうして席を立てば、ラディアスがさっさと器を屋台に返しに行き、ルディウスが手を差し伸べて再びのエスコート。
連れていく先は双子の塒だ。
罠であることに気付かないまま釣れた獲物を左右から挟み込んで、あくまでも紳士的に一人の女性をエスコートしていく。
その先で彼女を待つのは、羞恥と快楽のフルコースだ──。

ラディアス/ルディウス > 【移動】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/広場」からラディアス/ルディウスさんが去りました。
シシィ > 【移動いたします】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/広場」からシシィさんが去りました。