2023/06/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にクレイドルさんが現れました。
クレイドル > 平民地区、大通り。
昼から夜になろうとしている夕暮れ時に人通りは未だ殆ど変わらない。
仕事中か、または仕事帰りか…夜からの営業や夜勤に従事する人間ならば、これから仕事に赴く足運び。
各々の生活背景を十人十色に描く一人一人が雑踏を作っていた。
そこから少し外れた路傍にも、黄昏時の街並みの風物に一役を買う人物が陣を据えている。

「当たるも何たら、当たらぬも何たら…道標と寄る辺を失った子羊様は寄っておいで見ておいで下さいまし、ですわ…♪」

半ば路地裏に食い込む位置、粗末な一人用のテーブルに椅子二組と埃の掛かったランタン。
そして麻の薄汚れたテーブルクロスの上に擦り切れたカードの束。
これだけで路上占いの体裁が立つ。
席を挟んで相対する席に腰かけているのは、仕事道具のお粗末さに反し、卸したての様な整ったシスター服に袖を通した女だった。
ウィンプルから食み出した金髪は長すぎて、その一房が卓上にまで流れ着いて渦描いている。

クレイドル > 大半はただ通り過ぎて行くだけ、占い師など日常風景の一部であって、そもそも意識の眼中にも無い。
だが、中には興味と意識の視野に入れて絡んで来る者達も居る。

「あら、怖いですわ~。申し訳在りません、界隈の事情に疎かったもので。場所代というものが必要でしたのね…これで目を瞑っては頂けませんこと?」

例えばそれは無許可で店を出している事に、イチャモンをつけて来るチンピラの類であったりする。
大概は怯えた振舞いと共に賄賂を添えて愛想を振りまくだけで事なきを得る。
そもそもにおいて営業関連に関わっているかの真偽はさておき単なる小銭稼ぎ程度の絡みである事も少なくない。

「……どうやら意中の殿方とは相思相愛の模様ですわね♪好機を見逃してはなりませんわよ、多少の強引な手であっても。わたくしが言うのですから間違い在りませんわ?」

例えばそれは街中にて運営されている学園に通学している、多感な時期の年若い女子学生であったりする。
真実を望んでいるのではなく、ただ背中を少し押して貰いたがっているか、あるいは求める言葉が欲しいだけ。
捲られるカードも自分の身体の一部である為に、占う相手の主導であっても容易にカードの柄を操作して運命の一言で丸め込む事が出来る。

クレイドル > わざわざ立ち寄って来る酔狂な客人は疎ら、暇を持て余してる時間の方が多い。
カードをシャッフルするのも数え続ければ果たして何度目か。
カジノのディーラーにも劣らぬ手さばきで、運命の札を躍らせる。
…もしも注意深く観察出来る人物が居るならば、その手指で操られているのではなくカード自体が動いているのが解るかも知れない。

「わたくし自身の運命たるや…?良き出会いへの導きたらん事を…♪」

ハミングを口ずさみながら、人から外れた存在の人間観察。
衣食住に勝る産を成す為に、自分の役割を果たすに値する誰かを探し求める事に時間を費やす。
今は抱き抱える子も居らず、撫でて擦る胎の中身も空っぽの状態。
母性の象徴として基本姿形として成型されている豊かな乳袋は、哺乳生物としての母乳の産生に瑞々しくシスター服の紺色の厚い生地越しにも、丸みを描く程張っている。

クレイドル > 「さて…?そろそろ場所を移しましょう。求めるべきものがそこにありますように…♪」

断続的に繰り返し続けた末に反応も薄くなって来た。
周囲の様子を窺ったその後に、かさばる筈の椅子もテーブルも、全てするんと吸い込まれるようにしてシスター服の中に呑まれてしまう。
手品奇術魔術が如く、瞬きもすればもうそこには何もない。
立ち上がった端から腰かけていた椅子すらも豊かな体の内にへと同化し。
後は悠々自適とその場を立ち去っていくだけで、髪の毛一本の痕跡すらも残さずに消え果てる。
狩場を変えて、あるいは仕事場を変えて、日暮れの夜となった町の中に紛れ込み…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からクレイドルさんが去りました。