2023/01/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にテンドンさんが現れました。
■テンドン > 夜の王都マグメール。物凄く寒い。
「ふーーー」
吐き出す息に混ざる水分が直ぐに温度差に触れて真っ白に凝結するぐらいには。
舗装された路をてくてく闊歩する。
街中でも場所によって照明の明暗は其々。
余り人通りのないような場所は見ての通りに大分暗い。
聳え立つ建物という遮蔽物によって月明かりが食べられてしまっている。
此処はあんまり大通りとは言えない、寧ろ路地と言うべき場所だ。
だから手元にはランタンをぶら下げている。油を燃やしてくゆる光が足元を照らし出す。
慌てて逃げていく小動物の姿が見えた。
■テンドン > 「寒いねー」
呟く声もしんと直ぐに消え行ってしまう。
遠くから雑踏の織り成す声とか足音とか諸々が聞こえるが、本当に囁く程度だ。
ひとりごちて呟く合間に忙しなく目線は油断なく辺りに走り続けている。
特に行く手において物陰があったりとか、十字路みたいになってるような場所は要注意。
強盗ならまだしも命まで取るような輩だって少なくはない。
がつんがつん威嚇みたいな音を立ててブーツの底が薄汚れた路面を蹴り立てる。
「早く春になればいいのにな。ボク寒いの嫌い。あったかいの好き」
周囲を暗がりに抱き込まれていると心が縮こまってしまう。
それを奮い立たせる為に一人で居る時には独り言が増えるのだ。
■テンドン > 「お」
そんな風にぐねぐねした歩道を闊歩していると遠くに薄っすらと灯りが見えた。
くん、と、鼻先を鳴らして嗅ぎ取る、空気の流動に乗って来た匂い。
「おそばだ」
普段は焼きポテト売りのおっちゃんとかが陣取っている路傍の所に屋台が居る。
うすらかな風にはたはたと揺れる暖簾が見えた。
ぐー、と、生理的な反応にお腹の蟲がせがむ音を立てる。
「んー……」
財布と相談!
革袋の中を確認するとまだ幾らかストックがある、ちゃりちゃり。
賃代を払って…生活必需品のあれこれ…薪…小麦粉…よし、いける。
意気揚々と店の方に吸い寄せられる様はあたかも誘蛾灯に囚われる羽虫が如き。
■テンドン > 「やってまーすかー」
ぺらっと暖簾を手で捲って中に入る。
途端にむわあっと鼻先を掠める湯気に当てられ目が細くなった、頬が緩む。
簡素に準備されている横長の椅子の端っこに座り込んだ。
今日のお客さんはまだ自分だけみたい。
「月見そば下さい。あ、板海苔も」
指を立てて注文。くるくる。
対してカウンターに白湯が出て来る。サービスだろう。
「有難う!う~、あったか……」
こう寒いと温かいというだけで御馳走なのだ。
椀一杯の温かい、お茶ですらないお湯ですら胃腸に染みる。
■テンドン > 「………」
手をこしこししながら待っている。
暖簾脇から見える王都マグメールからの夜空。
雲も少ない冴え冴えとした冬の夜に鏤められた星々。
「冬は星、綺麗だよね。そこは冬場のイイトコロ。流れ星でも降って来ないかなー……」
月見の前に星見に勤しみながら待ち時間を消費している。
冬の星座を目で追いかけて数える遊び、本で覚えたのだ。
■テンドン > 「わ」
そうしていると視界の外からことんと椀がやって来た。
おそばだ。割り箸とかはないので屋台から提供してくれるお箸を使わせて貰う。
「おいしそ。どうも」
ふんわりと漂う湯気の出所は褐色に透き通った出汁。
余り洗練っぽくない野趣の満ちた蕎麦は大概太くて形も不揃いだ。
つるつる啜る、というよりも噛んで味わうような感じの蕎麦。
その上に出汁に浸って、僕は海苔です!!という顔から僕は海苔ですよ~~という顔付きにふやけつつある板海苔。
更にその上に落とされた卵が乗っかっている。
出汁の熱に暖められて白身がもう少し凝固し始めていた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にハレスさんが現れました。
■テンドン > 「月見の卵って……何時、手を着けるべきか迷うよね……」
器用な扱いで箸で摘まんだ蕎麦一本を口の中に入れて、もぐもぐと噛み締める。
椀を両手で軽く持ち上げて縁に口をつけ、出汁を啜る。ずず。
濃厚な味わい。
「…ふは、あったか……」
五臓六腑に染み渡る具合に眉がとろけて下がる。
