2023/02/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミュゼットさんが現れました。
ミュゼット > 平民地区にある教会前の広場
普段は市民の憩いの場所になっているそこは、今日ばかりは大小さまざまな露店が品物を広げていた。
そんな中のひとつに、教会のシスターたちのお店もあった。

そもそもは万愛節に合わせたチャリティーバザー
初めの計画では、シスターたちは礼拝堂で祈りと祝福を捧げる予定だったのだけど、
孤児院の子どもたちにせがまれて急遽出店することになったのだった。

とはいえ、売りに出せるものなど限られており。
手作りのカードを添えたポプリやお菓子が長机の上に並べられていた。

「あ、あの……よろしければ、奥様に買って行かれませんか?」

交代で店番に立つシスターたちの中でも、ひと際、小柄な少女が冷やかしの客に声を掛ける。
けれど、下卑た視線とセクハラまがいの言葉ばかりで、なかなか買ってくれる人はおらず。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアシュベールさんが現れました。
アシュベール > ノーシス主教に置いて非常に重要な意味を持つ万愛節。
その日が近づくか、もしくは当日なれば、教会前でそういった催しが行われるのも当然の事。

そして、一応平民としてこの王都で暮らしている一人の魔族の少年も、そういった催しに合わせてアイテムを作ったり、逆に売り出された"贈り物"を購入したり、色々としているわけで。

そんな中、平民地区を歩いている際に聞こえるのは、シスター達の明るい声。"ほほう、なにか売ってるのかなー?"という好奇心で其処に釣られれば。

「やーやー。どーもどーも。……どうやらバザーみたいだけど、どういった物が売ってるのか、教えてもらっても良いかなー……?」

小柄な彼女よりも更に小柄な、ローブを身に纏ったシルエット。
冷やかしの男達も、客が来たとなればそそくさと退散する中、長机に視線を送りつつ、声を掛けてみて―――。

ミュゼット > シスターたちに群がる男どもは所詮は冷やかしでしかなく。
チャリティーなどにお金を使うくらいならば、花街に行った方がマシだと考える輩ばかり。
そんな中で、年端も行かない少年―――というか男の子と言った方が良さそうな背丈の子が声を掛けてくる。

「えっと……手作りのものが多いです。お菓子なら、ビスケットとかラスクとか。
 それ以外だと、ポプリとか栞、ハンカチなんかもあります。
 ―――どなたかへの、贈り物をお探しですか?」

万愛節の定番ともいえるお菓子から、プレゼント用の小物まで。
相手が小さな子どもだとしても、丁寧に受け応えして。
最後に一言付け加えたのは、この辺りの子どもではなさそうな感じがする身なりゆえ。
そうでなくとも、少女の対応は変わらなかっただろうけど。

アシュベール > 穢れを知らない聖女達に対して、そういった視線を向ける男は少なくない。
もし、ここにあるバザーの内容がもう少し男達好みならば、もしかしたら其処に目を通したかもしれないが――。
その女性達が用意したのは、もっと健全なもの。日用品。本当に、親しい人への贈り物になりそうな。万愛節の趣旨通りのものが多く。

「ふん、ふん。なるほどねー……。あー、お菓子いいねぇ。
 ここ最近、寒いからねー。お茶菓子になりそうなの、あると嬉しいなって思ってたからなー……。

 ……んー? いやぁ、贈り物をするような人は、バイトに来てくれてる女の子ぐらいだけどー。」

並ぶもの。改めて見てみれば、本当に定番だ。
子供だとしても丁寧に伝えてくる。その誠意ある対応に少しだけその目を瞬かせたか。

「そうだねー……。贈り物と、自分用。それを見繕いたいかなぁ。
 ちなみに、シスターさんとして……オススメのものはあったりするのかなー……?」

そうやって尋ねられれば、二種類の用途を挙げ、合わせて彼女からの助言を聞いてみようとする。
他のシスターよりも何処かフレンドリーに感じたからか。きっと良い意見をくれるだろう。そう思っての、であり。

