2022/04/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
ミンティ > いつもなら長引く商人組合の集まりが、今日は珍しく早めに終わった。内心ほっとしつつも、早く帰りたがっていたなんて思われたら堪らない。表面上はいつもどおりを装いながら解散までこぎつけて、あとは夜の街をふらふらと歩く。
今回の会合に使用したお店は繁華街の中にあったから、夜になっても変わらない賑やかさには目が眩みそうになる。そうでなくても、あちこち煌びやかだったり、客引きの声が大きかったりして、なかなか落ち着けそうにない。
中には目のやり場に困るような看板を掲げた人もいて、そういったお店の方向からは遠ざかるようにしているつもり。繁華街の外へ行かない限り、どこに逃げたって同じだろうけれど。

「ぁ……」

ふと目についたものに惹かれて足を止めた。道端に小さなマットを敷いて、手作りらしいアクセサリーを並べている。
裸眼の力を用いずとも、それらがあまり高い石を使っていないだろうとは察しがついた。けれど、元々の造形なんかに、つい見惚れてしまい。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にステラさんが現れました。
ステラ >  
いつも通りのソロ依頼を終えて繁華街を歩く。
繁華街は苦手だ。
飲み屋の客引きとか、ナンパしてくる人が多いから。
なので早く抜けようとすたすた歩いていたら、道端で安っぽいアクセサリーの露店商を見付けた。
なんとなく、歩を緩めて近付いて、

「――っ、……」

先にそれを眺めていた眼鏡の女性にぶつかった。
ぶつかったとは言っても、軽く肩が振れた程度だが。
普通ならば軽くすみません、と言えばそれまでのことなのだが、生憎こちらは極度のコミュ症。
内心パニックで彼女の顔を見たまま硬直することしか出来ない。
端から見れば、自分からぶつかっておいてめちゃめちゃガン付けしてくる危ない女である。

ミンティ > 歩道の中心から、きちんと距離を置いて開かれている露店。おかげで繁華街の道端にしゃがみこんでいても、邪魔な扱いを受ける事はなかった。
他にアクセサリーを見ようとする客も寄ってこなかった事から、のんびりと時間を使って、ブレスレットを自分の手首に添えてみたりする。
地味な服しか着ない自分にとって、どれがいいものか、似合っているのかはわからなかったけれど、こうして選んでいる時間が楽しいものだった。

「っ、……ぁ、すみま、せ……っ」

けれど不意に隣からぶつかられて、穏やかな時間も終わりを迎えた。
あわてて相手の方へと向き直り、謝罪をしようとする。けれど睨みつけてくる気配を感じとると、震える唇はそれ以上の言葉を発せなくなってしまった。
結果、相手の顔をしっかり確認する事もできず。背格好から歳の近い同性であろうとは認識するものの、ブレスレットを試していた姿勢のままで固まってしまう。
頭の中は、どなりつけられたらどうしようとか、そんな悪い予想でいっぱいで。

ステラ >  
やばい、相手も固まった。
完全に誤解されている雰囲気を察知。
だがそれまで。
早く謝れぶつかったのはこっちだぞほらたった三文字だまだごめんですむほらはやくだからボッチなんだようるせぇ好きでこうなったんじゃないやいいいから早く謝れはやくほら。
脳内でいつの間にか三者会議が始まるも、相変わらず見た目はガン付け続ける危ない女である。
ふと相手の手になにか光るものがあるのに気付き、半ば逃げるように視線をそちらへ。
ブレスレット。

「……――そっちが、似合う、と思う」

並んでいるものを指差して、なんとか声を絞り出す。
シンプルな銀色で、ちょっとアクセントのように緑の石が付いたもの。
派手すぎず地味すぎず、彼女のシンプルな服装とよく似合っている。
――等と言うことは一切考えておらず、とりあえず苦し紛れに適当なことを言っただけであった。

ミンティ > 相手の顔を見た瞬間に罵声を浴びせられるかもしれない、そう思うと視線は他の部分から情報を得ようとする。なんとなくの体格や服装から同性だとは察して、それから、腰に帯刀している事にも気がついた。
武器なんて持ち歩かない、なにかあれば決まって被害者側に立っているような自分にとって、新たな情報はさらに身を竦ませるのに十分なものだった。
びしりと固まってしまってから、今度は、かたかたと小刻みに震え始める。どういう意図でぶつかってこられたのかは定かでないものの、きっとよくない理由だろうと推察できた。
この状況で、まさか相手が自分に対する謝罪の言葉を必死になって捻り出そうとしているとは夢にも思わず。

