2022/08/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 魔術屋『金杖の双頭蛇』」にロブームさんが現れました。
■ロブーム > 煉瓦造りの小さな小屋。
擦りガラスのあしらわれたその扉を開ければ、応接用のソファが二つ。
そして、壁には様々な魔術由来の品がギッシリと置かれた棚が幾つも置かれている。
此処は、魔術師ロブームの魔術屋。
彼が、『美しい心』を探す為に開いた、店の一つである。
満月の夜にのみ開かれるその店に、今はまだ、客はいない。
そのソファに座るのは、太った男。
不気味な黒いローブに身を包み、来客用のソファに座っている。
「客は来るのか来ないのか。趣味として始めた商売故、儲けなど考えてはおらんが」
この店に並ぶ魔術の品一つ一つが、埒外の価値を持つ逸品だ。
値も、殆ど彼の気分次第。ふっかける事は無いが、安く叩き売る事は確かにある。
しかし、それ故に。彼は客を品定めする。
それが、ただの客ならば、金貨を対価に。
美しき心を持つならば――特に女性ならば、その心を確かめる事を対価に。
「商売としては、前者が来てくれると助かるが……私としては、後者を願いたいね」
そう呟きつつ。
彼は、今日も来店を待つのだった。
ご案内:「王都マグメール 魔術屋『金杖の双頭蛇』」にクリステルさんが現れました。
■クリステル > 真円を描いた月が天高く昇る夜。
そんな夜にのみ開かれる店があるという噂、その真実を調べる指示が出て、ちょうど良いと変装して探している。
普段学園内ではとらない姿、すぐに素性もバレないから丁度良いだろうと静かに通りを歩いている。
「あの店でしょうか?」
小さな通りをいくつか歩いた後に見つけた、入り口付近がキラキラと輝いて見える煉瓦造りの小屋、あまり見かけないタイプの物だと向かっていく。
摺りガラス越しに僅かに中は見えるが、対象としている者の想像が付かず、小さく頷くと扉を開いて中に入る。
「ごめんくださいませ、こちらは……っと、ロブーム様?」
棚に並べられた魔術の品を眺めながら、少しずつ進んでいくと棚が終わっている。
並べられた物の価値観を計りながら進んだ先、開かれた場所になっているのに気が付き、店主がいるのだろうと声をかける。
小さく下げた頭をゆっくりと上げ、ソファに座る人物を眺めて思わず驚きの声を上げる。
店主なのだろうか、それとも同じく客なのだろうか、それすらも判断が付かず、少々間の抜けた表情を浮かべて。
■ロブーム > 扉を開いた少女を見て、男は少しだけ眉を上げた。
その少女は、現在彼が融資している者の内の一人だ。
最終的に"堕とす"つもりではいるものの。今はまだ、様子見という所だが――まさか、彼女が此処に来るとは。
とはいえ、この様子では、彼女はどうやら自分が店主である事は知らぬらしい。
「おお、クリステルか。まさか、こんな所で出会おうとは」
そう言うと、男は指を小さく動かす。
すると、ソーサラーに載ったティーカップが二つ。
ソファの間のテーブルに、何時の間にやら載っている。
「良く来たね。我が魔術屋、『金杖の双頭蛇』に。
私が店主であると知らずに来た以上、何かしらこの店に用があるのだろうが――まあ、まずは座りなさい。
求めるものが品にせよ、それ以外の何かにせよ、私が承ろう」
「砂糖やミルクが要るならば、遠慮なく言いたまえよ」と。
そう言う男の表情に、今の所悪意は無いが。
しかし、彼女の"用事"如何によっては、その表情は簡単に変わるだろう。
■クリステル > お互いに姿を確認し、片方は驚き、片方は少々不思議そうにしている。
すぐに状況を理解されてかけられた言葉、変装を見抜かれている事に気が付かず、示されるままソファに座る。
「ロブーム様の店という事でよろしいのですね?」
指を小さく鳴らして用意されたティーカップ、そこでやっと店主なのだと気が付き、申し訳なさそうにまた頭を下げて。
悪意のない表情の前に、小さくほっと息を吐き、目の前のカップを手にして煽る。
ことっとソーサラーの上にカップを置き、落ち着きを取り戻したところで改めて見つめる。
「噂、そう噂の確認です。満月の夜のみに開かれるお店の」
