2023/01/19 のログ
ティカ > 彼女の物言いは世間知らずのティカからしても世辞だと分かる空々しい物。
にもかかわらず、それが嫌味に感じられないのは、やはり彼女の纏うふんわりと柔らかな気配ゆえの事だろう。

「――――ティカ。ティカ=オルブラントだ」

掲示板に向いていた身体を反転させて、小柄な肢体で真正面から独特の雰囲気を持つ美女に紅眼を向けた。
長く艶やかな黒髪と、切れ長の翠眼。
すらりとした中性的な雰囲気ではあっても、その肢体は柔らかく膨らむ女の特徴をはっきりと宿していた。
そんな彼女の美貌に気圧されぬためか、小柄な体躯に見合わぬ双丘を持ち上げる様に胸の前で腕を組み

「――――んで?」

依頼とやらの詳細をさっさと話せとばかりに仁王立ちで顎をしゃくるチビ。
そうした小生意気な態度のせいで『このアマ、分からせてやる!』とゴロツキの勘気を煽ってひどい目にあうのだけれど、弱い犬は己が身を守るためにもわんわんきゃんきゃん吠え続けるしか無いのである。

ヴェルニール > 彼女が漸く身体を反転させれば、視線を合わせるように少しだけ身を屈めて。
ヴェール越しでも表情は分かるのだが、唇の前にかかった薄布を持ち上げてみせると、改めて一礼してみせ。

「そうですわね…あまり詳細は口外して頂きたくはないのですけれど。
目的の場所自体はそう遠くはありませんのよ。
必ずそこに探しているものがある保証も無いですから、どちらかというと、探索に行くのにあたくしを警護しつつ、奥まで行って帰ってくるのが依頼ね。
此処まで聞いて、詳細を――という事でしたら、お話を聞いて頂くお代はこの位で如何?
依頼を受けて下さるのでしたら、帰ってきた時に追加でこれだけ、という条件ではどうかしら。」

すらりと細身に見えながらに、意外と節ばって骨の形がよく分かる指先を伸ばして。
宙にさらさらと書いて提示した金額は、薬草採取程度のそれ。
続けて示す追加での金額としては、空飛ぶ大蜥蜴の討伐程度の金額ではあるが…。

「どちらにしても、あまり人の目と耳がある所では落ち着きませんわ。
お話はあたくしの部屋でも宜しいかしら?
…そうそう、あたくし、全く腕に覚えが無いわけではありませんけれど、普段は占いなどを生業にしておりますのよ。
ですから余り当てにはなさらずに。」

壁にはたくさんの耳がついている…などという言葉が東方にございますのよ、などと謡うように言いつつ、スカートを翻して。
当人の力量がいかほどか知る術は今の所無いだろうから、言葉通りに捉えるのかどうかは彼女次第。
乗ってくれるようであれば、部屋へと案内する――といった意図を見せながら、ゆるりと笑みを浮かべて首を傾けた後、歩き出そうかと。
勿論、警戒心を覚えるか、不審に感じて此処で切り捨てても構わないらしいが。

ティカ > 小柄なティカと目線を合わせようと身を屈める彼女の動きは、子供扱いに対する反発と、他意の無い優しさに対するじんわりと暖かな気持ちを同時に抱かせた。
反射的にむっと唇を尖らせつつ、刺々しく噛みつく反論の言葉が吐かれなかった事にもそうしたティカの内面が現れていた。

「…………なるほど、な」

正直言って彼女の依頼は、駆け出し冒険者の中でも弱者に属するティカの手には負えそうもないと思えた。
雑魚相手の1:1戦闘で手一杯になってしまうルーキーには、依頼人の安全を確保するだけの余裕など持てないからだ。
優しく美しい女冒険者との共同作業に強い魅力を感じていたティカにとっては残念なれど、ここは断るしかないか。
そう感じて口を開き掛けた所で《お話を聞いて頂くお代》なんて言葉と共に、ティカにとっては十分な金額が提示されて

「――――ん。………そ、そうだな。とりあえず、話を聞くくらいはしてやるよ」

すけべ心が湧いて出た。
続けて提示された本来の報酬は、ますますティカの手に負えない案件である事をうかがわせたが、話を聞くだけでそこそこの小遣いがもらえるのだ。
時には嫌悪感たっぷりの同業者に身を売ってその日の飯代を手にする事もある駆け出しが飛びつかない訳もない。

「わかった。さっさと行こうぜ。………ええと、ヴェル」

うきうきそわそわしている様子に気付かれぬ様、努めて仏頂面を維持しつつ移動を促し、先行く彼女のお尻を追いかける。
受けるつもりもない依頼の話だけを聞き、優し気な美女から小銭を巻き上げる事に若干の後ろめたさを感じないわけでもなかったが、泥を啜る様にして生きる新米には綺麗ごとを言ってられる余裕など無いのである。
――――そうやって美味しい話に騙されてひどい目に合うのも新米冒険者あるあるなのだけども……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヴェルニールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からティカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/ 」にリサさんが現れました。
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