2022/10/30 のログ
■アーシャ > 冒険者として荷物運びと言う仕事はあるのだろうか。
雑用も兼任すれば或いはと思うところもあるけど、荷物運びのみは望み薄か、料理やその場で薬を煎じられる、薬草の選別や魔物の解体、色々手広く出来ないと難しそうではある。
あとは年齢の問題。
未成年であり、まだガキな自分が全うな冒険者のパーティーに入れる可能性も低そうであり、冒険者もまた難しい選択しだ。
それに金。
金、カネ、かね、ゴルド。
冒険者になるには最低限の技術を学ぶのに金が掛かりそう。
それに掛かる額と王立コクマー・ラジエル学院に通う為の額がどれだけ差が有ってどっちが楽なんだ、って情報も持ち合わせちゃいない。
するりんっと、音も無くすれ違いの一般酔っ払いから財布をお借りしつつ、お借りしたものの中身を確認する前にポケットにないないしつつ、……さて、その手の情報は何処で集めるのがいいか。
「……娼婦の姉さん方はこの手の情報は弱いんだよな。冒険者崩れの姉さんは見かけないしさ……。」
親指で鼻先をカリと引っかいて、ため息を大きく吐き出し肩を落とし、歩く速度を少しだけゆるめて大きな通りではなく、近くの狭そうな路地のほうに足を向ける。
人目のつかない所でお借りしたそれの中身をあけて、財布を捨てたいので。
■アーシャ > 「……どう転がろうと金が必要になるんだよなぁ……。」
当然である、当然であるが、ため息しか出ない結論であった。
冒険者と学生のどちらを選ぶにせよ金である。
どっちもという選択肢は有りえず、どうしたものか、どうするべきか……。
頼りになる大人の知り合いなんぞいない。
頼りにならない酔っ払いくらいしか周辺にはいない。
――選択肢を自分で選ぶには難題山積みで。
ポケットより先程お借りした財布を取り出すと、蓋をゆるめて、掌に向けて財布を逆さまにして振るとじゃらじゃらと幾らか、結構多目の額が出てくるが、これで何とかなるものでもなし、頻度あげたらそれこそ……眼もあてらんない。
金は全部自分の財布に移動する事にして、逆さまにした財布は路地の何処かにポイっと投げ捨てると、自分の財布を取り出すために自分のズボンのポケットに手を突っ込んでから、自分の隠れ家へと向かうため貧民地区に向けて歩き出すのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアーシャさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシルニアさんが現れました。
■シルニア > 学校帰り。段々と日が沈むのも早くなってきた。夕焼けの橙と影に染まった紫の雲。禍々しくも美しい空が広がっている。
下校のルートは人気が少ないが、街路樹が茂っている。その木々のひとつ、金木犀の良い香りが漂う。
この香りは好きだ。私の故郷でも感じたこの香り。花は小さいけれど、その香りは遠くまでかぐわせる。甘くて優しい香り。
───なんて、現実逃避してる場合じゃない、ですよねえ。
私を囲うのは、良い香りのする木々ではなく、ガラの悪い男たち。すでにそれぞれの武器を抜き身にしていて、すぐにでも私に襲いかかってきそうだ。
…追い剥ぎだろうか。制服を着ているから、高い制服を剥ぎ売るつもりか、或いは金持ち両親目当てに誘拐、といったところだろうか。
だけれど、剣術科の制服を着ている私をわざわざ狙う点から念入りな下調べはしていないようだ。私が歴史や言語学科だったのならばアタリなのかもしれないけれど、私は彼らにとってのハズレだろう。
そして、それらの判断が出来ない様子を見るに、素人。さっさと蹴散らすことも出来なくない、けれど。ヘンに恨みを買って用心棒でも雇われたら面倒だ(一敗)
「もーっ!相手は選ぶのですよー!!」