ミュゼット > お菓子に興味を惹かれたあたりは年頃の男の子ということなのだろうか。
それにしては言葉遣いは大人びている気もするけれど。
内心首を傾げつつも、それは表情に居は出さずに。

「お茶菓子だと、少し甘めでも…いいかもしれないです。
 バイト、さん? ですか……?」

お茶菓子にオススメなものを選ぼうとして、はたと今度ばかりは首を傾げる。
今の言い方だと、親のお店というよりは、自分のお店っぽく感じられ。

「えと、そのバイトさんがどんな子かにもよりますけど……
 何かお好みとか……ご存じないですか?」

長机に並んだ中から、いくつかの包み紙を小さな籐の籠に入れ。

「この辺りとか……ハーブを練りこんだクッキーです。
 甘いのが苦手な人でも、すっきりしてて…お勧めです。
 あとは……こっちの、キャンディ。はちみつを加えてあるから、喉にもいいですし。」

真剣な様子で商品を吟味して勧めてみる。
どれもこれも、よく言えばお手頃価格。
というのも、一般庶民が買いやすい価格になるように、原材料から抑えに掛かっているため。
とはいえ、もう少し情報があれば、勧める内容も変わってくるかもしれないけれど。

アシュベール > 年頃―――という彼女の考えは間違いではない。
実年齢で言えば、目の前の彼女よりも年下。
ただ、どこか呑気な。間延びしたような落ち着いた口調は、ある意味子供っぽさを匂わさない。

「そだねー……。実際、中途半端な甘さだったりすると、紅茶の風味とかに負けちゃったりするしねぇ……。
 
 ……好み。好みかぁ。考えてみると、現物支給ばっかで好みとか、知らないな……ぼく。」

―――此処で思い至る。基本的にどんなものでも食べてくれるバイトが多いからこそ、
彼女たちがどんなものを好むのか。其処を把握していないポカ具合。ご存知ないですか?という問いかけに暫し考えた後……。

「――うんっ。わかんないねぇ。うへへ。ごめーんね。
 まぁ、こういうのは好みも大事だけど、オススメのハズレのないものを、気持ちを込めて渡す……とかでもなんとかなる、よね?」

――浮かべるのは苦笑い。ローブと顔の隙間から覗く紫糸を揺らしながら、頭を掻き。
おすすめ。という事で真剣かつ丁寧に教えてくれる彼女の言葉に耳を傾けてみる。

「ふんふん……少なくとも、甘いものが嫌い!って感じはなかったかなぁー……前にミルクティーを甘めに煮出しても喜んでたからねー……。
 そゆ意味では……いいねぇ、これ。特にこの時期、花粉とかも出てくるし、喉やられる子、多そうだし。
 ……良いチョイス。君、良い店員さんになりそうだね~……。」

少年が気に入ったのは、彼女が指さした飴だ。
喉にも良い。時期的にも噛み合うセールスポイントを告げたところも、評価ポイントの様子。

ミュゼット > 「えと……ご存じないんですか…?
 だったら、これを機会に、お話ししてみるのもいいかも、です。」

苦笑いを浮かべる彼に、少し呆気にとられつつも、気を取り直してお説教じみたことを口にする。
あまり口出し過ぎても小うるさいだけだろうから控えめに。

「ハズレがないかどうかは……ちょっと、保証できないですけど……。
 可愛いのが好きな感じでしたら、ラッピングに凝ってみるのもあり…だと思います。
 こういうリボンとか―――
 うーん……お店はこの時期だけなので。ご用命があれば、お手伝いはさせていただくかも…ですけど。」

どうやらキャンディがお眼鏡に適ったらしい。
細いリボンを手に取ると、包み紙をくるくると器用に結んでみせて。
掌に乗せたそれを見せながら、本業はこっちなのでともう一方の手でロザリオを摘まみ。

