2021/10/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 広場のカフェ」にロゼさんが現れました。
ロゼ > やがて夕暮れ時だが、まだまだ賑わいを見せる広場の隅。
煉瓦造りの趣深い佇まいから、ふわりと薫る珈琲の香り。
淹れたての珈琲を右手、市場で買い合わせたパンや果実の紙袋をしっかり左腕に抱いた女が店のドアを開けた。

ちりん―――。

入退店の鈴の音の後、両腕が塞がっているのでヒールのつま先でぐいとガラス戸を押し開ける。
それをはしたないと咎める者は此処にいない。
あとは肩に引き継ぎ更に戸を押し開けて、店先にある目当てのオープンスペースへ繰り出そう。

店の端に、丁度円卓が一つ空いている。日差しよけのパラソルもありがたい。
まずはテーブルに珈琲カップを置き、左腕に抱いた大きな紙袋を手近な椅子へどさりとおろす。
瓶詰のピクルスや缶詰を底に、バケット二本とりんご等の果実を一挙に収めた紙袋はそれなりに重く、たちまち腕が軽くなった。

「 ……――――は ~ぁ、」

軽く首を傾けて鳴らし、買い物疲れを癒すべくティータイムにしけこもう。
木造の椅子に腰を下ろし、背もたれに凭れかけながら白い腕を伸ばす。
天に向けて――ぐ、――ぐと背伸び。
眼もぎゅっと瞑り、顔をくしゃりと渋めながら。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 広場のカフェ」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 日が傾き始め、市場の露天商が店仕舞いをして、買い物を終えた主婦は帰路に着き、
家族を迎える為の夕餉の支度を始めるような時間帯。
広場の通りを行き交う人々は次第に入れ替わり、暫くすれば一日の労働を終えて、
酒場に繰り出そうとする男達と、彼等を客引こうとする夜の女達が現れ始める事だろう。

そんな狭間の時間帯の街並みを歩いていくのは一人の中年冒険者。
冒険者という不安定な生業は、時間の拘束に関しても定まった規則など存在せず、
不眠不休で数日間を野外で過ごす事もあれば、陽が高い時間に仕事を終える事もある。
今日の彼はその後者、早めの時間で依頼を片付け、懐には依頼達成の褒賞金もあり、
馴染みの酒場か娼館にでも足を伸ばそうかと思案しつつ、広場を歩き。

「――――んっ……?」

不意に鼻孔を擽る珈琲の薫りに足を停めれば、視線を茶屋の店先に向ける。
視界の端、日除けの傘の下に、揺蕩う蜂蜜色の髪を見い出せば口端を緩め、
自ずと爪先が其方へと向き、喫茶の時間を愉しむ女の傍にまで近付いていき。

「よぉ、ローズ。……買い物の最中か?」

店先の円卓に付き、彼女と、その脇の椅子を占拠する紙袋に視線をやれば、珈琲を嗜む女に声を掛ける。

ロゼ > 天高く伸ばした腕も、凝り固まった背を弛緩させればひざ元へくったりと下ろす。
そのまま体を前に傾けて両肘立てて頬杖。
時たま珈琲を啜ったりなんかして、くゆる香ばしい湯気に自分の体臭をほんのり織り交ぜた。
―――花が焦げたようなにおいがして、お互い台無しで、ちょっとおかしかった。

そんな時、日よけの端にちらと見えた胴体がある。
見上げても丁度傘で切れて身体だけだが、装い越しに見ても随分と精悍な風から男だろう。
聞き覚えのある声、よりも先に、今では屋敷の者ですらそう呼ばなくなった昔の呼び名が降ってくるものだから―――。