なんて、半ばキレ気味の説教をしながら逃走。もちろん、ただ駆けるだけではなく、両足に身体強化の魔法を施し、一度の跳躍で大きく飛び退く。そのまま狭い道へとまっしぐら。
「諦めるのですー!」
追加で叫びながら、懐から取り出すのは剣…ではなく、いざという時のために持っておいた、サブの杖、ワンド型の杖だ。それを媒介に、道の端に水色の巨大な魔法陣を展開。
陣はすぐに起動し、高さ2メートルはあろう氷の壁を展開、道を封鎖する。
「…これでよし…ですかね。
……まだ、諦めていないみたいなんですけど…」
氷の壁を背に一息つこうとした所。背後の氷に刃を刺したり、蹴飛ばしたり、悪態ついたりする様子が伝わってきた。貧乳いうなチビいうな。
それなりの魔法を見せつけた…つもりだったけれど、彼らには程度が理解出来なかったらしい。
…ある意味たちの悪い人物に絡まれてしまった。これは素直に彼らが諦めるまで逃げるしかなさそうだ。
強力な身体強化魔法はいらないだろう。脚部にかけた魔法をゆるめつつ、地面を蹴り高速で駆けていく。
まっすぐ家に向かうと家が割れる…。また学校に戻る、のかあ。少し、面倒に感じるです…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエルフェさんが現れました。
■エルフェ > 学校帰り。つまり、その時間帯には同じ学生が出歩いている。
肌寒くなってきたけれど、この時期には暖かいものが美味しくなる。適当な屋台であったかい飲み物なんかを買って、下校中に。
―――何やら、物々しい音が聞こえたのは多分、気のせいじゃないんだろう!
「んー……なんだろ、これ。シルフちゃん、ちょーっと音、調節して?」
自身が契約する風の精霊が届けるのは、怒声の響きと氷壁が発生したことによる冷気。つまり、この平民地区で何かしらドンパチしてる人がいるって証拠。
それと、なんだか可愛らしい声も届けてくれた。「諦めるのですー!」って、鈴の音のような音も。ふむふむ。
手に持ったココア入りのカップに蓋を付け、溢れないようにしながら風の力を帯びた疾走。
お、エルフェちゃん、今日は元気だね!とか街の人に挨拶されるんで、挨拶返したりしながら、音の方へと―――。
―――見つけた。強化魔法を使って、急いで駆け抜けてる女の子。
手に持ったワンドといい、そこに残る魔力の残滓といい、きっとあの子だろう。そうじゃなかったら、謝ろう!――さぁ、声を掛けてみて……。
「おーいっ! そこの子!もしかして、誰かから逃げてたりするのかなー!?」
―――いきなり私服を着た女の子に声を掛けられる。割と事案案件な気がするけど。
■シルニア > 「はっ…はっ……?」
段々と呼吸が辛くなってきた。学校にかよって多少はマシになったとはいえ、ミレーにしては持久力が低い。もっと鍛えないと。
そんなことを考えていると、遠くから女性の声。ピン、と帽子の下の耳が傾いた。
無関係の人を巻き込むまいと人を避けて走ってきた故に、周りに人は多くない。声の主の視線を見るに、そして発言の内容からして私に声をかけたのは明らかだろう。
それがきっかけとなり、遅くなっていた私は立ち止まり、膝に手を当てて屈み呼吸を整える。
「は、ふ…な、んでしょうか…。追われてる、ですけど…ふぅ…撒いた、でしょうか。」
息を絶えさせながら彼女に返事したあと、私が走ってきた方向に視線を向け、耳を傾け、追手が来ていないか確認する。
「…な、なんでしょう?撒いたとは思うですが、巻き込んでしまったら危ないのです。」
だんだんと呼吸が整ってきた。引き続き警戒はしつつ、彼女に顔を向けた。もちろん、若干の警戒心を彼女にむけつつ、しかし初対面の人に棘のある対応をするのも失礼だ。彼女を観察するような視線を向けつつも、過剰に彼女に警戒を向けないよう注意を払う。
■エルフェ > 人気はずいぶん無くなったけれど、それはそれ。元々ここ住み故の地の利把握を活かし、その声の方向に駆け抜けていった!