アシュベール > 「あははー。耳が痛い。
 そだねぇ。キミの言う通りかも。流石に店主だからって、現物支給とかお金支払ってありがとー。じゃダメだねー……。」

彼女の言葉は尤もである。採取をしてくれたり、自分の作った道具を使ってくれる子たち。
あくまでもバイト―――と軽く見てたかもしれない。
此処で強く言わないのは、彼女が優しいからだろう。自然と口元を緩めて。

「まぁ、其処は大丈夫だとぼくは思ってるよー。
 なにせ此処はシスターさんたちのチャリティーバザー。……心を込めて作ったものが多いと思うからねぇ。
 其処のポプリとかはいい香りがするし、栞だって、押し花みたいにしてるのもあって、綺麗だ。
 なら、同じように作られたお菓子も……悪いものじゃあないさー。

 ……おお、手慣れてるねー。じゃあ、良かったら包み、結んでもらっていーい?
 勿論、お値段は少し多めに支払うからさー。」

流石にキャンディ入りの容器をそのまま渡す!なんて暴挙は無い。
ならば、彼女の提案通り、包んでもらい、リボンのひとつやふたつ結ってもらう方が好いだろう。

「だよねぇ。……いや、ご用命あったらお手伝いするかもなんだ。……じゃあぼくが例えば、暇な時にお店手伝って欲しい!って言ったら?
 ――あ、ぼく。貧民地区でちょっとした魔具、売ってるよー。」

――此処で、顔を寄せて、笑ってみる。
勿論、シスターとしての本業があると理解した上で、だ。

ミュゼット > 「やっぱり店主さんなんですね。
 はい、そうして…あげてください。」

自分よりも年下に見えるけれど、もしかしたら年上なのかもしれない。
見た目どおりの人ばかりでないのが、この界隈。
その方が彼女たち?も働きやすくなるだろう、と小さく微笑んで。

「褒めて貰っても、あんまり出てくるものは、ありません、よ?
 ちょっとだけ……おまけ、です。」

とはいえ、シスターたちが心を込めて作ったのは事実。
それを褒めて貰えるのは、やっぱり何だかんだで嬉しいもの。
くるくるとリボンを巻いたところに、ドライフラワーを一輪挿して。

「えと…都合が合えば、大丈夫です。
 困っている人を助けるのが本業ですし。
 魔具のお店、なんですね。うーん……でも、素人でも…大丈夫ですか…?」

ドンと胸を叩いて任せとけ、とは言わないものの、コクンと頷いて見せ。
何だったら街中であれば、冒険者よりも何でも屋と化しているかもしれないで。

「いくつ…ご用意すれば、いいですか?」

そうして話をしている間にも、きちん手は動いている。
リボンだけではなくて、仔猫のシルエットを切り絵にして貼り付けて。

アシュベール > 「やっぱり?……やー、見抜かれたかー。
 うんうん。頑張ってみるよー。」

実際、年齢不詳だったり。実は若作りだったり。異種族故に外見と年齢が乖離してたり。
この王都――だけではなく、界隈の年齢事情は混沌としている。
微笑みに返すのは緩い笑み。それが、ふは。っと破顔したのは、あまり出てくるものはない。と言いつつも、彼女がそっと添え物をしたからか。

「……ああ、ごめんごめん。出てきちゃったねぇ、おまけ。
 ―――凄いねぇ。手慣れてる。ぼくは作るのと売るの基本で、包装関係はあんまり得意じゃあないからねぇ。」

 なにせ売っているものが魔具。その場で使ったり、自前の鞄にしまっていく!という方が多く、包装を求めない冒険者が多い故か。
 目の前の彼女の手付きは惚れ惚れするもの。その挙動を見る目は商売人として、素直に感嘆出来るものであり。

