2023/07/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にダヴィデさんが現れました。
ダヴィデ > 多種多様な種族が行き交う王都の平民地区。
露天商が多く屋台を並べるエリアの一角に男が出す店があった。
飾り気もない立て掛け台に並ぶ剣や槍、斧。
木箱の上に布を敷いただけのそこには日用的に使えるナイフやダガー、包丁。
日光除けに頭上に布をひっ掛けただけの露店で、仏頂面の髭面が樽の上に腰掛けている。
その手には砥石、それで刃渡りの短いナイフを擦っている音がする。
とくに客を呼び込むでもなく、勝手に見てけ、と言わんばかりの態度である。
並ぶ武器の質は十分良い。
飾り気のない無骨な実用性を重んじたものばかりだが、実戦で使うには十分な代物ばかりだ。

「…………」

店主の姿はドワーフだ。ずんぐりむっくりとした小柄ながらハンマーを振るって鍛えた筋肉質な腕は太い。
尖った鼻に、口元の髭が目立つ特徴的な姿だ。
研ぎ終わったナイフを驚くほど器用にくるくる手の中で回して、グリップを握り、シュッと音もなく振るう。
十分と判断したそれを、木箱の上に置いて、分厚い木の板に値段を削り入れ、そのナイフの前に置いた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にヴェルソートさんが現れました。
ヴェルソート > 平民地区の露店通り、コートの片腕をひらひら揺らして歩く男はぶらぶらと、目に入った商品を眺めては他の店に、を繰り返す。
別段欲しいものがあるわけでもなく、何か良い物があれば買おうかなぁ、程度の気概でうろつき、なんなら人が多いところで歌でも披露して小遣い稼ぎでもしようか、なんて腹積もりで。

そんな男が通りかかったのは、飾り気も素っ気もない、小さな露店、通り過ぎようと思ったがふと、脚を止めれば…ふわりとどこか甘みのある香りが周囲に。
じぃ…と眺めるのは、先ほど研ぎ終わったらしいナイフと、包丁。

「……いいな、これ。」

飾り気もない無骨な作りが、普段使いに飾り気を求める気もなく、隻腕ならなおさら、切れ味が良い方が助かるのだ。
ただ、問題は……慣れた手つきで片手で財布を手に取り開けばすぐわかる。

「……んぐぅ。」

手持ちが足りないのだ。財布の中身は包丁かナイフ、どっちかなら買えるよ、といった具合の温かさで…甘やかな歌唄いのテノールが、搾りだしたようなうめき声をあげた。

ダヴィデ > くぁ、と欠伸をしながら床に置いていた丸い形をした酒瓶を手に取ってギュポッ、と蓋を開ける。
紐部分を取っ手代わりにぐびぐびと軽く煽れば、強い酒精が喉を焼く。
営業中でも酒を飲む。酒で酔っぱらうことなんて殆どない酒豪なのだ。
酒の匂いとは別に甘ったるい熟した果実みたいな匂いがして眉をひそめた。
その匂いの原因らしき隻腕の男が、品を見ながら唸ってる。

「なんでえ手前、金が足んねえのか」

頭から見える部分をじろじろと見てから、瓶に蓋をしてまた床に置く。
財布を確認するからには購入のつもりはあるんだろうが、その手持ちがないというところか。
ドワーフはもじゃもじゃと生えた錆色の髭を撫でながら、どうすんだ、というように客である男を見る。

ヴェルソート > 見るからにドワーフといった感じの店主が、店番中におもむろに酒を手に取り飲みだしても、別に咎めるつもりはない。
まだ何か買ったわけでもないし、そもそもドワーフはそういう生き物だ。
それはそれで偏見かもしれないが、少なくとも今は、目の前の財布の中身と欲しいものの差に唸る事の方が重要で。

片方の袖をひらつかせた、総体的に見れば中肉中背といった隻腕の男、羽織ったコートのシャツは腰や肩に対して胸元の厚みが微妙に合わないのか、ボタンの上が一つ二つ外してあって、香水か体臭か、確かに甘ったるい匂いは男からしているものだ。

「あー…ちょっと、な…これとこれが欲しいんだけど…一本分なら…んぐぅ。」
まぁ、無い袖は振れないのだ…ナイフと包丁、どっちかをあきらめるしか無いだろうが…それならどっちをあきらめるか、クシャクシャと癖のある榛色の髪をかき混ぜながら、店前でウンウンと唸っている。

ダヴィデ > 「金がなきゃ金になるモンでも構いやしねえさ。値の張るモンくらい持ってねえのかい」

男がうんうんと唸り悩んでいるのは今しがた研いだばかりのナイフと、包丁だ。
包丁にも色々と種類がある。肉切り包丁、パン切り包丁、万能包丁。
形状も違えば用途も違う。重さも鋭さもバラバラだ。
どれも十分上質な仕上がりではある。悩むぐらい気に入ってくれたんなら作った甲斐もあるってものだ。
顔にも言葉にも出さないが。