尋ねられると正直に答える。
店の内情自体は噂に上がっていなかった、それの確認も含まれていたのだが、そこはどう訊ねるべきかに少々迷いが湧き、辺りを軽く見回す。
取り戻した様で取り戻しきれていない落ち着き、それを隠すようにもう一度カップを手にし、小さく喉を鳴らして嚥下して。
■ロブーム > 「噂の確認、か。それがどの様な意図で行っているかはさておいて。
そういう事なら、私も協力しよう。さして、隠すようなものもないのだしね」
こちらも、紅茶を一啜りし、彼女の方をじっと見る。
今のところは、特に害をなすつもりはない。
というより、害せない、に近い。
現状、彼女はこちらに敵意を持っておらず、そして彼女と自分の間で何らかの取り決めが成された訳でもない。
此処で突然に力づくで害する事もできるが、それは優美さに欠ける。
やるならば、それなりのシチュエーションで、というのが彼としての本音だった。
「しかしまあ……。
こんな事を言うとがっかりさせてしまうかもしれないが、営業日の縛りについては、さして意外な真実がある訳ではないのだよ。
此処は、私の趣味でやっている店でね。『本業』との兼ね合いで、あまりこちらには時間が割けない。
だから、店を開くのは満月の夜、と。そう定めているに過ぎない」
これは事実だ。彼には多くの副業があり、その内の一つがこの店である。
そして、本業はまた別にある――学院の教師ではない、別の"本業"が。
満月の夜にのみ営業するというのは、謂わばちょっとした興味を引く為の誘い文句に過ぎない。
但し。
「但し、我田引水の物言いにはなるが。
この魔術屋のマジックアイテムは、どれもこれも一級品だ。
凡そ、人間が思いつくありとあらゆる願いが叶うと言っても過言ではない。この店は――そう、願いの叶う店なのだよ」
さて、と男は言う。
これで、一応は彼女の疑問も少しは解けただろうか。
とすれば、此処からはこの店の店主として、聞くべきことを聞かねばなるまい。
「とはいえ、店主の長話だけでは、噂を確かめたとは言えまい。
願いが叶う店などと、眉唾の様なものだからね」
そう言うと、ふむ、と考えるそぶりをし、そして頷く。
彼女の目的である、"噂の確認"を達成させてやるには、彼女自身が客になるのが一番早い。
そして、当然彼にそれを止める理由も無い。
「君にも一つぐらい、願いと言うものがあるだろう。
もしよければ、聞かせてくれないだろうか。
その願いに沿ったマジックアイテムを、君にお見せしよう――無論、欲しいとあらば、それなりに対価を戴くことになるだろうがね」
■クリステル > 「問題があるのか、ないのかだと思います。
ありがとうございます、ロブーム様」
煽った紅茶は口当たりも良く、何かあるようには思えなかった。
カップを置き、小さく深呼吸をして気持ちを落ち着けようとする。
元々は本当かも分からない噂の確認であり、不安もあった。
噂は本当の事であったが、店主が知り合いで協力までして貰えるとは幸運だった。
「がっかりも何も、不安が減るもしくは無くなる事がこの場合大切な事だと思います。
趣味だから本業に支障が出来ない時に開いていると、分かりました」
副業であれば確かにと納得できる答え、別段おかしく思う事もなしに信じる。
ただ、何故満月なのだろうと少々気になるところではあるが、噂を解明する上では特に大事な事ではないだろうと一先ず後に置いておく事にする。
「マジックアイテムを扱っている店なのですね。
願いが叶うという事ですが、眉唾だとは思いませんよ。
願った者が納得したら、それは叶っているという事でしょう。」
ありとあらゆるというのは、こういった場合にはよく言われる事であり、本当ではないとは思っている。
現実的な度合いとしたところで線を引き、叶ったと思わせておく事なのだろうと理解して、己の納得具合を告げる。
そうすると考える素振りをして、本当は納得いってないのではとばかりに告げられた言葉にきょとんとする。
「願いは………ないですね。
そう仰っていただけるのは嬉しいですが」
そんな事が出来るはずがないと一度じっと見た後左右に首を振って告げる。