「どーもどーも。そう言ってくれるだけでも嬉しいよー?
 とはいえ、場所が場所だから、一日だぁれも来ない!なんていうのもあるんだけどねー……。
 ――流石に素人さんに品物触れさせて、っていうのは危ないからねー……。やってほしいのは、そだねぇ。会計と包装関係かなぁ。」

彼女にそう言ってもらえれば、純粋に嬉しく。
彼女に適した事が何かを考え、挙げたのは――今の手付きからの包装作業や、多めに買った顧客のための会計業務。といったところか。

「そう言えば。魔具とかそういうのに関心や興味はー?
 ……あ、ふたつ。いや、みっつお願い出来るかなー。」

ミュゼット > 「ちゃんと、品物を見て……褒めていただいたので。」

元々リボンは売り物ではなく、包装用に用意したもの。
それにしたって、元は古着をばらしたものだから、費用はいかほどでもない。
自分も含めてシスターたちの頑張りをみてくれたお礼も兼ねてのことだからと。

「こういう手仕事は……案外、多いんです。」

いわゆる内職と言われるもの。
王都では奉仕を行うことも多いけれど、そうでなければ修道院の収入源は内職ばかり。
はにかみながら、そう答え。

「帳簿付け、くらいでしたら。読み書きはひと通り習ってますし、大丈夫です。
 魔具ですか…? えと、便利だなぁ…とは思うんですけど、お金もないですし……
 ちなみにどんなのが…人気、なんでしょうか?」

注文のほうは畏まりましたと、リボンを巻いて2つ、3つと用意する。
それらを紙袋に入れながら、あまり普段の生活では馴染みがない魔具について尋ねてみる。

アシュベール > 「やー、それはもう、職業柄ねー。――良いな。って思うものしか買わないんだよねー……。
 けど、ここにあるのは良いものだから、褒めた。当たり前のことだよー。」

費用を掛けず、それでいて味や健康も気遣っていそうな食べ物から、
小物関係も長く使えるハンカチや栞。ポプリ等の、さりげないもの。
どれもこれも、作り手の思いを感じるからこそ褒めた。当然だというように、手をぱたぱた揺らし――。

「なるほど。これまで培ってきたものを上手く利用してる、と。
 ――ふむふむ。」

納得した様子を見せてから、手仕事。という言葉に合わせて彼女の手元に視線を向けてみた。
荒れていないか。というちょっとした疑問。

「あー。それはありがたいねぇ。……まぁ、店主が時々サービスしたりしちゃうのは、多めに見てねぇ。うへへ。
 ……あー。そうねぇ。確かに物によっては高くなるから、節約を心掛けてる人には、どうも手ぇ、伸ばしにくいかぁ。
 ……ちょっとお待ちをー。」

此処でとんとん。と、ブーツの靴底が音を鳴らす。長机の向こう側――。一瞬だけ感じさせるのは魔力のうねりだ。
そのままゆっくりとしゃがみ込み、何処からともなく抱え上げたのは、巨大な宝箱である。

「あ、紙袋はこの中に入れてくれるとありがたいなー。
 いわゆるアイテムボックスみたいなものだから、これ。
 ……でー……やっぱりここ最近の売れ行きは、これだぁねー。」

 宝箱――実はミミックである彼の蓋をぱかっと開け、真っ暗な、闇の如き中に手を突っ込んで取り出すのは、銀色の指輪。
 その中央には赤々とした石が埋め込まれている。魔力の素養があるものなら、それが魔石だということもわかるだろうか。

「ててーん。いわゆる、熱の力を持つ指輪ー。
 つけておくだけで、この大気にある魔力を燃料にちょっとしたあったかさをお客様にプレゼントー。」

ミュゼット > 手元へと向けられた視線に、不思議そうに首を傾げ。
ただその手は全く荒れておらず。綺麗なもの。
ケアがどうというレベルではなく、まるで仕事をしたことがない令嬢のような艶のある肌で。