―――息を切らしている彼女と違い、鍛えられた身体はそんなに息は切れていない。そもそも、風の精霊の力を借りたからでもあるのだけれど。
立ち止まり、呼吸を整えてる相手。きっと暫く走りっぱなしだったんじゃないか……って心配させる。
あんな小さい子なのに、なんてことを!なんて義憤が膨れ上がるけど、それはそれ、これはこれ。
「……いや、ちょっと音とか魔法の感覚が伝わったから、困ってる子が居るのかなって思ってね?」
眼の前の女の子が警戒してるのは当然。
だって、それまで追われていた―――だったら、先回りして現れた敵かもしれない!って思う方が普通!そもそも人気がないところだからこそ。
だから両手をゆるりと持ち上げて、敵意がない事を示してみたり。腰に帯剣したそれには触れずに。
「……そのカッコ、学院の子だよね? わたしも、学院の生徒だから。
―――そう!つまり、わたしは……あなたが逃げるのを手助けに来た、一般市民なんだよ!」
とんっ!控えめなラインを描く胸元を叩き、どやぁ!って顔をしてみる。
……少しは警戒心を解いてくれるかな。寧ろ怪しまれそうな感じもする。
けど、可愛い子だし、こう、逃してあげたい。あわよくば仲良くなりたいなんてちょっとした不純な感情も織り交ぜつつ……。
■シルニア > 「音?魔法の感覚?はぇ、そんなことが分かるのですね。
…わざわざ助けに来た、ですか?ホントに?」
音が聞こえた、といってもそこそこの距離を走ってきたハズだ。彼女曰くの 魔法の感覚 といい、なにか特別な訓練、或いは才能がないと感知出来ない範疇。
加えて、怪しいまでの善意。この国に訪れてから、何度も善意を装った悪意に騙されている。そういう輩はたいてい私に極端な有利な話を持ちかけるのだ。
胸を張る彼女を前に、私は腕を組んで小さく息を吐いた。
怪しむ、というより胡散臭そうな視線を彼女に向けつつ。
「…確かに、剣術科の合同訓練のときに見たような…うーん。」
いかんせん学院には人が多い。様々な人種も集まっている故にはっきりとは思い出せない。
おぼろげな記憶で彼女のことを信用するのは少し危ないような。
「じゃあ追手もないみたいですし、表通りに行きましょう。」
ひとまず人気のあるところに移動。それまでは彼女のことを警戒する。表通りなら手を出せないだろうし。
■エルフェ > 「ん、あー……わかるよ。わたしっていわゆる精霊術が使えてね?
今回は風の精霊が、なんか変な音がする―――って教えてくれたんだ。息切らしてないのも、そういうこと。」
ここで精霊の一匹でも見せられればいいのかもしれないけど、そういうのって素養がないと見えなかったりするらしい。
だから、指先を立てて、虚空を指さしてみる。今もここに居る風の精霊。もし、彼女が視える人なら、不思議な存在がそこに居るってことが分かるはず。
それこそ、魔力に長けた存在なら、内包する魔力とは違うものが渦巻いてるってことも……。
あ、すごい胡散臭そうな視線を感じる。
それは仕方ない。怪しげなキャッチセールスみたいに聞こえる。言っておいて何だけど。なので、苦笑いしちゃったり。
「……あ、剣術科の子だったんだ?
うん、わたしも合同訓練は出たことあるよ!……ほら、此処にその証拠も。」
視線を巡らせれば、腰に備えた片手剣。革鞘に包まれたものは魔力を帯びた一品。
と言っても、信じてもらうにはやっぱり距離感がある。仕方ない。ので!
「オッケー!此処から道案内するよ! ――と、わたしはエルフェって言うんだ。
……あ、警戒してたら名前は無理に教えないでいいよ?……何か名前を呼ぶ時に使ってくれるだけでもね?」
ならば、案内する。と言わんばかりに先導する。―――現在、かなり入り組んだ場所に居る状態。表通りに行くには、暫く時間がかかりそう。
……その間に撒いたはずの人が来たりするかもだし、こっちもちょこっと意識を向けつつ。
■シルニア > 「精霊術…!精霊魔法には興味があるです。が、私は精霊との相性が──
じゃなくてっ。魔法の行使以外にも親密に語りかけてくれるのですね。精霊さん。
魔法の手段の一つとしてしか見ていませんでしたが、そういうこともあるんですねえ。」
警戒は続いているけれど、彼女への興味はふつふつと湧き上がる。
もし悪党じゃなければ色々お話がしたい…!