ふふ、と反射で破顔する。眉尻が落ちているが、これは笑う時のくせだ。

「 あら、にいさま。―――ごきげんよう。(畏まった語調にも茶目がにじむ。)」

少し大仰に頭を横に倒すと、蜂蜜の束がさらさらと撫で肩を滑る。
紫の瞳にちらとようやく見えた男の顔を、下限から覗き見るような格好での挨拶だ。

「 あいさつだけで行っちゃ嫌よ、お話するならちゃんと横にきて。」

そんな不躾な我儘も気兼ねなく繰り出せる。相槌の代わりににこ、と機嫌よく笑ったまま両手で頬を包み頬杖に直って。

トーラス > 貴族の邸宅で交わされるような畏まった挨拶に双眸を瞬かせ、
それが可愛らしい妹分の茶目っ気だと知れば、破顔して小さく笑いを噴き零す。
続けざまに強請られる我が儘に彼女の腰掛ける円卓を改めて見下ろして。

「ふん、そうだな。だったら、少しばかり失礼して……」

横にきても何も、彼女の隣りの椅子は紙袋に占拠されている。
普通に考えれば、円卓越しの正面に腰掛けるべき所ではあるが、
頬肉を悪戯に綻ばせると、紙袋を掲げて、テーブルの上へと置き直して、
彼女が腰掛ける隣りの椅子へと腰を降ろして。

「意外と重いな。……パンに林檎に、瓶詰に、結構、買い込んだのか?」

見た目に反してずっしりと重みを感じられる紙袋。
無遠慮にも、中身を覗き込むという不作法を決め込むのは、
彼女が見知った女であり、気心が知れた間柄である事の証左であろう。
尤も、親しき中にも礼儀あり。彼女がマナー違反を如何捉えるかは別の話。

ロゼ > 一方的な誘いにも、他愛なく笑って応じてくれる。―――たのしい。
すぐ横合いの紙袋をひょいと抱え卓上に置き、スペースをこさえる様子を目だけで追う。
だって、横に来てと言ったのは自分だ、望みの通りである。
勿論、勝手に中身を見られたってなんら問題ないし、昔の通り気心知れて語らい合えるのが嬉しかった。

「 (重いな、 に少し顔を苦くする。) …ほんとそう。 この一週間は“お仕事”もお休みにして、ゆっくり籠ろうかと思って。」

籠城の兵糧だ。仕事、とは閨の方である。
傍らに腰を折っても尚見上げねばならない男だから、頬杖を突きながらではさらに遠い。
膝も体もやや彼側に傾けて、久しく休暇を取る悦びに歯を零してから――。

「 にいさまは――お仕事終わり? …… (ふと、 閃いたよに瞬き。) 飲みさしでよければ、珈琲はいかが。 」

半分ほど水位が下がっているが、ゆらめく湯気を見るにまだまだ温かく、香りも豊かで香ばしい。
飲みさしだなんて、ねぎらいの一杯を勧めるにしては女の方がマナー違反である。
カップの淵に、唇で啄んだ際についた紅が唇の輪郭模様に少しばかり色づいていたが―――敢えて拭わなかった。

トーラス > 「へぇ、休暇か。それにしても、そうか、あのローズが料理も出来るようになったんだな」

一週間の籠城生活とあれば、食料品の買い込みは必須であろう。
彼女のような休暇ではないが、冒険者稼業の彼にして見れば数日間の野営も珍しくなく驚くには値しない。
だが、かつて、お転婆でありながらも貴族令嬢であった彼女が、包丁を握り、鍋を振るうという光景が、
昔の姿からも、今の姿からも、連想が難しければ、さも驚いたという素振りをして揶揄い。

「あぁ、有り難う。今日の仕事は早めに片付いたんでな。
 これから、酒……、馴染みの娼館にでも赴こうかという所だ。誰ぞは休暇らしいしな」

勧められる飲み掛けの珈琲を、何の躊躇もなく受け取れば、カップに口に付けて一口含む。
豊潤な香り立つ珈琲を咥内に流し込み、唇の端にほんのりと彼女の紅色を移せば、
その口端を歪めながら、彼女以外の女と褥を共にするのだ、とあけすけに語りながら意地悪く微笑んで。

ロゼ > ――あのローズが。彼の揶揄には返す言葉もない。
幼いころ、厨房に悪戯をして火も通らぬ肉を彼へ振る舞い食べさせようとしたことすらある前科を思えば、それもその筈である。
思い出せば、自分でも可笑しくって笑ってしまった。

