2023/03/12 のログ
■クレイ >
そうして時間だけが経っていく。時々絡まれるが、参加者じゃない。大体は貴族や王族、簡単にいえばこっちにつかないかという話だ。
とはいえ、そう簡単には寝返らない。そんな軽くすればこちらの価値も下がるし、敵を増やす。
だからパトロンを増やすという方向が1番だ。どちらにしても今の雇い主と交渉してからと返事をするが。
試合は全部終わる。選ばれた者選ばれなかった者。色々な人が出た事だろう。
「さって帰るか」
体をグッと伸ばすとこの場を後にする。
今後仕事が増えたがそれ以上に報酬は増えた事だろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からクレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にランバルディアさんが現れました。
■ランバルディア > 香ばしい焼き菓子やパンの匂いが鼻を擽る通り。
活気良く呼び込みする店も多い。
片腕にはもうパンパンの紙袋を抱えているのだが、その男はまだ買い足すつもりのようで。
「……んー、此方も美味そうだな」
口元に手を当て悩む姿と白衣を合わせ見ると深刻な病のカルテでも見ているようだが。
目の前にあるのは、菓子類のショーウィンドウである。
紙袋から顔を出した甘味が転げ落ちそうになる――のを、今日は気づいて頭をおさえることが出来た。
と、思いきや。身体を傾けた拍子で別の菓子がまた転げて地面へ落ちようとする。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティカさんが現れました。
■ティカ > ――――ぱしっ。
危うい所でほんのりと日に焼けた肌色が水を掻くかの優雅な動きで転がるパンを掬い取った。
菓子パンを鷲掴む小さく華奢な手指の持ち主は、大男の胸元にも届かぬ頭部―――ぴょんぴょんと外跳ねさせた朱色のショートヘアを持ち上げて
「――――くふっ♪ あんた、案外とろ臭ぇんだな」
猫を思わせる釣り目の存外に可愛らしい童顔をニヤリと笑み歪ませた。
その小生意気な表情と、チュニックの胸元を小躯に見合わぬ発育で膨らませた双丘は、先日の酒場での出会いと、場を変えた先の個室での濃厚なやり取りを大男の脳裏に思い浮かばせる事だろう。
覚えてないとか言いやがったらぶん殴る。そんな気配が勝気な顔立ちから滲む。
■ランバルディア > 転がり落ちるのを視界に捉え、手を伸ばす――直後、脇から飛び込んできたちいさな手がそれを掬い上げた。
崩した姿勢を正し、その手の持ち主へ視線をやる。
自分の目の高さから、大きく下へ。小躯に目立つ胸元は、まあ、忘れ得ない。
「と、――――……なんだ、お前か」
菓子パンひとつ救ってみせたのがそんなに嬉しいのだろうか。
可愛らしいばかりの挑発に肩を竦め、少女の存在を認める。
これみよがしな双丘に脈絡もなく手を伸ばして思い知らせてやっても良かったけれど。
それは何だか、むしろ少女の思惑の通りだと思えてやめた。
■ティカ > 肉体強度は当然ながら、知性においても勝ち目の無さそうな大男の危地を救ってやったという状況が妙に喜ばしく、先の出会いを考えればちょっとどうなんだと思える程にフレンドリーな対応をしてしまった。
平然と肩を竦める所作には何やら負けた様な気がするも、しかし、それもまたこの大男らしいとも考えつつ
「なぁ、それ全部食うの? でっけぇ身体維持すんのって、やっぱ大変なのな」
男の太腕が抱えた大盛りの紙袋。
その中身がティカが手にした菓子パンの同類だと気付けば、チビは感心した様な声音の最後、小さな口を大きく開いて―――あむっ。
さも当然のことの様に先ほど落下を防いだ菓子パンにかぶりつく。