■ハレス > 「よお親父、たぬきそばで」
そんな静かな夜更けの趣ある屋台にまた一人誘い込まれていく人影。
今度は体格の良い、良すぎる逞しい男が暖簾をくぐり、先客の隣に腰かけた。
席二人分くらい占領してしまっているけれど、しょうがないのだ。
慣れた様子で注文して、店主も静かにもくもくと調理を始めていく。
常連というべきか、こうして店じまい後に来ることはあるが、この寡黙な店主とは一度も世間話的な話はしたことない関係だった。
ふと小さな先客のすする蕎麦を見ては、温かく素朴な料理ができるのを待っていて。
■テンドン > 「む」
やって来た気配にきょろっ、と目が振り向く。
一文字に結んだ口元が直ぐに驚いたように開いた。
「でっか……」
その割りいって来る横幅の面積に当てられるようにしてよじよじと愈々もって席の端っこにへとお尻で移動する。
そして手に持っているおそばも一緒に避難させた。
余りじっと見つめているのも失礼そうなので直ぐに目は逸らすのだ。
目の前にはおそば。
■ハレス > 「ふはは、なんか悪いな」
少女のつぶやいた一言に静かにかつ大げさに笑っては、威圧感があったのだろうと軽い謝罪の言葉を述べて。
体格が良いのはどうしようもないので、こういう感じのことは割とある。
小さい先客がいて小さい屋台で、食べていくか少しだけ迷ったのだが、食欲には勝てなかった。
「お嬢ちゃんもでっかいの持ってるじゃないか」
普通に考えればセクハラになると思われる発言だ。
しかし男の視線は彼女の頭の上、立派な角の方に向けられている。
寧ろそっちの方が興味津々なのだ。
■テンドン > 「お。や、大丈夫です。人が少ない時で良かったデスネ」
喋り掛けられたのでにこっと振り向いて、愛想笑いを振り撒いた。
ふー、合間に息で熱々の汁を冷まし冷ましに箸先でつついて最初に黄身を崩す。
とろりと破れたそれを蕎麦に絡めて箸でリフトアップ。
ぞっ、ぞっ、と、麺が太いので啜り込む音がやや品性が乏しい。
もぐもぐと咀嚼。
「え。あ。お?ああ、角」
一瞬面食らうかのような面持ちに目をしばたくも、
相手の視線の塩梅に直ぐにそれの意味するところを理解する。
へら、と、表情が崩れて片方の手を用いて湾曲している角の根本を支えるような。
「自慢の角ですよー、重たくて大変ですけど。もー、産まれながらの相方がずっしり圧し掛かって来て肩とかごりごり」
ぐいぐいと肩関節の付け根を軽く回すような仕草をまじえつつ。
■ハレス > 「まぁそうだなぁ」
一期一会の相手との会話なんて基本こんなもの。
でも牛の魔獣の身としては、彼女の特徴は少し興味がある。
牛のミレー?ってのも珍しいなと…
「あー、お嬢ちゃんの年代にしてはたしかに立派だな…どれ」
角の話は彼女にとっても自慢のもののようだ、愛想笑いのそれからずいぶん態度が違う。
だが確かに言う通り、見た目の年代にしては立派過ぎる角と言えよう。
肩こりしてるという彼女の片側の肩の、ツボをピンポイントに指で押してみれば、さぞ気持ちよかっただろう。
なお男の蕎麦が出来上がったためすぐ手を離して食事を始めてしまったが。
「おー、いただきます。」
■テンドン > 「のわっっっっ!???」
びく!!!と震え上がる、びん!と牛の尻尾が真っ直ぐ真上直立に起きる。
完全に世間話の空気で油断しきっていたので接触を赦した。
快感よりも勝った驚きに面食らって目を見張り。
立ち上がりかけた膝ががたんっとカウンター裏にぶつかる。
滅茶苦茶テーブルが揺れる、二つの蕎麦の椀に軽い地震洪水警報。
「あっづっっいいい゛っっ!?」
膝を強かぶつけた痛みに泣きそうな顔になりながら。
そのまま座椅子の横に蹲るようにして座り込み。
「な、な、なにを。いきなり。凄い吃驚したんだけれども。お、おお……」
触れられた場所に手を遣りながらえっちじゃない意味でばくんばくん高鳴る心音を抑えるようにもう片方の手は胸元。
びっくりし過ぎて腰の抜けかけたへっぴり様相でふらふらテーブルにつかまるように立ち直す。
■ハレス > 「おお、大丈夫か?」
なぜそんなに驚いたのかわからんといった表情で。
いたく冷静に両手でお椀をしっかり持って地震を回避している慎ましき男。
「そんなに超反応するとは思わなんだ、ケガしてないか?」