そんな気持ちを抑えつつ。彼女に誘導されるままにあるき出せば。
ぴくん、と小さく跳ねる耳。地面を蹴る足音が、2,3人。
追手か。いや、こちらに向かっている確信はない。
「エルフェさんですね。ええと、エルフェさん、さっき私の音を聞いたように、あっちの方向の音を詳細に拾えませんか?
足音が聞こえる、かもです。」
彼女の信用度を確認することも含めて、彼女にお願いをしてみよう。
■エルフェ > 「お、そうなんだ!……よーし、それならここを切り抜けたらお話してあげるよっ!
……ん、まぁ。わたしの場合はちょっと例外なところもあるんだけどー。……割と、おしゃべりな子も多いよ?
結局のところ、力を借りるにはその子と仲良くならないといけないからね。シンプルに自分の魔力を使う魔法とは、ベクトルが違う感じで―――って、おっとっと。」
一応、学院に所属する生徒であるので、興味を持ってもらったら思わず早口になりかける!
―――けど、口を噤んだのは、彼女と同じく小さな足音を滞在させている風の精霊が教えてくれたからかも。
きっとそれは、彼女が耳をぴくんと揺らしたのと同じぐらいか、少しだけ遅いぐらい。
「そ、エルフェ。クラスは平民クラスだよ。―――ん、ちょっと待ってね? 確かにこう、シルフちゃんがなんか音がする。とは……。
んー、どれどれ……。あ、うん、やっぱりそう。貴女の言う通り、足音聞こえるって。」
虚空を見ながら言葉を返すのは、その視線の先に居る精霊と会話しているから。
あっち。という言葉に合わせて視線を向けると同時、ひゅう!……自分と彼女の身体を撫でるのは一迅の風。
それが、いわゆる「ソナー」的なものなんだけど―――。
「んー。人数は、3人かな。少し早歩きで、慌ててる感じ。
大通りから路地に入るところでどたばたしてる……ちょっと、怪しいかな。」
自分の探知結果はそういった感じ。
信用に足り得る結果かは、彼女次第。
■シルニア > 「信用するです。まだ追ってきてるのですかー…ほんと、タチ悪いのです。
じゃあ、表通りに逃げるですよ。」
追手を引き連れた状態で大通りに抜けるのは無関係の人を巻き込む危険がある、とは言ったけど。
彼女の手を掴み、人通りの多い道に向かって駆ける。
同時に、握っていたワンドに魔力を込めれば、更にそれを振るう。拡散の性質があるワンドは、水色の魔力の光の玉を撒き散らし…壁や床に着弾したそれは水色の魔法陣へと変化。
トラップだ。魔力の才能が一切ない人だろうと、近づけば陣が乱れ、その瞬間魔法が起動する。
どんな魔法かは…お楽しみ。
私を追う彼らの悲鳴が聞こえてこないことを祈ろう。そんなことより、早く隣の通りに出ないと。
「…ふう。多分これでもうおってこれないと思うです。」
「…で、エルフェさんは、正確な情報を私に渡してくれました。おかげで私が安全逃げられたのです。
疑ってごめんなさい。私は、シルニアと申しますです。剣術科、ロウ、なので下っ端なのですが…。」
■エルフェ > 「というか、なんでこんな追ってくるわけっ!?
あ、もしかしてあれ?いかにも襲われたらどうにかできちゃいそうな可愛い子から身ぐるみ剥がそうとか考えてる系な人たちに襲われてる感じ!?
よし、おっけー!ついていk―――わとと!?」
それならば、走り出そう!って思う前に自分の手を握られて、駆け出す女の子。
身体強化魔法を使ってるのだろう。その足取りは小柄ながら、間違いない速度。
同時に、目に見えたのはワンドから伸びた光が、床や建物の壁に飲まれていく様。精霊術がメインなので、シンプルな魔法がどういった意味を為すかはわからなかったけど。
―――多分、きっと。碌でもない事になるのは間違いない。
風の精霊の加護を受け、先を急ぐ彼女が姿勢を崩さない速度で駆け抜け続け……。
数分もすれば、その足音とかも聞こえない。何なら悲鳴も聞こえない。単純に引っかからなかったのか、悲鳴を上げる前にどうにかなっちゃったのか。
「……ふーっ。なら、お疲れ様、かな!