「にしたって、手前その片腕で料理とかすんのかい」

袖の部分に腕がない様子を見れば何かしらの事情で腕一本どっかやっちまったんだろう。
それで料理なんて出来るのかと怪訝そうな顔をしながら、男が見ている包丁を手に取り以て見せる。

ヴェルソート > 「仕事道具は流石に売れねぇし、それこそ声と体ぐれぇだよ俺が売れるのは。…客寄せに一曲歌うとか?」
ナイフと包丁…用途で使い分ける程料理に凝っているわけではないので、一般的な万能包丁を見て悩まし気にしながらも、かけられた声には苦笑いと共に言葉を返して…思いついたように提案一つ。
仕事道具の言葉と共に、腰に差した指揮棒にちらりと視線を移すのは、それが魔法の品だからか、確かに値は張る代物だが、流石に包丁欲しさに手放しては仕事ができない。

「あー、まぁしょっちゅうじゃねぇけど、たまにな。」
怪訝そうに尋ねられると、彼が手に取った包丁を視線で追いながら、頻度はまちまちであるが是を返す。
物理的に手が足りない時は魔法を使ったりもするが、切る焼く茹でるくらいなら、隻腕でも結構なんとかなるものだ、切れ味の良い刃物と、ちゃんとした平たい台があれば。まあ、人の倍くらい手間はかかってしまうけれど。

ダヴィデ > 「なんでえ花売りの歌手かなんかか?
 別に客にゃ困ってねえが、自信があんなら歌ってみな。気にいりゃ一本分の代金で二本売ってやらァ」

たまに料理する程度ではあるが質のいい包丁が欲しいってんならドワーフに彼是言うつもりはない。
客が買ったモンで何をしようが客の自由だ。
樽の上で脚を組んで、男にやってみなと促す。
人通りも薄くなってきたし、声に釣られてきた客が覗いてって武器の一本でも買ってきゃ、割り引いてやるぐらいの貢献にはなるだろう。
そういった判断が出来るのも個人の露店だからだ。
酒瓶を脚に乗せて、どれ聴いてやろうという姿勢で酒を煽る。

ヴェルソート > 「ご名答。まぁどっちが本業かと聞かれると困っちまうがね。……お、言ったな?」
そう言われるとうず、と芽生える対抗心。二本とも受け取ってくださいと言わせるつもりで歌ってやろうじゃないかと…店の脇に立って息を整えながら、腰の指揮棒を引き抜いて。

軽く振ると、どこからかドン、と太鼓の音がして、周囲の人間がこちらに視線を向けた。

「さぁさ皆さんお立合い、これより唄いますは鍛冶屋の一節、良ければご清聴の程を…お気に召したら、店を覗いてくだされば幸いです。」
そう言って軽く頭を垂れれば…すぅ、と息を吸い込んで。
指揮棒を揺らせば、弾むようなテンポで、どこからか響く笛や太鼓の音がメロディを奏ではじめる。

『暫時(しばし)も止まずに 槌打つ響
 飛び散る火の花 はしる湯玉
 鞴(ふいご)の風さへ 息をもつがず
 仕事に精出す 村の鍛冶屋 ~♪』

それに合わせて紡ぎ出される…磨き上げ、雄を誘う呪いの後押しがあるとはいえ魅了の域まで磨きあげた甘やかなテノール。
幻影の楽奏に混ざるトライアングルが、まるで槌を振り下ろした音に似て。

『あるじは名高き いつこく老爺(おやぢ)
 早起き早寝の 病(やまい)知らず
 鐵より堅しと 誇れる腕に
 勝りて堅きは 彼が心 ~♪』

爪先でリズムを刻みながら歌い上げるそれは、「村の鍛冶屋」と呼ばれる鍛冶師を唄ったわらべ歌。
それは、子供の視線から見た、鍛冶を打つ老爺の姿を、想起させて。

ダヴィデ > 客を呼び込む商人たちの声、行き交う人々の会話、足音、雑多な喧騒。
そんな中に不意に響いた打楽器の音。雷でも落ちたのかというような腹に響く音だ。
そんな音が一体何処から出てきたのかと誰もが音のした方を見るだろう。
指揮棒を手に持つ男が高らかに告げて、頭を垂れ、その指揮棒を振り始めれば楽器などないのに複数の楽器の音がメロディを奏でる。

「ほお」

観客の一人でもあるドワーフも物珍し気にしながら顎鬚を撫でた。
誰が聞いても耳心地が良いだろう男の歌声。
声の良しあしなど分からぬドワーフではあるが、酒を飲みながら陽気に歌うことを好む種族だ。
それが鍛冶に纏わる歌だとわかれば、好々爺のように緑の目が弧を描いて酒を煽る。
いつの間にか脚を留めて歌を聴いていた者達も似たような想起をしたか、興味を持ったように小さな露店を覗いていく。
買うか買わないかは客の目利きと懐具合だが、客引きは見事な腕だ。