「――え? それどこから……??」

突如として現れる大きな箱―――それは、どうみても宝箱で。
瞳をぱちくりと瞬かせて、恐る恐る近づいてくる。

「ここ、に……入れちゃって、よろしいんですか?」

真っ暗闇のそこに、包装したキャンディの入った紙袋をそぉーっと置く。
するとそれはまるで吸い込まれるようにして消えていき。

「これも、魔具の一種……なんですか?」

しげしげと宝箱を眺めてから、取り出された銀の指輪へと視線を転じる。
何となく魔力を帯びているのは分かる。
けれども、それがどういった属性のものなのかまでは分からない。

「―――ふぁぁっ、寒い冬にはみんな欲しがっちゃいますねぇ…
 ちなみに……けっこう、するんですよね…?」

平民地区の教会はまだしっかりしているけれど、貧民地区ともなると隙間風がひっきりなし。
そういう時には、重宝するだろうと頷いて。

アシュベール > ――此処で手荒れの一つでもあれば、"じゃじゃーん。そんな手のための~"みたいなノリでクリームの一つでも出したのだが、そんなことはない。
此処で思い当たるのは、知り合いの不老不死の少女。もしくは、神に愛されているシスター故に、艶のある肌が維持されているのか。そういったこと。とはいえ、どれもこれも推論でしかない。
「きれいな手だね~。」と、顔を持ち上げ、微笑む位で留まり。

「はっはっはー。……まぁ、こう見えてねー。ぼくは冒険者でもあるわけでー。
 ちょっとした転移程度なら、お手の物というわけだよー。

 ――あ、どーぞどーぞ? ひゅっと消えるかもだけど、驚かないでねー。」

いきなり抱える程の宝箱を持ち上げれば、彼女が驚くのも仕方がない事だ。
しかも、普通の宝箱と違い、其処の中身は―――深淵。
吸い込まれるように消えた贈り物達がどうなったかも追えないのだから。

「ありがとねぇー。うへへ。とと、お金お金。
 飴が3袋。それと包装込みで……はい、受け取ってねー。
 あ、お釣りはいらないよー。……丁寧な仕事をしてくれた店員さんへのおまけ。と想っておいてくれればー。」

そして、商品を受け取ったならば、宝箱の後ろで取り出す革袋から、貨幣を取り出し、長机に数枚置いた。
それは間違いなく、3つ分の金額よりも多い。ので、返される前にこのお金は彼女の頑張りも含めたもの――と、確り付け加えつつ、の。

「そだよー。魔具の一種。魔力の伝導が良い銀に、炎の精霊の魔石を埋め込んだもの。
 銀を使った事で、魔力がない人にも使えるように調整したのがポイントかなー? ……んー。そだねぇ。まぁ、このぐらい、だけどー。」

此処で宝箱の蓋を閉め、足元に戻し――さり気なく送還。
指輪をしげしげと眺める彼女の興味が確りと言っているところで、少し考える素振りの後に告げた値段は、少なくとも此処のチャリティーに置かれているものを半数以上買える程の値段。――だが。

「―――でーすがー。
 優秀なバイトくんが今度、入ってくれるというのなら……先払いのバイト代という事で、進呈したいんだけど、どーかな?」

―――おどけて、笑う。先程見ていたきれいな指先に、その銀の指輪を差し出しつつ、の。

ミュゼット > 「さすがに、これ以上は…もう出ませんから。
 冒険者さんって、転移もしちゃうんですね……」

手を褒められると、これにもまたはにかんで。
冒険者が教会に来るとなると、大怪我をした時くらいのもの。
それゆえにあまり関わり合いがなく、感心したように大きく頷いて。

「こ、こんなに――――うぅ、いいんでしょうか?
 お言葉に甘えちゃいます、ね。」

今回のバザーの売り上げはシスターたちのお小遣い―――ではなく、孤児院の運営資金になる。
そうであれば、多めにもらえるに越したことはなく。
ぺこりと頭を下げて、お礼を言って。