臨んだところで絶対に叶うはずがないのは分かっているから、そんな都合の良いものなど絶対にないだろうと。
「対価ですか、どうなってしまうのかが、ちょっと怖いですね。
此処だけ、本当にここだけの話ですよ、可愛がって欲しいなと………」
じっと向けられる視線から外れるように顔を反らし、ぼそぼそっと恥ずかしそうに告げる。
無意識の内にボソッと「飼う」と口から洩れたのは自身も気が付かず、赤く頬を染めて。
■ロブーム > 願った者が納得したなら、それは叶っている。
そう聞いて、男は少しだけ頬の片端を歪めた。
それは、彼女が自分の力を見誤り、侮っているから――ではない。
そういう、現実的な物の考え方ができる彼女が、好ましかったのだ。
「まあ、そういう解釈も確かにありだ。
実際、そういう願いの叶え方をした事が無いではないしね」
だから、此処ではそうはぐらかす事にして。
願いが無いという彼女の言も、成程と受け流すにとどめる。
彼女の境遇からして、そんな訳は無いが……しかし。
かといって、問い詰めるのも野暮だろう。
そんな事より、今は聞くべき願いがある。
「ふむ……可愛がって欲しい、とな」
本来、彼女の立場からは出るべきではない発言であるが……しかし。
この店には誰もいない。聞き耳を立てる者もいないとなれば、多少羽目を外させるのも良いだろう。
対価は――まあ、追々考えるとして。
「さて、此処は願いを叶える店。当然叶えるにやぶさかではないが――さて。
対価はともかく、どの様に叶えるかが大事か……ふむ、そうだ」
と言うと、男は指を鳴らす。
すると、彼女の前に、何処からともなく大量の衣服が現れる。
それらは、規則正しく列を成して宙に浮いているが、その中には様々な衣服がある。
水着、バニー、ドレス、町娘が着るようなものから、娼婦が着るようなものも。
中には、本物の様に肉体に着けるタイプの、魔法の着け耳と尻尾のセットなんかもある。
「この中から、自分が可愛がられたい姿を探すと良い。
動物の様に可愛がられたいのか、それとも美姫の様に寵愛されたいのか。
勿論、君のその着衣のままが良いなら、それでも構わぬ――どの様な形で愛されたいのか、示してくれ」
ご案内:「王都マグメール 魔術屋『金杖の双頭蛇』」からロブームさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 魔術屋『金杖の双頭蛇』」からクリステルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 大通り沿いにある小さな酒場、隅の方の席でうつらうつらと眠そうにしていた。
今日は寝起きが悪く、頭がぼーっとしていた。そんな状態でも普段どおりに朝食を作ろうとしたけれど、仕事が忙しかったせいで買い物も忘れていたらしい。使えそうな食材もなく、そうなるとだんだん作るのも面倒に思えてきてしまった。
もう朝から外食でもいいかと、一応身なりくらいは整えて外に出たのが、すこし前の話。
お酒を飲む人もすくない時間の酒場は、それでも人が入ってはいたけれど、繁忙時に比べると静かなもの。
眠たさを引きずったまま座っているうちに、注文していた食事が届いた。
簡単なサンドイッチと、普段はあまり頼む事のないブラックコーヒー。
湯気とともに漂ってくる匂いを嗅ぎながらも、なかなか手を伸ばそうとしない。寝ぼけまなこで自分の前に並べられた食事を見つめながら、しばらくぼーっとして。
「……ぁ」
コーヒーが冷まさなくても飲めるくらいの温度になるころ、やっと我に返った。眠気を振り払うように頭を揺らして、やっとマグカップに手を伸ばし。
■ミンティ >
「……~~っ…っ…」
あまり飲む機会のないブラックコーヒーを口にすると、カフェインよりも苦さと濃さで頭の中がひっかきまわされたような気分。ふるる、と身震いを走らせ、数秒たつころには眠気も吹き飛んでしまった。
ようやく朝食に手をつけはじめてからも、まだあくびを零したりはしていたけれど。そんな風に朝のひとときをのんびりと過ごして…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。