2022/02/20 のログ
■セリアス > 次に運ばれてきたのはじゃがいも料理。
小麦粉と混ぜられ、団子状にされた其れに、溶けたチーズが掛かっている。
明らかに熱いうちが食べごろであることが解る其れを、一つ丸ごと口内に放り込んで。
素朴ながらも味わい深い中に、チーズの旨味が混ざる。
頬の内側が焼けるような感触に息を吐きながら、咀嚼し、嚥下する。
グラスの中ほどまで残っていた酒を呷っては、灼けそうになっていた舌と口腔を潤した。
酒精には強い方ではあれど、旨い料理と酒に、浅黒い男の頬も幾らか上気して。
ただ、満足そうに大きく、長く息を吐く様相は、何処かだらしなく、年相応でもあるか。
■セリアス > 機嫌よく、ボトルを空けて。店主に礼を言い、ちゃっかりと腸詰の仕入れ先も聞いて。
赤ら顔で酒場を出ていく。やや冷たい外気も心地よければ、笑みのまま夜道へと――……
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/酒場」からセリアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアニスさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にイリヤさんが現れました。
■アニス > 子どもの頃のことを語り出す魔女の言葉もあまり耳には入っていない様子。
どう見てもお姉さんといった感じの彼女が昔話のように語る様子は可笑しくはあるのだけれど。
夢にまで見た、空を飛ぶ魔法を目の前にしては、それどころではなく。
ふわりと浮かんだ箒は、狭い路地をゆっくりと抜けて空へと向かっていく。
それほど高度はでていない―――そうは言っても、周囲の建物と同じくらいの高さはある。
ぎゅっと魔女の腰に回した腕に力を込めて、その歓喜を表現して。
「すごい、すごい、すごい!
ほんとに飛んでる! ほら、みんな見てる!」
片手を離して眼下を行き交う人に手を振って見せ。
魔女が空を飛ぶというのは、王都では珍しくない光景かもしれないけれど。
その後ろの乗った少女が燥いでいるというのは、物珍しくはあるだろう。
手を振る少女に、幾人かの通行人が手を振り返してくれたりもして。
■イリヤ > 魔女の後ろで箒に跨り、空を飛ぶことに感動を示す少女を可愛らしいと微笑み。
箒の速度を少し上げる。
二人を乗せた箒は空を縦横無尽に飛び回り、少女に風を切る気持ち良さを教えることだろう。
王都では魔女は人嫌いであるという偏見があるためか。
自然と通行人たちの視線を集めてしまう。
中には少女へ手を振る者もいて、いつも自分が見ている景色とは違う新鮮な光景に、
魔女の口元も自然と緩んでしまう。
「ねえ、少し疲れてない?
私、実は魔導具商もやっててさ、もし良かったら私のお店に来ない?
美味しいケーキと紅茶くらいならご馳走できるよ」
はしゃぎまわっている後ろの少女へそんな提案を。
彼女がそれを受け入れるならば、箒はそのまま魔女のお店に向かって飛び始めることだろう。
■アニス > 速度が上がれば、冬の冷たい風が頬に当たる。
そろそろ夕暮れも近い時間帯だけに、それは痛いほどに冷たいのだけれど。
それ以上に楽しさが上回る。
背の高い建物の隙間を通り抜け、平屋の屋根の上を滑るように駆け抜ける。
夕日に染まった学院の時計塔にも、手を伸ばせばもしかしたら届くかもしれない。
その向こうに見える王城には、さすがに上空から近づこうものなら撃ち落されてしまうかもしれないけれど。
お試しというには十分過ぎるほどに、空の散歩を満喫して。
「私はこのままいつまでも飛んでいたいくらい!
でも、ケーキと紅茶も捨てがたい……です。
……というか、魔導具商って? 魔女さん、商売してるの?」
それこそ、向こうに見える山の向こうにまで飛んでいきそうな勢い。
けれどもさすがにそれに付き合わせるわけにも行かない。
身体が冷えてきたにも事実だから、温かい紅茶に甘いケーキは魅力的で。
さらりと告げられたお店の存在。
なんだか魔女というと工房に籠っていそうなイメージがあって尋ね返してしまう。
実際にはそんなことはないのだろうけれど、学院の先生方はそんな感じだったりするので。
■イリヤ > 「わはっ、このまま飛び回ってても良いんだけどね。
君も薄着みたいだし、あまり風に当たると体によくないから。
箒にならいつだって乗せてあげるからさ」
こんなにも楽しそうにはしゃいでくれる少女には申し訳なさを感じてしまうものの。
彼女の身体を気遣うならば、あまり長時間飛び続けるのは宜しくない。
魔女は慣れているから寒さなどあまり感じないけれど、下手をすれば低体温症になりかねないのだ。
「うんっ。自分のお店を持ってるんだよ。
教師は副業だからね。それと……私のことはイリヤで良いよ」
魔女さんと言われれば少しくすぐったくて、
普段はあまり人に語らない方の名を告げる。
箒は夕闇に向かって飛んで、二人は平民地区の外れの方までやってきた。
大通り程の賑わいはない閑静な住宅地の一角に、2階建ての建物が見えてくる。
扉の真上には「ロズワール魔道具店」と記された看板が貼り付けられており、
扉には「close」のプレートが掛かっていた。
お店の前に箒を下ろせば、先に降り、少女の手を掴んで転ばないようにと箒から降ろさせる。
「さあさあ、ロズワール魔道具店にようこそ。
今日はお店の定休日だからね。ゆっくりしていってほしいな」
扉に手を掛け、扉を開く。
少女を招き入れながら、魔女は不敵な笑みでそう告げた。