……そうかな? あはは。いやー。ここまですごい魔法が使えるなら、正直なところ……わたしの助け必要だった?って思うところはあるんだけど!
そう言ってもらえるのは嬉しいかな。こっちに来れてよかった!って感じ!……で、シルニアちゃんだね! 宜しく!
……というか、あれだけの魔法が使えて剣術科なんだ?」
ようやく落ちついたなら、深呼吸。同時に彼女にも伝わるのは風の精霊が起こす風。
まるで、自分の役目は終わったって言わんばかり。そして、ふとした疑問を浮かべてみたりするんだけど……。
■シルニア > 「可愛い子、というのは否定するですがー…私、ちいさいからあーゆーのに狙われやすいのでしょうか…
この制服も結構なお金になりますしね。」
耳を立ててみても聞こえるのは人々の喧騒だけ。私に向けられる悪意も感じられないし。
悲鳴も聞こえてこなかったから、トラップの張り巡らされたあの通路を突破出来なかったか、手こずっているのだろう。
だから、多分もう安全。
「わざわざ撒こうとしてたのはー…恨みを買ってしまって、用心棒を雇われた、ということが過去にあったからなのです…。だから、一番安全な手段が逃避だったのかなーと判断したゆえなのです。
はい、よろしくなのです!元々魔法使いですので、いろんな魔法は知ってるのです。一流…とは言えないですが。
でも、魔法使いって接近されたり、魔法を封じされてしまうと何も出来ないので、それを克服するために剣術科に入学した、というわけなのです。」
などと、自分のお話をすらすらと並べ。
「エルフェさんは腰の剣を見るに、私と同じ剣術科、或いは戦闘科でしょうか?」
彼女に質問を返しつつ、あるき出し、更に言葉を続け。
「エルフェさん、ごめんなさい。ちょっとお腹が減っちゃったので、ごはんー…」
■エルフェ > 「其処は否定させたくないけど……んー。そうだね。実際、学院の生徒を拉致して誘拐!なんて話も聞かないわけじゃないし。
あー……それはありそう。特に帽子とかの印章とかで、これだ!っていうのがわかりやすいもん。」
視線は自然と、彼女が被る帽子。其処の中央で輝くそれが、目の前の彼女がどういった存在かっていうのが分かる。
これが、逆に私服だったり……いかにもな私服だったりしたら、案外襲われなかったのかもしれないのだけど―――。
とりあえずそれっぽい音が聞こえなくなったなら安心、のはず!
「うわお。……予想以上にハードな過去が。……確かにねぇ。恨みって文字通り、根深いし。
そもそも、初対面なら……今回こうやって撒いたことで、あいつを捕まえるのは無理!次のやつにしよう!ってなるかもだし、とりあえずは安心かな。
……うん!よろしくっ!……ということで、わたしも精霊術に関しては色々と知ってるよ!一流というには、ちょーっと実力が足りないかもだけど……。
……おおー、勤勉!良い理由での入学だね! 実際、魔法使いだ!って油断して襲いかかってくるのを、こう、ずんばらりん!って切り伏せるのとか、割とあるあるだし。
……いやまぁ、わたしはこのナリで基本的に剣士に見られるんだけど。」
彼女の選んだ理由に関しては、とても理にかなっている。だから、自然と拍手しちゃったり。
「ん、戦闘科!剣以外にもいろいろなことをやっておきたいって思ってね!けど、剣の腕も見てみたい気が―――。」
なんて、続く雑談。中々に面白い子だ。
打ち解ければお話の幅も広いし、きっと学校でも社交的なんだろうなぁ。って思ってたところで……続けられた言葉。
「……あー。あれだけ魔法使って、逃げたりしたら、お腹減っちゃうよね。……んー。ちょっと待ってね?」
――ここで自分の鞄を漁ってみる。其処にあるのは……。
「パンはちょっと硬いし、あんまりかな。この果実は―――あー。うん。一応、食べ物あるけど……何か居る?それとも、我慢できるなら近場のところまで案内するよ?」
鞄の中にあるのは、保存食としている乾パンと、薄紫色の表皮を纏う瑞々しい果実。
――果実に関しては美味しそうだけど、先日仕入れた……それこそマタタビの何倍も、相手の毒になりそうな果物。もし、選んじゃったらどうなるんだろうなぁ。なんて思いながらの提案。勿論、がっつり行きたいなら案内しに行くつもりだけれど!
