2022/09/30 のログ
ご案内:「平民地区 夕刻の酒場通り」にイェンさんが現れました。
イェン > (週末を前にした金曜の午後。折よく休講となった講義の時間を利用して簡単な冒険者依頼をこなしたイェンは、黄昏色に染まる酒場通りの夕景を歩いていた。)

「―――そろそろ本格的な防寒具も買っておいた方が良さそうですね。流石にローブだけでは肌寒くなって来ましたし……」

(呟きと共に掻き合わせたローブの下は品の良い墨色に金糸の縁取りがなされた学園制服。タックブラウスの胸元を飾る朱色のリボンタイやプリーツを重ねるタータンチェックのミニスカート、太腿の純白を浮き上がらせるニーハイソックスの絶対領域が、ポニーテイルを揺らす美貌と共に愛らしさとコケティッシュの混在する女学生の姿を形作っていた。しかし、膝上まで覆う編み上げブーツや、柳腰に回された皮ベルトから吊り下げられたナイフなどは実用性を重視した冒険者御用達の代物であり、ブレザーの上から羽織った安物のローブと共に少女がただの女学生ではない事も示していた。)

イェン > (冒険者をはじめとして肉体労働者の姿が多く見受けられるこの区画は、酒場の多さも相まって荒々しく雑然としていた。そんな中、黒髪も艶やかな美少女顔や細身で華奢な制服姿はどうしようもなく悪目立ちしてしまう。周囲からいくつもの不躾な視線を向けられるも、真っすぐ伸ばした背筋や乱れのない歩調、目尻を朱化粧で飾る切れ長の双眸は毅然として微動だにしない。普段の食事は寮で済ますイェンが外食を選んだのは、本日の仕事が思いの外多めの収入をもたらしてくれた事以外にも確固たる目的があっての事。良さげな食堂を探して紫瞳を走らせる無表情からは決意のようなものが滲んでいて、それが酔っ払いからの安易な声掛けを遠ざけていた。その癖、柔らかな膨らみを形成する胸内がどきどきと普段よりも早いリズムで鼓動を鳴らすのは、初めての行いに対する興奮と緊張が原因という子供っぽさもあったりする。)

「やはり冒険者に人気の食堂は酒場も兼用している様ですね。絡まれる危険は高まりそうですが、冒険者とはそういう物だと開き直るべきかも知れませんね……」

(ほっそりとした長脚を停めたのは酒場通りの終端付近。周りの店と比べて一回り大きく、それに見合う賑わいを醸す一件の飲食店前。スイングドアの向こうから聞こえてくる喧騒はやはり荒々しい物だったが、酒精と共に香る食事の匂いは中々に食欲を煽る物だった。)

ご案内:「平民地区 夕刻の酒場通り」にコルボさんが現れました。
コルボ >  帳が落ちるのが早くなってきた頃の夕暮れ時。
 男は大きめの店で早々とエールを煽りながらグラタンにローストチキン、焼き牡蠣、
 ポテトサラダをつついている。

「やっぱ早めに来ておいて正解だなー」

 仕事帰り、唐突に牡蠣が食べたくなったものの、この時期出せる店がここぐらいしか思いつかず、
 徐々に大きくなっていく喧騒の中、ちびりちびりと肴を口にして。

「……ん?」

 ふと、荒くれた男達がごった返す中、雰囲気が違う少女が入ってくる。見れば顔見知り。
 それも秘めた性癖を知る相手。

「おーい、おーい。イェーン。こっちだこっち。奇遇だな」

 片手をヒラヒラさせながら、ある種の気迫に満ちた貴女へ軽い声色で呼びかけて。

「何だったら相席するかー?」

イェン > (意を決して店内に踏み込んだ。スイングドアを押して橙色の明かりの中へと入り込んだ小躯に吹き付けたのは、暖房と人いきれの熱気。そして酒精を帯びた荒々しい喧騒だった。ただの町娘の様に立ち竦むなんて事はないけれど、それでも若干気圧される物を感じはする。とはいえ、鉄壁のポーカーフェイスは眉一つ動かす事なく、空いている席は無いかと店内を見回した。店内にいるのは男ばかりという訳ではないにせよ、料理を運ぶ給仕娘は娼婦仕事も請け負う擦れた雰囲気の者ばかり。所々に見られる女冒険者は、荒くれどもとの正面からの殴り合いにも後れを取る事のなさそうな女傑ばかりだ。明らかに若く、線の細い、儚げでさえある女学生の姿は、あからさまに浮いていた。そんな少女に遠方から投げかけられる声。聞き覚えのある声音に目弾きの視線を向けると、そこには顔見知りの男性教諭の姿があった。)

「――――クロウ先生……いえ、今はコルボ様、でしたか。お久しぶりです、今晩は。そういえば先生も本職は冒険者だと仰ってましたし、ここでの出会いも不思議な事ではありませんね」

(危なげのない足取りで混雑を縫い、声音の主の元へと小躯を運んで言葉を返す。完全にアウェイなこの場において、知人からの声掛けは正直な所ありがたかった。若干の心細さも感じていたため、安堵の思いもある。無論、先ほどから代わり映えのしない無表情はそんな学生らしく可愛らしい内面など一欠片も漏らしはしないのだけれど。)

「はい、ご迷惑でなければ」

(続く言葉にこくりと小さく頷いて、彼の対面に腰かける。こちらに集中していた視線が何割も軽減したのは、小娘が一人きりという状況から、一癖も二癖もありそうな優男というコブ付きになったからに違いあるまい。)