そのままむしゃむしゃ。
育ち盛りの旺盛な食欲はむりゅっと溢れ出したカスタードを唇端に付着させつつみるみる内に甘味の嵩を減らしていく。
■ランバルディア > 「まさか。八割がたは俺が囲ってやってるとこへの差し入れ用だよ、ンなあまいもんばっか喰ってられっか」
先の出会いを考えれば、こちらの対応は素気ないと言えるだろう。
断りもなく、救った菓子にかぶりつく様子を一瞥する。
それに関しては、どのみち口をつけられないものになっていたのだから然程気にするものでもない。
ひとつ溜息を挟んで、大きな手をちいさな頭に向かって伸ばす。
「それで、何の用だ?――わざわざ人助けの為にどこぞから駆け寄ってくるほどヒマじゃねェだろ」
行儀悪く汚れた唇端から、唇端まで。
親指でグッとカスタードを拭ってやって、甘味を纏った指を自らの口元へ運ぶ。
指の腹に載せたそれを、こちらも行儀悪く舌を覗かせてぺろり。
それからちろり、舌舐めずり。
砂埃も立てず、何なら笑ってしまうような優雅さでパンを救えるほどの近くに潜んで何の用だったのか。
少女が何と言うのか、嗜虐的な期待を寄せて目を細め見下ろす。
■ティカ > 「――――お、お前……そんなに女囲いまくってンのかよ……」
甘味を貪る動きさえ一端止めて、クリームとチョコの色が残る口腔をぽかんと開けてチビは呆れた。
が、すぐに『まぁ、こいつ並外れて女好きって感じだし、な…』と妙な納得で意識を切り替え、菓子パンの残りを平らげる。
手指を穢すチョココーティングの濃茶もぺろぺろ舐め取る野良猫めいたいぎたなさ。
そこに無造作に向けられた手指に口端を拭われて「んゃっ!?」と頓狂な声音を漏らしたティカは、太指の先が掬ったカスタードの黄色がぺろりと舐め取られる様子に僅か頬を染めた。
何やらどぎまぎとするものを感じつつも、そんな内心はおくびにも見せる物かと童顔を強張らせつつ
「はっ、なんであたしがわざわざあんたを助けなきゃなんねぇんだよ。うぬぼれんな。そもそもあんただろが、そこの宿紹介してくれたの」
くいっと顎をしゃくって示すのは、ティカが現在世話になっている上宿の看板。
彼がそこの部屋代を数ヵ月分先払いしてくれたおかげで近頃の経済状況は大いに上向き、そうした恩があるからこそ男嫌いを地で行くティカの対応も存外に友好的な物になっているのだ。
男の行先の途中、たまたま彼に紹介された宿があり、所要を済ませて宿に戻る途中だったティカは偶然大男の背を見かけ、なんとは無しに追いかけた―――というのが事の顛末。
■ランバルディア > 菓子の行き先の勘違いについては正すべきところはあるものの、急ぐべきことでもない。
真夜中の部屋ではなく、真昼間の通りでは僅かな肌の赤みも見て取れた。そちらを眺めるのを優先として。
童顔が強張ることそのものが雄にとっては甘味じみているとは、幼子は知る由もないのだろう。
「ん?……あァ、――――どうも最近、個室娼婦が居着いちまったとかなんとかって噂になってたが。
ま、いーや。……どーよ、腹いっぱいにはさせてもらってるか?」
少女曰くの“囲いまくってる女”の中に、少女も入るわけで。
ここしばらく顔を合わせていなくとも、その動向くらいは多少耳に入るようにしていた結果の、“噂話”。
まさか目の前の少女のことではあるまい――とばかり、宿の看板に目をやって、口に手を当てわざとらしい悩む仕草。
“噂”は“噂”、と。そんな話は釘刺し程度に零しただけで、直ぐに話題を次へと移した。
紹介し先払いまでした宿は腹の鳴る香りに満ちたこの通りのパンで好く腹を満たしてくれている筈だが。
もう一度少女へ向かって手を伸ばす。腹というより、肚。
とんとん、と臍下辺りを叩いて――植え付けてやった魔の刻印に、伺いたてる。