「ぁ、……ぁ、の、……、ゎ、た……し、…そろ、そ……っ、……?」

ほとんど音になっていないような掠れた声で、用は済んだから退散すると主張しようとした。とりあえずこの場を去るだけで許してもらえるような事情であってほしい事を願って、満足に動かない身体を、どうにか立ち上がらせようと。
そんな最中に、ぶっきらぼう、に聞こえた声。きょと、と目を丸くして、彼女の指が示したブレスレットに視線を向ける。
いきなりすぎてよくわからないけれど、おすすめされたんだろうか。その言葉を無視するのも恐ろしかったから、手にしていたブレスレットを置いて、あらためて、勧められた方を手首に添えてみる。

ステラ >  
相手は震えだした。
こちらも震えだした。
誤魔化したはいいが、そもそもまだぶつかったことを謝っていない。
かわいそうに、彼女は今にも泣きそうなかんじでこちらが示したブレスレットを付けている。
あぁ違うんです。
こっちが悪いんです。
回りを見ていなかった私がいけないのです。
意を決して、とうとう謝罪を口にすべく口を開く。

「……ごむぇふ、――ん、んんっ」

噛んだ。
ごむぇふってなんだ。
恥ずかしさを誤魔化すように咳払い。

「――ごめん、よそ見してた」

言えたぁぁぁぁぁぁぁ言えたよおかあさああああああああああん!!!
私お母さんいないけど!!!!
とにかく謝れたよおおおおおおお!!!!!!!!
内心カーニバル状態である。

ミンティ > 最初に手にしたブレスレットの方より、彼女が勧めてくれたものの方が、デザインが落ち着いていて身に着けやすいような気がする。
手首に添えてみるだけでなく、実際にはめてみたりして、確かにこっちの方がいいかなと納得はした。けれど、彼女の行動は理解できないままだった。
いきなりぶつかってきて、睨みつけられ、威圧された。最初の一つ以外は完全な勘違いであるものの、そんな行動の流れからブレスレットのおすすめをされるようなコミュニケーションを取った事がない。
勧めてもらった事を素直に感謝したらいいのか、戸惑っている間に、隣で咳きこむような声。
きょと、と目を丸くしながら、おそるおそる振り向いてみる。

「……え、と。……っ、あ、いえ、はい、だいじょうぶ、です。
 どこも、痛くはないし、…あの、わ、わたしの方、こそ……っ、
 なんだか、変な感じにして、しまって……っ、す、すみませんっ……」

相手が人見知りかどうかはわからないままながら、謝罪を切り出すタイミングを掴み損ねていただけらしいと知れた。
その言葉に嘘があるようにも思えず、となると意識しすぎていた自分の方こそ無礼であったように思えて。
あわあわと手を振りながら、今までの無口さが嘘のような早口で謝罪を返し。

ステラ >  
いきなり堰を切ったように飛び出す彼女の言葉。
一瞬キョトンとしたあと、盛大に目が泳ぐ。
マッハ3くらいで泳ぐ。

『あ、や、私も、迂闊で、すぐ謝れ、なくて、悪いの、こっちだから……』

と、自分では言ったつもりだが、実際のとこは

「……や、わ、――く、――……」

くらいしか聞き取れないだろう。
テンパってる上に顔の半分をマントに埋めた感じで喋るからモゴモゴ極まりないのだ。

ミンティ > 余裕がないと早口になってしまうのは悪い癖だった。
とにかく謝らないと、という気持ちばかり先行するせいで、はっと我に返るころには、相手に複雑な顔をさせていた事もすくなくない。
またやってしまったと肩を下げつつ、彼女の様子を窺ってみると、またはっきりとは聞き取れない言葉。
やわく。柔いだろうかと考えてみるものの、金属製のブレスレットはどちらかと言えば硬いものに入るだろう。
きょとんとしたまま小首をかしげていると、露店の主から咳払いを受けた。買うのかどうかと聞きたいのだろう。
気がつけばずっと店前を占有してしまってもいたから、あわてて財布を取り出して。

「あ、あの、これで……」

料金を支払って、買ったブレスレットは手首につけたまま。
そろそろ腰を上げようかと思うのだけれど、隣の彼女がどういった用件だったのかを知れないままだった。
いっそ、ブレスレットをおすすめしてくれたお礼に、どこかで軽くお茶でも。なんて言い出せるような気さくさがあればよかったのだろうけれど。