2022/07/19 のログ
ナータ > 「~~~~♪、~~~~♪」

深夜の街は静かだ。
明かりが点いているのは夜通し空いているだろう酒場か娼館くらいなもの。
貧困地区に比べれば治安は悪くない。
まあ、油断していたら……ということはあるが
生憎毎日の生活費に事欠くくらいだ。
取れる物は命くらい。

ついつい鼻歌なんぞ歌いながら、どこへ行くでもなく歩き続けて。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にマヌエラさんが現れました。
マヌエラ > 深夜の街の、徘徊者。
背徳の都マグメールといえど、平民地区ともなればそう多くはない存在。
その1人、魔術師然とした女の耳に届いたのは、美しいハミング。

「きれい……」

女もまた気まぐれな散歩の途中。音色の主を探して足を向ければ、程なくして見つけることになる。

「――綺麗な、歌声ですね」

微笑みながらの、賞賛を。

ナータ > 「~~~♪……ふえっ……!」

頭の後ろで手を組んで、暢気な散歩道。
それも、掛けられた声で唐突に中断されて。

「あ、あわわわ……聞いて……ました……?」

かぁ、っと顔が赤く染まる。
まさか誰かに聞かれてるなど思わなかったから。
声の方に向くと、あわあわと顔の前に移動していた手を振って。

マヌエラ > 慌てる様子が可愛らしく、元よりおっとりした顔立ちに、くすっと笑みを浮かべてみせる。

「ええ。夜のしじまと微かな喧騒に、とても似合っておいででしたよ。
 ――まあ、でも残念。私が話しかけてしまったので、せっかくの戦慄が止まってしまいました」

 あらあら、とつぶやいて。

「続きを、お聞かせいただけますか?」

ナータ > 「ううう……」

くすくすと笑みを浮かべられ、一層気恥ずかしさが増す。

「そ、そんな大層なものではっ……べ、別に上手いわけでもなんでも……」

ぶんぶんと首を振って。
決して歌が得意だったわけでもなく。
単なる気まぐれだった。
そんな風に言われては、却って申し訳ないくらいに。

「いえ、そんなそんな……何もお聞かせできるほどのものは……」

ポリポリと頬を掻きながら。

マヌエラ > 「耳に快かったのです。鈴の音のように可憐で。
 あら……ふふ、恥ずかしがり屋さんなのですね。
 ご謙遜なさらなくとも良いと思うのですが……。
 私は、色々な歌声を、お声を聞かせていただきたいと思いましたよ。
 優れた楽器が、そうであるように……」

 と、何かに気付いたように言葉を途切れさせ。

「そうですね、我が家にご招待して、“演奏”していただきたいです!」

 にっこりと人好きのする微笑みを浮かべると同時。
 ナータの足下、彼女自身の影の中から無数の長大な触手が噴き出すように生え、ナータの体を絡め取って影の中へと引きずり込もうとする。

ナータ > 「な、なんか……吟遊詩人さんみたいに仰るんですね……
私なんて、何も取り柄がないから……あはは……」

くすぐったいほどに持ち上げてくる相手に。
決して謙遜しているわけではなかった。

「う、歌なんて、全然っ、知らないですし……
さっきのだって、村の伝え歌ですし……
ご、ご満足いただけるようなものは……」

娯楽に乏しい村である。
農作業の最中や収穫を祝う歌くらいしか知らない。
他人の前で歌ったことなどなかった。

「演奏……?えっと、お家、で……?」

少しだけ違和感があった。
自分は歌っていたし、相手もそう言っていたはず。
なのに求められたのは演奏。
それも唐突に、相手の家で。
きょとん、と首を傾げた瞬間―――

「え……え?やっ、やぁぁぁ……!」

自身の影の中から這い出た触手。
少女の脚に巻き付き、そのままずるずると影の中へと引き込んでいく。
夜の静寂の中、少女の声が響いたが
この街では「襲われるなんてよくあること」と誰も様子を見に来ずに
少女は影の中へと引きずり込まれた。

マヌエラ > 「そんなことありません。素敵な歌声でしたよ。
 もっとたくさん、聴かせてくださいね。」

 なすすべなく引きずり込まれていく少女へ、微笑みと共に告げて。

 やがてその場所には誰もいなくなる。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からマヌエラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からナータさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にネイスさんが現れました。
ネイス > まだ日も高い昼下がり。
昨日夕刻にお宝探しから帰宅して、一服して、お宝の仕分けをして。
骨董品屋だと道具屋だの、それぞれ高く買い取ってくれるところへ売り払ってきて、今。

きちんと仕分けした甲斐もあって、中々の収穫となった。
これだけあれば、またひと月は安泰だろう。
多少の贅沢や少し遠出でリフレッシュというのもいいかもしれない。

なんて、鼻歌交じりに歩く。
しかしまぁ、これだけ頑張って懐を温めたのだから多少自分の為に使ってもバチは当たるまい。
久しく通っていない花街へ繰り出すか……冒険者ギルドで腹を空かせている新人冒険者でも食い物にするか。
小さな噴水を前に、右に向かえば花街。左に向かえばギルド。
腕組みして悩んで、唸っていた。

ネイス > 「……菓子でも買って帰って、襲う支度でもしとくか」

悩んでいる内にどちらに進む気も無くなってきた。
ジャラリと音鳴らす袋は胸の内にしまわれたまま。
本日は犠牲者の数を増やすこともなかった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からネイスさんが去りました。