コルボ > 血気盛ん、むくつけき男達も目立つ中、その視線が貴女に向けられていたのは間違いない。
周囲の女性達、女冒険者達。その中にあって線の細く駆け出しともいえるまだ日常から抜けきっていない出で立ち。
だがそれでも、経験から来る感が手を出さないように告げる。

「おう久しぶり。俺も仕事帰りでな。込み合う前に陣取ってたのよ。
 ……お前みたいに迷い込む駆け出しの生徒もたまぁにいるしな。

 ここは穴場、ていうにはデカいか。良い料理が沢山あるけど、イェンが来るにゃちょっと雰囲気が良くないぜ?
 だいぶ冒険してんじゃねえか。」

 迷い込む、と評したものの、その雰囲気と這わせる視線を観察して、自らの意志でここに来るように決意してのことだろうと想定して。

「迷惑も何もうまい酒に旨い飯、イイ女がいればそれだけでハッピーってもんさ。
 こっちこそ乗ってくれてありがとよ。

 ……変なこと聞くけどよ、奢らない方がいいか?」

 男の連れ合いとならなければ、男達はいずれ貴女に声をかけ、手を伸ばしていただろうか。
 手をこまねいていても、時には脅威を前に踏み込むだけの無謀な者達。
 目の前の擦れていない極上の女を逃す道理もない。

 意図せずかそういった構図から引き離した男は妙な質問をしてきて。

イェン > 「別に迷い込んだ訳ではありません。覚悟と目的を持っての来店です」

(どこか不良教師といったちゃらんぽらんな雰囲気を持つ彼の、存外に面倒見の良い発言に対し、愛想のない留学生の返事は素っ気ない。彼に対して隔意があるという訳ではなく、この留学生は誰に対しても淡々としているのだ。年上の異性に対する緊張もある。)

「はい、確かに美味しそうな匂いです。野趣に溢れてはいますけど、食欲を刺激されたのは確かです。 ――――ええ、コルボ様と同席出来なければ、今頃は誰かに絡まれていたでしょうね。ですが、今後も冒険者としての活動を続けるつもりですから、こうした雰囲気に慣れる事と《顔見せ》は必要かな、と」

(ここでいう《顔見せ》というのは、己が無力な小動物ではなく脅威に対して力を持って返す事の出来る一端の冒険者であると周囲に認識させる行為の事だ。要するにこの学生冒険者は、本日ここで手近な相手からの喧嘩を勝って返り討ちにしてのけるという荒事の覚悟を持って入店したという事だ。)

「いいえ。男性からの、それも先輩冒険者からの好意ですし、奢っていただけるというのでしたらありがたくお受けします」

(桜色の唇を僅か持ち上げ、目弾きの双眸を閉ざして頭を下げる。奢りに対するリップサービスの様な笑顔は、美しくこそあってもやはり体温の感じられぬ人形めいた物。黒髪の馬尾がその動きに合わせて小さく揺れて、店内を照らすランタンの橙灯を反射した。)

「では、折角奢って頂けるのですから、新人冒険者では中々手の出ない、少しお高い料理を試してみましょうか」

(そんな言葉と共に薄笑みの唇の奥でくすりと漏らした忍び笑いは、僅か細めた紫眼と共に人間らしい感情をほのかに覗かせた。男性教師への揶揄い。しかし、引き寄せたメニューに書かれた料理名はシェンヤンのそれとはまるで違う。スイーツの類は別として、王都での外食は数える程にしかしていない少女にとって美味しそうな料理の選定は難易度が高かったらしい。)

「…………先生、おすすめの料理などありますか?」

コルボ > 「騒がしいけどただの店だぞ、覚悟なんかすんじゃないよ。
 ……ああいや、イェンはしたほうがいいか。」

 胸が際立っている。年に不相応な胸が。
 男は鷹の目を持っている。故に見抜く。
 だが男は皆獣。皆発育した胸を着やせする制服の上から見抜いているのだ。

 それも、娼婦でもある給仕に勝るとも劣らない大きさ、そして男が知っている感度を鑑みて。

「体は大事にしろよ。しかし顔見せね……。イェン、お前ゴブリン退治の依頼は受けたか?」

 貴女の反応や振舞いは自分への緊張、その内面を知っていればそれは理解できてい。
 だが、ともすればここにいる血気盛んな男達とも勝るとも劣らない気迫の正体を悟って、
 そんな問いを投げかけて。

「ん、そか。懐潤ってる時に自分の金で食う飯は旨いからよもや、とも思ったがな。
 よし、センセーが好きなもの奢ってやるよ。
 おう、店のとっておきの肉でもなんでもいいぞ。」

 人形めいた振舞いに男はつまらなさそうな反応を返すことなく、手をヒラヒラさせてメニューを見ている貴女に応える、が、
 まだこちらでの外食に慣れていないのか悩ましいそぶりを感じて。

「ん-、俺はここの焼き牡蠣好きだけどそうだな。
 お高いやつならさっき言った肉でブリアン確かあったし、
 おススメなら、ここのオムライスは半熟のオムレツに酸味が効いたトマトソースが旨いし
 ハンバーグも肉厚で肉汁たっぷりでいける。

 けど、だ」

 不意に言葉を切って。

「イェンお前、冒険者になってからフィッシュ&チップスは食ったのか?
 ここのは極上だぜ?」

 永遠のエールのお供。冒険者の味方。高くはないが、まずは初体験ならこれだろうと。