「いい歌じゃねえか。即興かい?
 こりゃ、俺様も約束を守らねえと鍛冶師の名が廃るってモンだ」

ナイフと万能包丁を手に取り、ナイフの方は革製の紐がついた鞘に入れ、万能包丁は布に包んで紐で縛る。
二本まとめて、木箱の上で男の方へと差し出して、一本分の代金を告げよう。

ヴェルソート > 『稼ぐにおひつく 貧乏なくて
 名物鍛冶屋は 日日に繁昌
 あたりに類なき 仕事のほまれ
 槌うつ響に まして高し ♪』

最後の一節まで歌い上げて…最後に指揮棒を振り下ろせば、ジャンッ!と幕切れを伝えるように幻影の楽器達が一鳴らしして、音が消える。
ゆっくりと頭を下げれば…音に惹かれて露店を覗いたものから拍手がパチパチと…人によっては他の露店からも喝采が。

「ふぅ…いんや、地方の農村に伝わってるわらべ詩って奴だよ。
 農具を休まず打ってくれる村の鍛冶屋を称える歌なんだと。」
問いかけられれば見栄を張らず聞いた歌だと答え、どうやらお目に敵ったらしいのが分かればニンマリと、歌い上げて朱の差した頬に笑みを浮かべる。

「ちぇ、二本分にはならなかったか、なんてな……ありがとさん。」
軽口交じりに商品を受け取り、一本分の代金を支払い、袋は腰から下げた荷物袋に詰めて。
…上がった体温を下げるように空いた手でパタパタと顔を扇ぐ。

「ふ、ぅ……気持ちよく歌うと体が火照っちまっていけねぇや。……旦那、歌のついでに花も買おうって気はねぇかい?」
良い買い物ができて、歌を披露できてほくほく気分の男は…趣味と実益を兼ねて、笑顔でドワーフの彼に尋ねるか。

ダヴィデ > 「へえ。いい歌じゃねえか。俺あ色んなとこ点々としとるが、初めて聴く歌だ」

旅の合間に酒と女と歌を楽しむ。
また色んなとこに旅に出たくなるじゃねえかとガラガラ声で笑う。
渡したものをしまう中、他の客の対応もする。
小回りの利くナイフはやはり必需品のようで、男と同じく実用性があるものから売れていく。

「手前も商売人なら、タダ売りなんてしねえだろが」

にやりと笑って軽口を返しつつ、この露店の並ぶ中で人が人を呼んで、次々と覗く客が増えていく。
ついでに花も買う気はないかと言われれば視線を向け、頭から足先まで見やり。

「でけえ胸にでけえケツ。身体は悪くはねえが、手前なんか変な呪い持ちだろ?
 悪いがそういう奴とヤっていい思い出がねえのさ」

ドワーフの"目利き"。
人にどれだけ通ずるかはわからないが、普通の所作をしているだけなのに雄の劣情を煽るような何かがある。
そういうのに引っ掛かって碌な事にゃならん。
そもこのドワーフはかなりのサディストだ。振り回すのはいいが振り回されんのは好きじゃあない。
歌声といい人を惹き付ける魅力のある声といい、安い男娼ってわけでもないだろう。
ぱっぱと手を振って「毎度あり、また必要なモンがあるなら来な」と話を区切る。
その後しばらくは男が呼んだ客を相手にしていただろう──。

ヴェルソート > 「お褒めにあずかり恐悦至極…まぁ、これでもそこそこ人気なもんでね。」
笑う男にクツリと喉を鳴らすように笑って言葉を返し、売れていく品に良い仕事した気になってふす、と少し自慢げに。

「あー…まぁそういわれると、な。」
返される言葉に頬をぽりぽりと掻いて言葉を濁すのは、彼が目利きした通り、呪い持ちの弊害があるからだろう、体が雄を欲しがって仕方ない時に、捨て値同然で売った記憶があるせいか。

「わかるのか、まぁ別に障りがあるのは大体俺なんだが…断られちゃ仕方ねぇな。」
雄を誘惑し、子種を強請る苗床の呪い…確かにそれは存在するので、それを理由に断られると、仕方ないかと肩を竦める。

「はいはい、まぁ気が変わったらどうぞ…俺も、また何か良いものあったら買わせてもらうさね。」
今度は財布の中身も万全にしてくる、と付け足せば、ひらりと手を振って…別の露店へとまたブラブラ歩き始めよう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からダヴィデさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヴェルソートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にランバルディアさんが現れました。
ランバルディア > とあるギルド内、酒場の一角。
知らぬ先客がいなければ、指定席のようになりかけているテーブルに腰掛けている男こそ。
そのギルドの掲示板に張り出されている“割のいい採取依頼”の依頼主である。

品物はそう珍しくはない薬草。
持ち帰ってきた時の報酬は、際限無しで量に応じて即時その場で現金払い。
ギルド所属の冒険者じゃなくても構わない。ギルドへの付け届けは男持ち。
その他諸々都合良く。
ただまあ、報酬支払い後は酒に食事に付き合えというのが御定まりのようで。

この日、やってくるのは――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からランバルディアさんが去りました。