■シルニア > 「…うんうん、その点は似た者同士ですね。剣と魔法のハイブリッドは完全無欠…ほどじゃないですけど。2つの技術は出来ることが異なりすぎています。だから戦闘にも、生活でも、色んなところで役に立つ技術であり、力であると思いますです!」
存外、私と話が合う人なのかも。私の口は少しずつ早口になっていく。
「精霊魔法。さっき言いかけましたが、適合の段階で折れちゃいまして…。でも、ずっとお友達がいるみたいでなんだか楽しそうです。仲間と魔法を紡ぐ、そんな感じなのでしょうかね?」
私の知らない魔法。それから剣術に限らない戦闘技術。彼女からは面白い話が沢山聞けそうである。そして、その知識を私のちからに活かす事もできるだろう。
・・・だけど、まずは腹ごしらえ。激しい運動をする学校では昼食は控えめにしている。だから夜は尚更おなかが減るのだ。
…食生活としては良くない傾向だとは思うけれど、だって、食べた後に運動するとお腹が痛くなっちゃうんだもん。
「お腹は…けっこうぺこぺこです。なのでお店に──って、携帯食料があるのですか。
…じゃあ、それいただきつつ、ゆっくりお店に…でもよいでしょうか。」
なんて提案。彼女が取り出したパンよりも、果実に妙に目を奪われる。私の知らない果実だから、知的欲求がくすぐられているのだろうか。
きらきらと目をかがやかせ、彼女に聞かれるまでもなく、視線だけでも木の実を欲していると伝わるかも。
■エルフェ > 「そういうこと!器用貧乏とまでは言わないけど、両立出来ればスキはなくなっていく!
……剣を使う人には魔法を。魔法を使う人には剣を。そうやって出来ることを増やすことで……わたしたちは強くなっていくわけです。」
ふんす!こちらも早口。割と戦闘に関してはストイック。
話題に関してもいい感じに同意しちゃったりするんだけど。
「そうそう!――精霊と契約して、その子から魔力を借り受けるっていうのがわたしの精霊術かな。まぁ、契約っていうか……子供の頃からずっといっしょだったというか。
あ、それとね? 今回は精霊術っていうのはぱっと言っちゃったけど……無知の相手には割とこれ、強いんだよね。
何せ、精霊から魔力を借りるから―――気付かない人はわたしが術を使ってるって気づかなかったりで。
……適合に関しては、まずはシルニアちゃんがどういう属性の魔法が得意か。それも聞いてみたいな?」
そう。自分自身の魔力を使わずに、外から供給された魔力を利用する。
結果、魔法の使えない相手と油断させたりも出来るなんて、戦術的なコトもお話してみたり。
さり気なく彼女のプライバシーとかも聞いてるけど、それは相性の良さそうな精霊がなんなのか!とかを調べるためで他意はありません!
「だって、お腹減らない? これでも冒険者もしてるから、いつでもなにかしらを食べれるようにしてるわけっ!