「魔力がない人でも、使えるのは……便利、ですね…。
 ふぇ……やっぱり高価、です…」

いくら便利でも、それでお腹が膨れるわけではない。
目先の生活のためには、そのくらいの便利さは我慢するしかないのだろう。
自分が使うというよりも、教会のみんなで使えたらと思ったけれど、そう甘い話はなく。

「え? 先払いって……。バイト代にしても、釣り合ってなくない…ですか?」

指先に差し出される銀の円環を見つめ。
冗談ですよね? と思わず真顔で尋ねてしまい。

アシュベール > 「あはは、なにかのために褒めたんじゃあないよー。
 ……まぁ、うん。時空魔法とか、そういう……?」

はにかむ彼女の様子を見て、こちらも笑みが止まらない。二人でふにゃふにゃ笑ってそうな、そんな図。
実は単に魔物を召喚しているだけであり、実際は転移とは違うのだが――アレを魔物と説明していないので、ゆるく笑って誤魔化す事にした。

「いやいや、いいんだよー。それだけ、キミの仕事がしっかりしていた。
 なにせ、商売人だからねー?労働に対する対価はちゃーんと支払うんです。
 ……包装のきれいさ。リボンのあ使い方。それにドライフラワーのワンポイント。どれもさりげないものかもしれないけど、バランスが良い。
 ……ので。よし。お言葉に甘えて受け取ってくださいなー。」

つらつらと。彼女のこれまでの行為がどれだけの加点をしていたかと真面目な顔で告げてから、
感謝の言葉を述べ、下げた頭を戻した彼女を、ふにゃっと笑顔が出迎えた。素直に関心したのである。この魔族は、彼女の行動に。

「普通の鉄鉱石とかだと、そういう能力はないからねぇー。素材の良さを出してみましたー。
 ……だろうねぇ。其処は仕方なし。」

そう。便利よりも、人が重要視するのは自分の生活の安定だ。
そもそも基盤が整ってから、其処から無駄を省いたり、快適さを求めたりするのが人である。
――そう、甘い話はない。然し、甘い魔族はいる。口約束だろうとバイトに付き合ってくれる。と言った少女に対しては、だ。

「やー。そんなことはないよー。今後、キミみたいな可愛い子がカウンターに並んでくれるってだけで、売上は約束されたものだからねぇ。
 ……冗談で商品を見せる酔狂は持ち合わせてないよー?」

―――真顔で問いかける彼女との顔の距離。わざと少しだけ詰めて。
吐息が肌を撫でるのに合わせ、すっ……と、彼女の指先にそれを通した。
それは中指か。それとも薬指か。ともあれ、その瞬間――この肌寒さを掻き消す熱が、彼女を包むだろう。

ミュゼット > お互いに顔を見合わせて笑い合うのは、何となく可笑しくて。
けれども、悪い気はしない。
そこまで褒められてしまうのは、少し褒め過ぎな気がしなくもないけれど。

「せ、責任……重大です……」

最初に提示された価格以上の売り上げを期待されているとなると、自分なんかで大丈夫だろうかと心配になってしまう。
ただ代価は既に指に嵌められてしまった。それも薬指。
ふわっと、まるで春のそよ風のような、そんな温かさが身体を包み込む。

「ふぁ……あったかい、です……
 うぅ、これは冬の間は、手放せなくなっちゃうかも……
 ちゃ、ちゃんと働いて…返しますから……!」

魔具の効果に思わず感嘆の声が出てしまう。
これはもう手放せない。となると、ふんすと気合を入れて―――
シスター服の店員さんがいるとかいないとか噂になるのは、しばらく後のこと。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミュゼットさんが去りました。
アシュベール > 褒めちぎり、更に対価として魔具の指輪を先行投資。
魔族の作った本物の魔具だからこそ、その効き目は絶大。
付けた瞬間、その身体を包み込む暖かさに感嘆の息を零す姿を見れば、どこか満足げな少年が此処に居た。

「やー、其処まで褒められると嬉しくなるねぇ。
 ……魔力さえあれば、半永久的に稼働するから、いい感じに使ってくれると助かるよー。
 ……うへへ。うん、期待してるよー?