「 んもう、意地悪ね。 機会があったって、振る舞ってあげないんだから。」

軽口と一緒に顔を顰めて見せよう。勿論冗談をふんだんに着せて。
思い切りが良いのか、はたまた何も気にせぬのか。凡そどちらもであろう。
珈琲のカップを食み一口啜る男の様子に、しげ。唇の端に自分のそれと同じ色がうっすらと滲んだのを見つめる。
何となく、その一枚がつやっぽくて。綺麗だと想えてしまうのは相応に女の嗜好が歪んでいるせいだろう。

だがふと、――この後の彼の予定を耳に、女のまつ毛が翻る。
そこでようやく、突きっぱなしだった頬杖を解いて顔ごと男へ向けた。
別に―――男の勝手だ。仕事終わりに女で癒えるのを、咎められるだけの間柄でもないし。

「 …… (だが、) ……――――そう、なの。(面白くない。)」

悪戯気に微笑む様が、まるで己の内側を見抜いているようにも見えて悔しい。
やきもち、というには女の直情は浅ましすぎている。無意識のうちに唇を尖らせ、笑う口角を見射た。
今は己の紅が滲んだ其処も、やがて違う女の色を吸う。
紫の奥に燻るような熱を灯し、睨むか見つめるか綯交ぜになった目で唇の代わりに物言うは ――" 絶対に、いや "

トーラス > 「ははっ、ふんだんに血が滴る極レアのステーキなんかを出されるのはこりごりだからな」

過去の一時を共有する間柄であれば、奇しくも思い至るのは同じ日の出来事。
好奇心旺盛でお転婆扱いされていた少女が、厨房へと忍び込んで、
コックの見様見真似で提供してきたのは見るからに火が通らない生肉のステーキ。
流石に食べる事はなかったが、後から使用人と父親からこっぴどく叱られた事を思い出して笑い。

早めに仕事が終わった後の時間、幸いな事に懐も潤っていれば彼が向かう先は基本的に二択。
だが、口にし掛けた片方を咥内に留めて、もう片方を告げたのは女の反応を窺うため、
吊り目がちの紫紺の双眸を細め、睥睨する貌は、幼き頃に駄々を捏ねる時と何も変わらず。
その表情を見れただけでも満足だ、と口角を吊り上げると、彼女の束縛を断ち切るかのように、
何も言わずに会話を打ち切り、椅子から腰を浮かせて立ち上がる。
そして、其の侭、馴染みの娼婦の許へと足を向けるのかと思いきや、

「――――明日の朝食は食材に火が通ったもので頼むぜ、ローズ」

テーブルの上に置かれた紙袋を掻っ攫うように片手で持ち上げると、もう片方の手を彼女の方へと差し出す。
相手がその手を取るならば、今宵の行き先は娼館からは遠退いた事だろう――――。

ロゼ > 傍若無人な持て成しの数々は、のちに女の幼き武勇としてと引き合いに出され、数十年と揶揄いの種になった。
血の滴る肉なんてまだ可愛らしいものだ。笑う男へ返すべくもない。
いや――物理的にも返せなかった。肚の底がじくじくして、淡い苛立ちに瞳が潤む。

彼の顎に轡を噛ませる権利などない。
自分とて、日ごと親の違う種を腹にたらふく抱える身なのだから、人のことは言えない。
何がしかを言葉にしたって「どの口が」と嗤われるに違いない。
熱けた目は、麗しい淑女の熱いまなざしとは一線を臥す―――どちらかというと、野生の豹や獣のそれに違い。
立ち上がった男が繰り出す先を問う野暮も呑み込んで、ふっと視線をよそへ外し浅く鼻から息を抜いた。
腹に抱える熱の宛所を探して――― だが、ひょいと軽く抱え上げられた紙袋を見、弾じかれるように見仰ぐ。

「 ……―――― っ、(また見透かされたことが、腰に響くほど悔しい。)」

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 広場のカフェ」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 広場のカフェ」からロゼさんが去りました。