……おっけー! もちろ…………。」
ということで、乾パンを差し出そうとしたら、視線を感じる。
そう、彼女が目を奪われているのは時価で購入したとても高価なくだもの。とても美味しいが、滋養の増強。はたまた、女性に関してはその感覚すら狂わせるほどの劇薬。
すでに初対面の女の子に差し出して、―――容赦なくその身体を貪った経歴を持つ少女。少し考える素振り。
「ん、これ気になる? シェンヤンのもっと向こうでの特産品なんだけど……味はすっごい美味しいし、滋養もあるんだけど……人によってはかなり酔っちゃう感じなんだって。
それでもよければ……食べてみる?」
―――ワンクッション置いて。蠱惑的なお誘いを。
実際は酔うなんてものじゃない。その身体が狂い、蕩け、食事を行う余裕がなくなるほどのもの。そんな悪魔の囁き……。
艶めいた果物を取り出し、手頃なナイフで半分に切り分けつつ、差し出してみようかな? 食べなかったら目の前で美味しくいただきます!
■シルニア > 「ほへー…
っ!前に適合しなかった精霊さんは、炎を司るものだそうなのです。メグメールの森林エリアでたまたま邂逅したのですが…言葉でコミュニケーションを取れると知らず、襲いかかるように得意の炎の魔法を見せたらそれもう脱兎のごとく…。」
実際には"炎を起こす魔法"であって私の扱う陣術の魔法の根端は"熱を生む魔法"であることも原因の一つかも。熱と炎は類似ではあるけれど違うもの。だとか、
精霊の力で魔法を引き起こす精霊術に対して、陣術は起こそうとする現象のルールを深く理解し再現すること。精霊に陣術を見せた事自体が失敗だったのかもしれない。だとか、
憶測を交えいろいろな話を彼女と交わし。
「き、きになるですっ!すっごいいい匂いがここまで!シェンヤン、そんなものもあるんですかー…!
っ!!たべる、たべるです!」
酔っ払っちゃう、なんて忠告も私の頭には入ってこない。またたびに近い成分に魅了されて判断がおろそかになっているのだけれど、それをただの興奮だと勘違いして気づくこともなく。
切り分けられた実を小さな口を大きく開けてかぶりつけば。
「~~~♪♪おい…ひぃ…きゅぅ…♡♡」
とても幸せそうな表情。なのだが、その表情は幸せそう、と表現できるのは依然として、しかしどこか妖艶な、とろけがちな表情に。半ばうつろになりながらももきゅもきゅと齧っていた果実をごくり、と音を立てて飲み込めば、すぅ、と目を閉じられて、エルフェにより掛かるようにして倒れ込んでしまう。
その寝息はとても荒く、しかし覚醒することはない。
…そんな状態に陥ってしまい。
■エルフェ > 「んー。イフリート。もしくはジャックオー?……その辺りかなぁ。シンプルにサラマンダーかもしれないけど。
あー。熱と炎はちょっと違うね!そうなると、少しだけ考えてみようかな……。」
あなたに噛み合う感じの精霊。って――お話を聞く限り、見つけるのは少しだけ難しそう。
お父さんにも聞いてみるね!とか、色々と進む話題。はてさて、目の前の女の子が本当に精霊を仲間に出来るかは……また別のお話何だと思う。
「―――はーい! じゃあ、美味しく頂いてね?
……んむ。……う~ん……やっぱりおいひー……♪」
楽しげに笑いながら差し出した果物。
これは本来、女性に対して強く効果を発揮するものだが、両性であるこちらには滋養。雄としての効果が強く出ているらしい。
だから、真横で齧った相手のように文字通りの腰砕けになったりはしない。ただ、誘発される効果とすれば……
絶倫とも言える精力の付与、ぐらいで。
「……あー。やっぱりこうなっちゃうよねー……。というか、ここまで効き目があるって、もしかして……?
ま、いっか!確かめるのは後々っ!……それじゃ―――いただきまーす……♪」
そんな、こてんと倒れ込んだ小さな身体を軽々と抱き上げ、背負ってしまえば……向かう先は大通り。
人が見れば、眠りこけた後輩を抱き上げ、介抱する優しい少女に見えるかもしれないけど、そうじゃない。
実際は人気のない場所にあるそういったホテル―――。
いやらしい魔法や淫具。さまざまなものがあるそこで、彼女をいただくためであって……。
二人の影は、街の中に消えていく。
ある意味彼女にとっては、さっきの人たちに囚われたほうが幸せだったのかも……?
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシルニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエルフェさんが去りました。