 ―――あ、そーだ。ぼくの名前はねー……。」

そして、此処まで会話をしていて、自分の名前すら告げていない事に気付いた。
気合を入れた彼女に改めて自己紹介をすれば、彼女からも返ってくるだろう。先程、バイトの人と話をしてみたら?と言った少女なのだから。

―――そして、後日。薄暗い魔具店でせっせと働くシスターの姿が、ある意味で客引きになったのは、また別のお話であり……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアシュベールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区・酒場」にシルキーさんが現れました。
シルキー > 「まあ!贋作を買わされてしまっただなんて、おかわいそうに……」

平民地区のとある酒場内、学生達もちらほら利用している明るめの店内のテーブル席で。
時折現れるどこかの教会のシスターらしい少女が、この日もまたいつの間にやら他の客達のお悩み相談役になりながら温かいミルクティーを嗜んでいて。

悩み相談と言うよりただ愚痴を聞いてあげているだけ、と言う時も多いのだけれど。
この日は隣のテーブル席で泣き崩れる男と、その友人らしき男の話を聞いていた。どうも騙されて絵の贋作を掴まされてしまったらしく、気づいた時には時既に遅し、もう店ごと跡形もなくなっていたのだとか。

「贋作や盗作、そうでなくとも盗品であったりとか、多いらしいですものね。素人目には解らないようなものもまた沢山あるそうですし」

この少女自身はそもそも、そういう品々に手が出るほどの財力が無いものだから、なかなかそういう目には遭わないものなのだけれど。
それでも、テーブルにぐったり伏した男を本心で気の毒には思っているようで、代わりに話してくれる方の男とともに悲しそうな顔をしながら。

シルキー > 辛い事も、誰かにその辛さを少し引き取って貰えばそのぶんちょっとだけでも回復はするようで。
ぐったりしていた男もやっと起き上がるぐらいの気力は取り戻したのか、酒を頼んで飲むことにした様子。
それを見ていれば、やけ酒はまた良くないと思いますよと言いかけたけれど、事情が事情なのだしそういうのもきっと必要なのでしょう、とそれは見逃しておくことにする。

「慎重に何度も考えて、調べてみて、本当にそれでいいのか悩んで……と言うのが理想ですけれど。どうしても思いつきで手がでてしまうことも、ありますし……」

衝動買いにしてもちょっと痛すぎる出費、と嘆く面々。
元気だそうな、と隣で男同士の友情が展開されているのを微笑ましく見ていた少女は、それでは応援を兼ねてささやかな一枚を、とベージュの手提げ鞄からタロットを取り出して。

「金貨の8、ですから……自分自身を磨き続ければ、きっと成功が掴める、だそうですよ。大丈夫です、明るい未来もきっと来ますわ」

カードの束から直感で引き抜いた一枚を、項垂れた男に指し示しながら励ましの言葉をかけて。
そんなちょっとした事でもタロットを見せることでそれらしく聞こえるのか、うんうんと頷いている男達。

シルキー > 「……あっ、いけない……わたしはもう帰らなくては。今夜はやっておかなければならない事があるのでした」

ミルクティーが飲みたい、と言う当初の目的も既に済ませて。
他の目的も……済ませたものもあり、まだのものもあり。
もっと色々お話を聞かせていただきたい気持ちは多々あるのですけれど、と男たちに告げれば、いやいや助かったよと言ってくれるのを微笑み返してみせて。

「それでは、皆様ご自愛なさってくださいね」

いつもならゆったりふわふわしている所を、少々忙しなくいそいそと片付けて。
それではまた、と小さく会釈してから……自身の住まう教会へと向けて夜道へと。

ご案内:「王都マグメール 平民地区・酒場」からシルキーさんが去りました。