自分のお椀を置いて、手ぬぐいでそばつゆのぶっかかったところでも拭くか。
「俺は整体師やっててな、お嬢ちゃんの肩は確かにゴリゴリのカチカチだったな」
触るとまた妙な反応をしそうなので、とりあえず様子を見ておく。
店主は何事もなかったかのように仕事を続けている。
■テンドン > 「だいじょばない」
声が恨みがましい。
ふらふらの立ち上がりながらも若干は落ち着きを取り戻しながら、
すとんともう一度席にへと戻る、何故ならばまだ蕎麦は食べかけだから。
少し自業自得のアタックによって出汁が零れてしまっていた、嗚呼。
「いや、するでしょ!普通するでしょ!いきなりむきむきまっちょのおじさんに急所近くを手でぐいっとされたら吃驚するでしょ!まず一言ぐらい、いや、一言言われても触らせないとは思うけれどもダメでしょ!!」
ばんばんっと軽く手のひらでカウンターを叩く合間に目が軽く据わる。
「整体師さん…え、本当に?」
死ぬ程訝しい眼差しにへとチェンジング。
ふうううっと小さく息を吐き出して呼吸を整え直し。
ずず、と、やり場のない憤りを当てるかのように固まった白身と海苔と蕎麦をいっしょくたにやっつける。
■ハレス > 「悪かった悪かった、詫びに奢らせてくれ。
トッピングの追加も良いぞ」
恨みがましくまくし立ててくる少女はなんだかとってもからかいがいがあるけれど、さすがにこれ以上は可哀そうだ。
というわけでここの代金はこちらが持つと提案する。
目の前にはトッピングのかき揚げとか、お揚げとか、海老天とか。
「おっ、疑われるのも久しぶりだな~」
こんな超戦士みたいな体格で内勤やってますなんて説得力無いとか、仕事始めたころはよく言われたものだ。
少女の冷たい眼差しには理解できるので、笑いながら自分の蕎麦を啜る…こっちは温かい。
■テンドン > 「お、おう。いや、いいです…悪気が無いのは解ったんで…イエローカードに留めておきますネ。今奢られるの怖いな症候群発症中なので…」
何とも言えない面持ちに怒り損ねた塩梅、温度が生温い。
怒り掛けた肩がすうっと冷静の冷や水によって平らに戻った。
まるで庇うかのように手持ちの蕎麦の椀を手で囲う、がるる。
「疑うというか今の所、いきなりセクハラかまして来てその言い訳に整体師と来たかこいつっっっっていう印象ですよ、ボク。何か証とかあるんですか、いや、普通無いかそんなの」
整体師が果たしてこの王都では資格とかそういうの在るのかは解らない、子供だから。
ずずーと警戒を放ちながら蕎麦の汁を啜っている。
■ハレス > 「そうか?なんかお嬢ちゃんもいろいろあったんだな…」
なんか別の意味で警戒心を増した様子の少女。
まぁそういう街だからそういうこともあるのだろう。
自分もそうしてしまった一人なのだし。
「無いな!ははは!というか今財布しか持ってないしな」
証みたいなものは騎士でも持ってないだろうと笑うしかない。
というか財布しか持ってない。
証明する方法なんて店に連れてって実際に施術して見せるしかないけどやらないだろうし。
しなびたかき揚げをほろほろと食べている。
■テンドン > 「…ごりごりまっちょの人を好き好んで狙うヤバい人とかあんまり居ないだろうね、多分この街だと」
ぐっ、ぐっ、と、良い具合に熱に暖められて卵スープみたいに解けている気味と白身を汁と共に一挙に啜る。
ぷはー、がたん、と、先んじて空っぽになった椀を卓上にへと置いて。
「何とかの顔も三度って言いますし、今回の事に関しては不問にシマショウ。今後は気を付けるよーに、恐らく多分整体師のおじさん。騒がしちゃってゴメンネ」
そしてお会計。
ざら、と、お金をテーブルに置いて支払いを終えると。
ぺこんっと相手にへと軽く頭を下げたその後に。
すっく、立ち上がって。
「夜道に気を付けて、屈強な男好きのヤバい人に襲われないようにー」
んべーと舌先を突き出しながら冗談めかした一言を残し、ぺろりと暖簾を捲ってフェードアウト。
そのままてくてくと外に出ていった歩みはこの屋台を離れて行く事になるのでありました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からテンドンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からハレスさんが去りました。